2021年4月16日に行われた、株式会社サーバーワークス2021年2月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良 氏

新型コロナウイルス感染症の影響について(継続)

大石良氏:みなさま、こんにちは。サーバーワークスの大石でございます。本日は当社の決算説明会をご視聴くださり、誠にありがとうございます。さっそくですが、スライドを使い、私から2021年2月期決算についてご案内します。

まず、新型コロナウイルス感染症の影響についてです。「継続」と表記していますが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の取り組みとして、全社員に毎月2万円の在宅勤務手当を継続的に支給しています。このような状況下でも生産性を落とすことなくテレワークが継続できるよう、この取り組みを続けています。

事業・業績への影響については、かねてよりご案内のとおり、テレワークを推進してきたことにより、事業の生産性への影響は軽微となっています。また、この1月に発出された緊急事態宣言についても、業績への影響は軽微でした。

2021年2月期 Q4 トピックス

第4四半期のトピックスについてご案内します。株主・投資家のみなさまのご協力をたまわり、東京証券取引所市場第一部への市場変更が無事完了しました。今後も株主・投資家のみなさまの期待に応えられるよう、努力を続けていきます。

また、2021年版「働きがいのある会社」ランキングに4年連続で選出させていただきました。Great Place to Workという世界的な調査機構がありますが、こちらを用いて会社の働きがいと働きやすさの両立ができているかを毎年確認しています。

こちらのランキングに選出されたということは、会社のカルチャーが健康なものであるという証だけではありません。今後は、このようなものが採用活動においても決定的に重要になってくると考えています。これは投資家のみなさまにもぜひご承知おきいただきたいニュースです。

さらに、ウイングアーク1stさまへの出資と資本業務提携をさせていただきました。ウイングアーク1stさまは、オンプレミスのソリューションが非常に多い、IT業界でも著名な独立系ソフトウェアベンダーであり、非常に知名度のあるISVです。

ただ、今まではオンプレミスの製品が強かったこともあり、これからはクラウド化に一緒に取り組んでいこう、というステージにあります。このような段階に私どもが資本参加し、業務提携を進めさせていただき、ウイングアーク1stさまの非常に大きなカスタマーベースに対して、我々がAWSの技術・サービスを提供していきます。このような取り組みをこれから手がけていきたいと考えています。

2021年2月期 業績予想

それでは、決算の状況についてご紹介します。まずは業績予想です。昨年は期中に一度ワラントの発行や市場変更関連の諸費用などが発生し、一部修正しました。そのガイダンスがこちらになっています。

2021年2月期 実績

こちらのページがその結果です。実績としては、売上高80億2,900万円、経常利益4億1,000万円、当期純利益4億8,200万円ということで、修正後のガイダンスを上回る数字で着地することができています。

売上高の推移

売上高の推移のグラフです。決算説明会で何度かお話ししているとおり、昨年は新型コロナウイルスの影響を受け、多少成長力が鈍化することとなりました。

「これがなければもっといけたのに」という数字ではあるのですが、それでも、昨年の後半にはプロジェクトの受注もかなり持ち直してきました。さらに、新しい働き方に対応するためにクラウドを使っていくという、新しい需要もうまく刈り取ることができました。それがこの結果につながったのだと理解しています。

利益額・利益率の推移

利益額と利益率の推移です。ご覧のとおり、昨年の第1四半期、第2四半期は非常に厳しい状況だったのですが、後半になるにしたがい、受注が回復して利益率が改善している傾向をご確認できると思います。

2021年2月期 製品・サービス区分別売上高

製品・サービス別の売上高の推移です。クラウドインテグレーションは、前期比73.7パーセントとなっています。過去の決算説明会でもご説明していますが、SREというカテゴリーの事業については、クラウドインテグレーションからMSP(マネージドサービスプロバイダ)のほうに一部付け替えが発生しています。そのような点も考慮すると、ほぼ期待どおり、狙ったとおりの数字だったのではないかと考えています。

製品・サービス区分別の四半期ごと売上高の推移

製品・サービス区分別の四半期ごとの売上高の推移です。先ほどの繰り返しになりますが、昨年は第1四半期と、特に第2四半期が非常に厳しい状況でした。私どもの第2四半期は6月、7月、8月ですが、私どもの案件のリードタイムは約3ヵ月ですので、実際には3月、4月、5月の時期の受注が第2四半期の売上になっていきます。みなさまご承知のとおり、昨年の3月、4月、5月は非常に厳しい状況でしたので、それがこちらの数字に反映されています。

一方で、ご覧のとおり第4四半期はかなり復調しています。毎年、第4四半期はリセールの売上が非常に大きくなる傾向にありますが、それでも、グラフの一番上のMSPもそうですし、一番下のクラウドインテグレーションの数字もそうですが、四半期で見てもかなりよい結果だったのではないかと理解しています。

