2021年3月6日にログミーFinance主催で行われた、第18回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第2部・日東工業株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:日東工業株式会社 代表取締役社長COO 黒野透 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
フリーアナウンサー 八木ひとみ 氏

会社概要

黒野透氏(以下、黒野):みなさま、こんにちは。取締役社長COOの黒野透でございます。本日は大変お忙しい中、日東工業の会社説明会へご参加いただき、誠にありがとうございます。短い時間ではございますが、弊社のことをご理解いただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

まずはじめに、会社概要となります。日東工業は、1948年11月に愛知県瀬戸市で設立した70年以上続く歴史のある会社で、電気と情報に関わる機器を製造・販売する電気機器メーカーです。資本金は65億円強、本社は愛知県長久手市にあります。

2020年3月期の売上は連結で1,394億円、単体で796億円です。従業員数は連結で4,000名弱、単体で2,000名弱で、グループ会社は国内に8社あります。証券コードは6651です。

日東工業グループの事業内容

黒野:日東工業グループの事業内容をご紹介します。スライド中央下、青色部分の配電盤関連製造事業は、日東工業グループのコア事業で、連結売上の約60パーセントを占めています。配電盤、分電盤、制御盤の設計、製造、販売を行うとともに、業界ではキャビネットと言われている分電盤に使用する外側のケース、そして中に組み込まれるブレーカなどの機器を製造、販売しています。

赤色部分の情報通信関連流通事業は、LANケーブルや監視カメラなどの情報通信関連機器およびその部材を仕入、販売する事業で、連結売上の約29パーセントを占めています。

左上の薄緑色部分の工事・サービス事業は、情報通信ネットワーク設備や電気設備の設置、保守等の工事を行う事業で、連結売上の約2パーセントを占めています。

右上の水色の部分の電子部品関連事業は、電磁波から守る機器や精密部品の製造、販売を行う専門性の高い事業で、連結売上の約9パーセントとなっています。

日東工業グループでは、電気と情報に関わる4つの事業が互いに連携し合い、事業を展開しています。

「配電盤・分電盤」とは

黒野:ここからは、日東工業の単体事業についてご説明します。まず、メインの商材である配電盤、分電盤についてです。

配電盤、分電盤は、連結売上高約1,400億円のうち3割を占めています。これらは電化製品に電気を安全に送るための装置で、電気の使いすぎで発生する異常発熱による配線コードの劣化や漏電を監視する機器などが収納されており、電気火災や感電事故を未然に防ぐ目的で使用され、電気を使う場所への設置が義務付けられています。住宅・マンション・ビル・工場など、電気が必要な建物・施設には必ず設置されています。

日東工業は配・分電盤のみならず、ブレーカ、キャビネットなどの配電盤関連部材を 製造販売する日本では数少ない総合配電盤企業です。

当社配電盤・分電盤の利用領域:簡略イメージ図

黒野:このスライドは、電気が発電されてから家庭に至るまでの電気の流れを示したものです。日東工業は、スライド中央、緑色部分の高圧、右側の青色部分の低圧が事業領域となっており、電圧としては100ボルトから6,600ボルトの範囲で使われる高圧受電設備や分電盤を製造、販売しています。

左側のグレー部分である6,600ボルトを超える特別高圧に関しては、重電メーカーの製品が使われており、当社製品の領域ではありません。

配電盤・分電盤使用例:①住宅、マンション

黒野:分電盤の使用例をご紹介します。こちらは住宅のイラストで、赤く囲ったものが「住宅用分電盤」となります。みなさまの家にも必ずついており、電気の使いすぎや漏電を常時見張っています。一度、ご確認ください。

一般的には、目立たない場所で、例えば洗面所や玄関などに設置されていますが、日東工業の住宅用分電盤はデザイン的にも優れ、新しい住宅にもマッチすると高い評価をいただき、このイラストのようにリビングに設置されていることも多いです。

配電盤・分電盤使用例:②コンビニ

黒野:高圧受電設備の使用例です。コンビニエンスストアのイラストで、赤く囲ったものが高圧受電設備、キュービクルとなります。6,600ボルトと非常に高い電圧で、人が触れると大変危険なため、頑強なケースで覆われています。そのほかにも、工場、ビル、マンションなどにも設置されています。

