現在の年金議論はもはや迷宮かも

ここから現在の日本の年金議論を少し俯瞰してみます。ご存じの通り、現在の制度は現役世代が年金受給世代を支える賦課方式です。社会保険方式が採用されていますが、本質的には賦課方式である以上、社会保険方式と言っても税方式と同義です。

よく言われる「年金の世代間格差」の問題ですが、これも賦課方式である以上、本来的にはやむを得ないことです。たとえば消費税率が上がる際に、世代間格差とは普通、言いませんよね。この辺が、日本の年金議論が迷宮化しているところだと思います。

現在の進歩的かつ代表的な年金改革論は、賦課方式から積立方式への改革でしょう。正確に言えば“積立方式の復元"ですね。日本の年金制度は積立方式が、いつの間にか賦課方式に変わってしまったのですから。もともとは積立方式だからこそ「年金積立金」が存在するわけです。

積立方式復元のネックは、いわゆる「年金債務超過」です。これは、過去期間に対応した給付債務に巨額の積立不足が発生していることです(経済同友会案では330兆円と試算)。解決策として以前は「二重の負担論(債務返済と積立)」もありましたが、現在は国債等の発行によって複数年をかけて実施する考え方が主流です。

ただ、個人的には、この積立方式復元案はピンと来ません。理由としては、経済同友会案にも記載されている「積立方式による報酬比例年金であれば、民間でも提供可能であり、国が提供する必然性はない」からです。そもそも “小さな政府"を志向する多くの人たちが、なぜ年金積立論を主張するのか理解に苦しみます。