参考)リセール:為替レートの推移

昨年の後半にかけてリセールの数字が持ち直した理由の1つは、この為替レートです。ご覧のとおり、昨年の第1四半期スタートの時点では、為替レートが109円というレベルだったのですが、第3四半期の終わりには103円くらいまで落ちていました。しかし、第4四半期になるとアメリカの政治情勢の安定もあって円安が進み、その結果、私どももリセールのトップラインが伸びていったという事情があります。

リセール:AWS利用料、リザーブドインスタンス・Saving Plans

先ほどからご覧いただいているリセールの数字はすべて円換算です。AWSの実際の利用料はドルで計算されますので、ドルベースでの利用料もご覧ください。お客さまが実際にどのくらいの量のAWSを使っているのかがおわかりいただけるようになっています。

スライドの棒グラフの薄い黄色の部分は定常的に使っている部分です。濃い黄色の部分は、お客さまが先買いすることで割安に使えるようにするRI、もしくはSPsと呼ばれるオプションを購入した分です。

私どもとしては、この薄い黄色の部分が安定的に成長していることが決定的に重要だと理解しています。こちらについては、ご覧のとおり、昨年も1年を通じて少しずつではありますが伸びています。これは、コロナショックの最中にもかかわらず、お客さまが安定的にAWSの利用を増やしていってくださったことを意味しています。

リセール:AWSアカウント数・ARPUの推移

リセールにおけるAWSアカウント数と単価の推移です。AWSアカウント数は順調に継続的に伸びています。ARPUも少しずつではありますが順調に伸びており、どちらもヘルシーな状況だと考えています。

クラウドインテグレーション:各指標の推移

実際にAWSの導入を始める時に、我々のエンジニア、コンサルタントが稼働したプロジェクトであるクラウドインテグレーションの推移です。スライドのグラフの赤い線がプロジェクト数です。ご覧のとおり、昨年の第2四半期、第3四半期はかなり厳しい状況でしたが、第4四半期はかなり持ち直しています。

ストックビジネスの比率推移

ストックビジネスの比率推移です。残念ながら、昨年の第2四半期はフローの受注がかなり少なかったこともあり、比率が高まってしまったのですが、第3四半期、第4四半期のフローのビジネスもだいぶ持ち直してきまして、そのおかげで今は94パーセントくらいまできています。

私どもとしては、クラウドインテグレーションを取ることによって、そのあとの運用サービスやリセールといったストックビジネスにつながっていきますので、このような部分も当然重要視しています。フローのビジネスの比率ももう少し高まるよう、今後も努力を続けていきたいと考えています。

ライフタイムバリュー

ライフタイムバリューのグラフです。こちらは、私が好んで株主、投資家のみなさまにご覧いただいているチャートです。

このチャートの見方ですが、スライドの一番下の黒い層は2011年以前にご契約してくださったお客さまです。その次に、2012年、2013年、2014年にご契約してくださったお客さま、となっています。右にいくにしたがって、それぞれ私どもにどのくらいお支払いいただいたかを表しているのがこのチャートです。

ご覧のとおり、どの年度にご契約してくださったお客さまも、みなさま少しずつ私どもへのお支払いを増やしてくださっています。もちろんAWSの商品力もありますが、「カスタマーサクセス」という、我々経由でクラウドを利用しているみなさまが我々を信頼し、アフターサービスを継続的にご契約くださっている結果が、このようなライフタイムバリューに表れていると理解しています。

人員数推移

当社の社員の人員数推移です。ご覧のとおり、先期はかなり初期の段階で新型コロナウイルス感染症の拡大が見込まれたため、かなりブレーキをかけて採用を行っていました。

一方で、先ほどからお話ししているとおり、先期末くらいからはプロジェクトの受注もかなり回復しています。今期は一層アクセルを踏み、もう一度成長モードに舵を切っていきたいと考えています。

2021年2月期 営業利益の増減要因分析

実際の先期のP/Lの細かい増減の差分分析です。当社のホームページからこの資料をダウンロードできるようになっていますので、ご興味のある方はぜひ分析にご利用いただければと思います。

2022年2月期 業績予想

肝心の今期のガイダンスについてご説明します。今期の業績予想ですが、売上高93億円、経常利益4億7,100万円、当期純利益3億2,600万円をターゲットに、社を挙げて努力していきたいと考えています。

先期以来、新型コロナウイルス感染症の拡大が続いていますが、今期も第4波の影響を考慮し、新型コロナウイルス感染症の再拡大が起こり得る前提で売上高のターゲットを設定しています。

一方で、このような状況にもかかわらず、お客さまの受注は増えています。採用活動については先期はかなりブレーキを踏んでいましたが、今期はアクセルを踏み、新しいニーズにもしっかりと対応できる体制をとっていきたいと考えています。このような採用活動のコストを見込んでいます。