このように、大変地味ではありますが、日東工業の製品は、みなさまに電気を安心してお使いいただくためさまざまな場所に設置されています。

「キャビネット」とは

黒野:キャビネットをご紹介します。キャビネットは、連結売上高約1,400億円のうち2割を占めています。分電盤に次ぐ主力製品です。

キャビネットとは、中に何も入っていない金属製もしくはプラスチック製ケースを表す名称です。一般的には、水やほこり、熱に弱い精密機器を収納しています。外部環境から内部に収納する重要な機器を保護するために使われています。また、直接人が触れると危険なものも収納されており、人を守るためにも使われています。

電気や通信機器、精密機器の設置が必要となる建物や施設、また屋内、屋外を問わず、たくさん使用されています。みなさまも、お散歩などして周囲を見渡していただくと、短い間に多くのキャビネットを見つけることができますので、一度探してみてください。キャビネットも分電盤と同様に景観に配慮し、目立たないデザインとしています。

キャビネットの使用例:①監視カメラシステム

黒野:キャビネットの使用例です。最近では、監視カメラが至る場所で設置されています。写真のキャビネットは、カメラで撮影した映像を録画するレコーダーおよび電源が収納されています。熱や水、ほこりに弱い電子機器を保護する役割で使われています。

キャビネットの使用例:②工場内

黒野:工場での使用例です。ベージュ色の四角い箱がキャビネットです。分電盤や制御盤の外箱、自動化ラインの制御機器収納用など、幅広く使われています。工場内の油やほこりなど、外部環境から内部の機器を保護しています。

また、熱に弱い電子機器を保護するため、キャビネットに取り付けられるクーラーなどの熱対策製品もご用意するなど、当社では複数のオプション品も製品化しています。

製品開発の歴史

黒野:製品開発の変遷をご紹介します。創業時には、絶縁物である瀬戸物とプレス技術を応用したブレーカの前身であるカットアウトスイッチという機器を製造、販売し、後にブレーカや分電盤、キャビネットを製品化しました。

現在では、電気自動車用の充電スタンド、太陽光発電関連、蓄電池関連、またインターネットに必要なサーバーを収納する情報通信ラックなど、社会環境ニーズに合わせた製品を数多く販売しています。

「安全・安心な社会へ」という創業者の思いを受け継ぎ、日々製品開発を行っています。

標準品とカスタム品

黒野:当社が得意としている標準品についてご紹介します。盤やキャビネットは、標準品とカスタム品に分けられます。

カスタム品は、1品1品、お客さまのご要望に基づき設計、生産するものです。そのため、仕様決めなどの手間がかかる作業も多く、お客さまにお届けするまでには時間を要していました。標準品はあらかじめ決めた仕様の製品を計画的に大量生産することで、「安く」「早く」「安定した品質」になり、大変多くの方にご採用いただいています。

当社は、カスタム品で依頼するしかなかった分電盤やキャビネットを、他社に先駆けて標準品にしたリーディングカンパニーです。

国内市場とシェア

黒野:国内市場とシェアについてご紹介いたします。正確な工業界等の統計データが存在しないため、この値はあくまでも当社推定値となることをご了承願います。

キャビネット全体市場はおよそ2,500億円、そのうち標準品市場は25パーセントです。当社のキャビネットは、標準品市場の約40パーセントと圧倒的なシェアNo.1を長年維持しています。

配電盤全体市場は約6,000億円、そのうち標準品市場は50パーセントで、その標準品市場でのシェアはトップグループに位置しており、およそ14パーセントを有していると推定しています。

日東工業の3つの強み①

黒野:日東工業が高いシェアを長年維持できている、その強みについて3つほどご紹介します。

1つは、「強固なビジネスモデル」を構築している点です。当社は、3万点にもおよぶ製品をカタログ販売するシステムを持っています。また、全国に45の営業所および200を超える販売代理店が存在し、注文すると翌日にはお届けするという、いわゆる「ワンデイデリバリー」が可能な物流網を構築しています。

さらに、標準的な分電盤であれば、午前11時までに発注いただきますと、その日のうちに工場を出荷するシステムを保有しています。

このような標準品ビジネスモデルを業界でいち早く導入したことが、当社の強みです。

日東工業の3つの強み②

黒野:2つ目は、徹底した品質へのこだわりです。当社にしかない試験、研究設備を数多く保有しています。過酷な自然環境にも耐える性能、品質を有した製品をお届けするために研究を続けています。

