つまり、公園は「子供たちの遊び場」であると同時に、「あらゆる世代のコミュニケーション、レクリエーションの場」。本来の公園の在り方とは、世代を問わず、近隣住民誰もがさまざまな楽しみ方ができる「憩いの場」というわけです。

子供の声は「騒音」なのか?

2007年、西東京市の「西東京いこいの森公園」内にある噴水で遊ぶ子供たちの声がうるさいと、近隣に住む女性が騒音差し止め仮処分の申し立てを行いました。

これに対し東京地裁八王子支部が、噴水を使用してはいけないという仮処分を決定。つまりこのケースでは、子供の声はれっきとした「騒音」であるという判断が下されたのです。

たとえばこれが、マンションなど集合住宅のエントランス、公共施設、住宅地の道路…であるのなら、「騒音」と定義づけられるのはよくわかります。なぜならそこは、「遊び場」ではないからです。

しかし公園は、上記にある通り「子供たちの遊び場」であるはず。しかも時間帯も早朝、深夜ではなく、日中。この判決が賛否両論を巻き起こしたのも無理からぬ話です。

この公園裁判の事例以外にも、「子供たちの声がうるさい」と公園や幼稚園、保育園に苦情を入れたり、裁判を起こしたりする人は少なくありません。

1969年、東京都は「公害防止条例」を制定。その後2000年に「環境確保条例」として全面改正されました。それによると、低層住宅が主に建てられている「第1種低層住居専用地域」では、8時~19時の間は45デシベル以上の音を「騒音」と規制。

すると、「子供の声が45デシベル以上の騒音にあたる」と規定を理由に苦情を言う人が増加。東京都議会は2015年に「環境確保条例改正案」を可決し、子供の声は騒音規制の対象から除外することを決定しました。

この流れを見て思うに、「公害防止条例」を制定した当初、行政は、まさか「子供の声が騒音である」という訴えが起きるとは想定していなかったのではないでしょうか。