また、スライドの下に注記していますが、為替レートについては、毎年私どもが予算策定の時に利用している為替レートの標準シナリオがあり、その標準シナリオの数字を利用しています。こちらは103円となっていますが、このような前提でターゲットを作っていることをご承知おきいただければと思います。

成長戦略:大規模マイグレーション(移行)プロジェクトの獲得

最後に、今後の成長戦略ということで、今お伝えした数字や向こう数年の成長をどのように実現していくのかという私どもの方針についてご紹介します。

こちらはもうすでに何度もお話ししていますが、やはり大規模なマイグレーションの獲得が大きな鍵になると考えています。国内ではまだまだクラウドを利用していない大きな会社はたくさんあります。また、このような領域の大規模なマイグレーションの案件もそうですが、官公庁もクラウドの利用が進んでいる状況ですので、こうした案件も獲得していくということが1つあります。

もう1つは、金融機関が非常にホットになってきています。政権の意向により、地銀再編のお話やフィンテックベンチャーの勃興もあり、金融機関のみなさまも今までどおりのオペレーションでは新しい顧客ニーズに対応できないという理解が急速に進んでいます。

このような事情に対応するには、やはりクラウドサービスの力に頼らざるを得ないという認識が非常に進んできています。私どもはこのようなニーズを拾っていきたいと考えています。

昨日はインサイトテクノロジーさまとの協業を発表しました。インサイトテクノロジーさまは、基幹データベースからクラウド型データベースへ移行する領域に非常に強い製品とサービスを両方お持ちです。このようなパートナーと組むことにより、今まで非常に大きなデータベースを持っていても、データベースの安定的な運用のためにクラウドへの移行になかなか踏み切れなかったお客さまも、インサイトテクノロジーさまのツールやサービスを上手く利用することによって、一緒にAWSへの移行を進めていくことができます。このようなことを手がけていきたいと考えています。

成長戦略:New Normalな働き方の実現支援

New Normalな働き方の支援ということで、新型コロナウイルス感染症再拡大の懸念が広がる中、すでに多くの方が「テレワーク・リモートワークの環境を整えないと、会社の生産活動が維持できない」という危機感をお持ちだと思います。このようなニーズに、私どもの実体験とAWSのサービスを組み合わせることによって、お客さまに解決策を提示していきたいと考えています。

こちらでご紹介している事例はほんの一握りですが、NTTスマイルエナジーさまでは、「Amazon WorkSpaces」というAmazonの仮想デスクトップサービスを使い、3週間でリモートワークができる環境を整えています。

スライド右側の横河電機さまは、1,400人が安全に家からでも仕事ができる環境を1ヶ月で整えました。このような事例が実際にあります。

このようなクラウドの使い方は、これからもどんどん広がっていくと思いますので、我々はこのニーズをしっかり獲得していきたいと考えています。

成長戦略:クラウドを活用した新しいサービスの提供

そして、クラウドを活用した新しいサービスということで、特に電話を使った新しいお客さまとの接点の確立における分野がホットです。

「Amazon Connect」という電話のサービスがあるのですが、これを使うことによって、エンドユーザーとなかなか直接コンタクトができない中でもたくさんのお客さまとつながっていこう、という取り組みが進んでいます。

パルシステム生活協同組合連合会さまは、コロナショックの最中に会員数も注文も激増したそうです。ところが、電話で注文を受ける体制になっていると、せっかくオーダーが増えてもこれを捌き切ることが難しいのです。

どうしてもコールセンターが3密になってしまいますので、人員を増やせないということで、私どもにお声がけしてくださいました。そこで急遽、音声の自動応答で、できる限り注文を捌くシステムを用意しました。これによって、会員数・注文が激増する中でもうまく対応できたということで、パルシステムの中ではこのシステムが「救世主」と呼ばれていると聞いています。

スライド右側の新生銀行さまは、お客さまへの督促時に自動的にシステムから電話し、つながったタイミングでオペレーターが取るということを行うことにより、コールセンターの業務の効率化を図りました。このように、金融機関でもクラウドを上手く使うことによってお客さまとの接点を作り、業務を効率化していくことが進んでいます。

世間では「デジタルトランスフォーメーション」という言い方をされますが、このような領域の発掘をこれからも続けることによって、我々としてもクラウドを活用した新しいサービスを積極的に提供していきたいと考えています。私からのご説明は以上です。

最後にあらためてご挨拶をさせていただきます。みなさま、本日はご視聴くださいまして、ありがとうございました。本来であれば、みなさまと直接お会いし、今期の事業にかける想いや「私どもはまだまだ成長していくのだ」というパッションをお伝えしたいところだったのですが、このようなかたちとなった事情をご理解いただければと思います。

繰り返しになりますが、コロナショックを経て、このクラウドはより本質的なものに変化したと考えています。中長期で見てもまだまだ成長余力があると自信をもっていますので、ぜひ、株主・投資家のみなさまのご協力をたまわり、力強く成長していきたいと考えています。今期も応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

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