例を挙げると、写真左は大地震を再現できる耐震試験装置で、阪神・淡路大震災や東日本大震災の揺れを再現することができます。高圧受電設備や情報通信ラックなど、耐震の要求が高い製品もこの試験機で検証していますので、安心してお使いいただけます。

写真中央は、ゲリラ豪雨を再現できる風雨試験装置です。風速60メートルの風、300ミリの雨を同時に加えられる設備です。強風によりキャビネットの扉を開ける力が働くことも確認できています。

写真右は、大電流を通電できる試験装置です。分電盤に大きな電流が加わると、爆発に近い現象が起こります。事故が発生した場合に備え、安全確保のための検証を行っています。

このように、自社で試験設備を保有して品質向上に役立てています。品質へのこだわりこそが、業界における「日東工業ブランド」を確固たるものにしている要因の1つです。

日東工業の3つの強み③

黒野:3つ目は、製品開発力です。市場のニーズや社会の課題をすばやくキャッチし、その対策製品を研究開発することに長けており、それらの製品は各種製品コンクールで受賞しています。

以上の3つの強みが、70年以上の間、業界で確固たる地位を築き、高いシェアを獲得できた理由であると考えています。

業績推移 設立~現在

黒野:ここからは、日東工業グループの業績推移についてご説明します。青い棒グラフは、日東工業単体の売上高、オレンジの棒グラフはグループ売上高、赤い棒グラフは連結営業利益、緑の折れ線グラフは連結営業利益率を表しています。

連結売上高は、右肩上がりで成長を続けています。リーマンショックの2009年に赤字を計上しましたが、赤字は72期のうち1期のみです。

当社では、設立から現在まで5つの期に分けて表しています。第1期は「揺籃期」で、現在の礎を築いた時期です。第2期は「発展期①」で、名古屋工場を建設するとともに標準品を製品化し拡大したことで、大きく成長しました。

第3期は「発展期②」で、当社コア事業のビジネスモデルを確立しました。第4期の「安定期」では、生産体制を強化し、現在の第5期ではM&Aを行い、グループ経営に舵を取り始め、売上も大きく伸長しています。

事業セグメント別 売上高

黒野:事業セグメント別の売上高をご紹介します。このグラフに記載の2007年3月期以降、コア事業である配電盤関連製造事業の稼ぐ力を基に、M&Aにより事業領域を広げ、売上を拡大しています。

2007年に地元の配電盤メーカーである新愛知電機製作所を子会社化しました。2013年3月期にサンテレホン・南海電設をM&Aし、情報通信関連流通事業セグメントを追加しました。2016年3月期には、シンガポールの配電盤メーカーであるGathergates社をM&Aし、海外での配電盤事業を加速させています。2019年3月期には、電子部品関連事業に携わる北川工業を子会社化しました。

コア事業の配電盤関連製造事業だけではなく、他の事業の売上も徐々に増加しています。

過去5年 連結経営成績

黒野:過去5年間の連結業績です。2020年3月期の売上高、当期純利益は過去最高で、3期連続の増収、2期連続の増益となりました。

2021年3月期は、コロナ禍の影響により減収減益計画ではありますが、2019年3月期と比べてみると、売上、利益ともに上回る見込みで、計画を達成すれば売上高は過去二番目、営業利益は過去三番目、当期純利益は過去二番目となります。

2021年3月期 連結経営成績

黒野:2021年3月期、連結経営成績です。当第3四半期は、コロナ禍の影響はあったものの、5GやGIGAスクール構想案件が業績を牽引し、売上は前年同期比で微増となりました。

2月に計画を修正していますので、進捗率としては75パーセントから80パーセント程度となっています。当初計画に対しては超過見込みです。

配当

黒野:配当についてです。2020年3月期では、通期配当金は60円、配当性向は30.2パーセントとなりました。

2021年3月期は、当初計画では通期予想配当額は40円としていましたが、業績の上方修正を行ったことにより、通期の配当金予想を16円引き上げ、56円としました。それに伴い連結配当性向は30.2パーセントとなります。

ご覧のとおり、長年にわたり、配当性向30パーセントを維持していますが、当社の利益は国内の設備投資などの外部環境、景気動向の変化で大きく変動します。

そのため、2017年度から株主のみなさまへ安定的な配当、また長期保有スタンスの投資家を意識し、配当性向30パーセントをベースに純資産配当率等を加味する配当方針に変更しています。

