全世代型社会保障というキーワード
さて、ここから本題です。なぜ忘れ去られた“幻の経済同友会案"を持ち出してきたかということです。それは、現在の日本の社会保障論のキーワード「全世代型社会保障」が関係しています。
「社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所、2016年度)によると、日本の「社会保障給付費」総額は116兆9,027億円。内訳は「年金」が構成比46.5%、「医療」が同32.8%、「福祉その他」が同20.6%。
この3つの分類を統合して政策分野別で見ると、高齢者対象(65歳以上)が46.6%(直接個人に帰着しない支出まで含めた社会支出を母数とした構成比)となります。この比率は、諸外国と比べてかなり高い。全世代型社会保障論にはこれを是正しようという狙いがあります。
社会保障の入門書などでは、日本の現役世代の社会保障は企業が肩代わりしてきたという記述をよく見かけます。端的に言えば“終身雇用"がその役割を担っていたということです。
それが現在では、経団連が「終身雇用はもうムリ」と明言していますし、日本政府もジョブ型雇用への変革を推奨しています(たとえば昨年末の経済産業省「DXレポート2」でも言及されています)。
これらが「全世代型社会保障論」が浮上している背景です。別にムズカしい話ではありません。雇用流動化の進んだ先進諸外国では、当然、現役世代支援の比重が高くなっています。日本も、そのような社会にしようというだけの話です。