今の小学生はテレビだけではなく、YouTubeやSNSといった新しいツールから流行をキャッチしています。
そのため、趣味や話題が多様化し、クラスのほぼ全員が見ているテレビ番組や女子の大半が憧れるアイドルなどは激減。一方で存在感を増しているのがアニメや漫画です。
昨秋公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は幅広い世代で人気を集め、国内の興行収入記録を更新しました。小学生の間でも大ブームとなり、主要キャラクターを彷彿とさせる柄のマスクを付けた児童を見かけることも珍しくありませんでした。
ひと昔前には、アニメ好きや漫画好きはオタクという目で見られることも少なくありませんでした。しかし、なりたい職業に声優をあげる子が多くなるほどアニメや漫画業界への意識が激変しています。
女子中高生の「将来の夢」で声優や漫画家が上位に
ソニー生命保険株式会社が2019年に中学生や高校生向けに実施したアンケート「中高生が思い描く将来についての意識調査」では、女子中学生の1位が「歌手・芸能人・声優」。将来への夢がより具体的になる女子高校生でも3位にランクインしていました。
また、「絵を描く職業(漫画家・イラストレーター・アニメーター)」も女子生徒に人気が高く、女子中学生では2位、女子高校生では8位でした。
日本のアニメや漫画は海外でも人気が高いことがメディアで紹介される機会が多いので、子どもたちも「身近だけど高く評価されているジャンル」「ニーズがある」と認識し、大人に近づく高校生も将来なりたい職業として思い描きやすくなっていると考えられます。
中でも声優は、歌手活動や役者など幅広く活躍できるチャンスを秘めた職業でもあります。写真集やトークショー、アニメのイベントなどファンと触れ合う機会も多いので、憧れを抱く子どもも多いのでしょう。
小学校でも学年が上がると深夜アニメ系の作品を好きな子も出てきてきますが、筆者の子どもたちの話を聞くかぎり「アニオタ」という偏見の目でみられることもなく、「アニメが好きな子・詳しい子」という立ち位置を築いているそうです。
アニメ産業市場の規模は2兆5000億円超
一般社団法人日本動画協会が2020年1月29日に発表した「アニメ産業レポート2020 サマリー」によると、2019年の日本のアニメ産業市場(広義のアニメ市場)は2兆5112億円という巨大市場になっています。
アニメキャラクターのグッズ展開など、昔からあるジャンルでの売上が底堅く推移しているのに加え、近年特に成長しているのが海外向けと配信。
配信のジャンルでは、AmazonプライムやNetflixといった動画配信サブスクリプションの浸透もあり、2009年は123億円だった売上が2019年には685億円と10年で5倍以上に増加しています。
人口減少に直面している日本ですが、動画配信の普及や海外での勢いもあり、アニメ産業の未来は暗いものではありません。こうした背景もあることから、アニメ産業への就職は夢物語ではないと言えるでしょう。
また、インスタグラムやTwitterなどに投稿したイラストや漫画が書籍化されたり新たな仕事につながるケースも現実に起きており、これまでとは異なる方法で収入を得ることも可能になっています。
子どもが声優や漫画家、アニメ業界への憧れを口にしたとき、「そんなのムリ」「大変」と聞く耳を持たず一蹴するのは早計かもしれません。
たしかに、業界で有名になるのはごく一部の人だけですが、それはどの分野でも言えることです。時代が変わった今、アニメ産業は子供向けだけのものではありません。世界を視野に入れられる、成長性の高い業種とも言えるでしょう。
文化交流の中で存在感を増すアニメ・漫画
外務省の外交政策では経済外交の他に広報文化外交が掲げられています。そこでは日本の伝統文化だけではなく、アニメや漫画を含んだポップカルチャーの情報発信も重要視されています。
筆者も学生時代に、日本の少女漫画が好きだというイタリアの女の子とメールでやり取りをした想い出があります。今から20年近く前のことですが、その頃から日本の漫画やアニメは海外で支持されていたのです。
人気キャラクターに扮するコスプレ文化も海外のファンの間で広まり、各地で大規模なイベントが行われてきました。新型コロナウイルスの感染拡大により、こうした交流やイベントの実施は難しい状況が続いていますが、アニメや漫画への情熱は国境を越えて広がりを見せています。
声優や漫画家への憧れを持つ子どもが増加しているのも、アニメや漫画好きに対するネガティブなイメージ”が薄れ、「日本らしい文化」として地位が向上していることが大きいのかもしれません。
参考資料
- 中高生が思い描く将来についての意識調査(ソニー生命保険株式会社)
- アニメ産業レポート2020 サマリー(一般社団法人 日本動画協会)
中山 まち子