中期経営計画の達成状況

黒野:中期経営計画の達成状況についてです。2018年3月期より4ヶ年の中期経営計画となっており、今期が最終年度となります。2020年3月期に目標数値を1年前倒しして達成となりました。

今期は、コロナ禍の影響により厳しい状況ではありますが、中期経営計画策定時の目標を上回る計画とし、現在取り組んでいます。

今後の成長分野①

黒野:ここからは、今後の成長に向けた取り組みをご紹介します。「電気と情報にかかわる強靱なインフラ構築へ貢献」することを目的に、多発する自然災害や高度情報化社会に対応できる製商品を展開していきます。

ゲリラ豪雨でも水を浸入させないキャビネット「タフテクト」を先日発売しました。通信基地局やデータセンターなどで情報通信のインフラを支えるシステムラック、5Gやテレワークに関連する製品の製造、販売にも注力しています。

今後の成長分野②

黒野:「新技術の活用や新市場進出による事業領域の拡大」を目指しています。持続可能な社会の実現に貢献できる製品・サービスの開発・提供を加速します。

電気自動車の充電スタンドは、IoT技術を活用した実証実験を開始しました。また、太陽光発電を利用し、災害時の停電に対応する独立電源盤を開発するなど、エネルギーの安定供給に注力していきます。

今後の成長分野③

黒野:また、防災・減災に貢献する製品開発にも注力します。老朽化したインフラ、自然災害へ対応した製品を開発しています。

例えば、地震から情報インフラを守るシステムラック、地震による電気火災から人や建物を守る感震ブレーカー、老朽化した配線などから発生する電気火災を防ぐ「スパーテクト」などの商品を充実させていきます。

今後の成長分野④

黒野:この「スパーテクト」について、少し詳しくご説明します。この製品は、電設資材にかかわる製品コンクールで「経済産業大臣賞」を受賞し、昨年4月より販売を開始した画期的な製品です。

日本の火災発生件数は減少傾向にありますが、電気火災は東京消防庁管内でも毎年1,000件を超え増加傾向で、火災全体の約4分の1を占めていると言われています。

日東工業が開発した放電検出ユニット「スパーテクト」をご自宅に取り付けることで、家中のトラッキング、ケーブル断線、ショートなどで発生する火花放電を検出し、電気火災を未然に防ぐことができます。老朽化した建物、たこ足配線が多い建物など、多くの場所で活躍します。

この製品は、多方面から高い評価をいただいており、静岡県の久能山東照宮や富士山本宮浅間大社に採用されるなど、歴史的な建造物を電気火災から守るためにも使用されています。

今後の成長分野⑤

黒野:グローバル化にも挑戦しています。国内で蓄積されたノウハウを海外に移植し、グローバルでの事業基盤の確立を目指しています。

今年は、NITTO KOGYO BM(THAILAND)の新しい工場が稼働を開始します。短納期、低コスト、高品質が可能となり、タイ国内での配電盤事業の売上拡大を目指しています。

ベトナムにおいても、情報通信関連の商社であるSOECO社をグループ化し、ベトナムにおける情報化社会の発展に貢献したいと考えています。

今後の成長分野⑥

黒野:グループ会社である北川工業の持つ熱対策・EMC対策技術についてご紹介します。熱対策とは、さまざまな機器の熱を拡散する技術のことです。EMC対策とは、電子機器に影響を与える電磁波への対策技術のことです。

昨今、コネクティッドカーや自動運転の台頭により、車は機械から電子機器の塊に変わろうとしています。車における機器の誤動作は、大きな事故の原因にもなります。そこで、北川工業が培ってきた熱対策やEMC対策のノウハウや技術が、今後さらに求められると考えています。

ほかにも、次世代通信網5Gの普及によって通信が大容量化するに伴い、熱やEMCの対策がより必要になると考えられるため、今後さらに技術を高めることで貢献していきたいと考えています。

ESGへの取り組み①

黒野:最後に、ESGへの取り組みとなります。まず、環境負荷低減への取り組みについてです。具体的な取り組みをご紹介します。

当社は、以前より環境に配慮した製品開発に注力してきました。例えば、製品の小型化、軽量化、省資源化はもちろんのこと、環境に優しいバイオマスプラスチックを利用した製品にも注力しています。

