オードリー・タンの「政治思想」
ここからは、オードリー・タンの「政治思想」を見ていきましょう。昨年、鷲尾和彦氏(博報堂生活総合研究所)が行ったインタビュー記事を参照します。インタビュータイトルは『民主化とイノベーションは同義。オードリー・タンが語る台湾の「上翼思考」』。
ちなみに「上翼思考」とは左翼(レフトウイング)か、右翼(ライトウイング)という違いや争いを超えて、ともに上を目指す「上翼(アップウイング)」という意です。インタビューからオードリーの発言をいくつか引用します。
「パブリックセクター(行政)よりも、ソーシャルセクター(市民)のほうが有効」
「民主化とは『新しい社会をつくる』ことであり、そのため、社会イノベーションと産業イノベーションの間にも明確な区別はありません」
「とてもシンプルに言えば、『誰とでも意見交換しよう』という考え方です。『誰とでも』というのは、経済的あるいは政治的弱者を除くことなく多様な声に耳を傾けるという意味です」
いかがでしょうか。印象を一言でいえば、オードリーが賛同するオープンソースの考え方から一貫して、現在の新しいデジタルの世界観を政治の世界に持ち込んだだけという印象を強く持ちます。つまりオードリーになにか特別な「政治的な信条」があって、それをデジタルやITという「便利なツール」で実現するという構造ではないのです。
「民主化とは『新しい社会をつくる』ことであり、つまりは『イノベーション』を起こすことなのです」これが、オードリー・タンの「思想」です。