「繰上げ受給」を選ぶ人の割合は?
では、実際に繰上げ受給をしている人はどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、繰上げ受給を選んだ人の割合をみていきます。
(参考に「本来(65歳)」と「繰下げ」を選んだ人の割合も併記します)
新法厚生年金保険(老齢厚生年金)受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況
繰上げ…0.4%
本来…98.8%
繰下げ…0.8%
国民年金 受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況
繰上げ…12.3%
本来…86.3%
繰下げ…1.5%
※旧法老齢年金(5年年金を除く)・旧法通算老齢年金の受給権者と新法老齢基礎年金の受給権者を対象
受給権者のうち、厚生年金の場合は0.4%、国民年金の場合は12.3%の人が繰上げ受給の申請を選んでいるということが分かりました。
また、国民年金のほうが繰上げ受給をしている人の割合が高い点については、厚生年金加入者の中には、60歳前後で定年退職金としてまとまった資金が入る人が多い、ということも、少なからず影響していると考えてよいかと思います。
また、繰上げ受給とは反対に、受け取りを遅らせて年金額を増やせる「繰下げ受給」を選んでいる人は、厚生年金・国民年金ともにほんのわずか。全体の1%前後にとどまっています。
やはり、「受給開始までの期間の生活をどうやって乗り切るのか」を考えたとき、繰下げ受給という選択肢を選びにくいのが実情である、といったところでしょうか。
まとめにかえて
今回は、年金受給時期を早める「繰上げ受給」にフォーカスしました。
受給権者のうち、繰上げ受給を選んでいる人は、厚生年金で0.4%、国民年金で12.3%となりました。
厚生年金・国民年金、どちらも本来の65歳から受け取っているケースが圧倒的多数を占めている、ということも分かりました。こちらについては、長期化するコロナ禍の影響で、今後どのように動いていくかは注視していきたい部分ではあります。
いずれにせよ、現役時代にしっかり貯蓄をする、60歳以降も働きつづけるといった自助努力をされている方が多い様子が垣間見える結果といえるかもしれませんね。
繰上げ受給を申請した場合、減額された年金額は一生涯変わりません。繰上げ受給の請求を検討される場合は、ご自身の貯蓄状況と健康状態を考慮したうえで、慎重に検討されることをおすすめします。
また、リタイヤ後を見据えたお金の計画についても、早めに意識をされるとよいでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢基礎年金の繰上げ受給」