スライド左下の製品は、独自の技術を使用した水冷熱交換器で、「CO2排出量の削減に大きく寄与する熱対策製品」と評価を受け、「愛知環境賞」を受賞しました。

また、トラック輸送をしていた製品を、一部電車輸送に切り換えるなどして、CO2排出量削減に取り組んでいます。

ESGへの取り組み②

黒野:社会に関する取り組みについてです。まず、人財に関するものとして、働きがい改革とダイバーシティの推進に力を入れています。

昨年度より「働きがい改革」をスローガンに、従業員満足度向上に向けた改革を進めています。ダイバーシティの推進に関しては、もともと男性が多い会社ではありますが、女性取締役の選任や女性採用率の向上を進めています。

次に、地域コミュニティに関する取り組みとして「日東学術振興財団」を運営し、独創的な研究を行う方々に対して助成を行っています。助成は、理学、工学、医学、法学、芸術など幅広い分野を対象としています。今までに、延べ1,100名以上の研究者に約5億5,000万円の研究助成をしています。

2014年に「ノーベル物理学賞」を受賞された天野浩先生も、過去に当財団から助成を受けています。

ESGへの取り組み③

黒野:最後に、ガバナンス体制強化への取り組みとなります。2014年から社外取締役を選任し、現在では取締役の3分の1以上が社外取締役となっています。

そのほかにも、監査等委員会設置会社への移行や任意の指名報酬委員会設置などを行い、より透明性の高いガバナンス体制となるよう取り組んでいます。

以上で、日東工業のご紹介を終了いたします。ご清聴ありがとうございました。今後とも日東工業をよろしくお願いいたします。

質疑応答:日東工業の強みについて

坂本慎太郎氏(以下、坂本):まず、御社の強みに「製品開発力」があるというご説明が資料にもありましたが、具体的にはどういうことでしょうか?

黒野:日東工業の強みである「製品開発力」ですが、私自身、まず「企画力」が優れていると思っています。日東工業では、他社に先駆けた商品を多数製品化しています。また、多くの知的財産も保有しています。

お客さまが当社の製品をお使いになって何に苦労しているか、また、お使いになっている時に危険な作業をしていないか、お客さまがどのような製品を求めているかということを、現場で調査しています。そして、それを製品企画に反映させています。

お客さまとのコミュニケーションによって「新しい製品のヒント」を得られるということもありますが、それはごくごく稀であると考えており、やはり現場の調査そのものが重要と考えています。

企画化された後も、失敗を恐れずに熱意を持って開発にあたるということや、新しい開発製品にも自由に取り組める社風があるのも強みではないかと思っています。

黒野:また、先ほどもご説明しましたが、他社にない試験設備から培ったそのノウハウを多数保有しています。解析や実験などによって検証することも多く、スペシャリストも多く存在し、それによって「必要な時に必要な製品をタイムリーに出せる」ということが日東工業の強みだと考えています。

質疑応答:電気自動車の充電用スタンドの展望について

坂本:電気自動車の充電用スタンドの将来への展望についてです。このあたりは最近需要があるところで、補助金がけっこう出るため、私が住むマンションでも「さっさと付けませんか?」みたいな話があり、自治会でOKとなって何台か設置されました。このような電気自動車用のスタンドの将来性の見込みも含めて教えてください。

黒野:電気自動車は、クリーンな車として今後ますます増加すると思います。2030年にはドイツやイギリス、また2035年には日本でも新車の販売をすべて電動化するというような目標も立てています。

その中での我々の課題としては、充電インフラの整備と電力量の確保と考えているわけですが、まず我々が製品化している充電インフラとしては、商業施設や会社駐車場に使われている普通充電器を取り扱っています。

そのほかにも、家庭用で屋外で使える200ボルトのコンセント、また高速道路のサービスエリアに設置されている急速充電器などがあります。ただし当社は、先ほどお伝えしたとおり、普通充電器のみを製品化しています。コンセントや急速充電器は販売していません。

普通充電器に関しては豊田自動織機と共同開発しており、トップシェアだと考えています。また、カード認証や通信機能を備えており、今後ますます需要は高まると予想しています。

現在のところ、日本での電気自動車の販売台数は限られており、業績を押し上げるまでには至っていませんが、今後は大変楽しみな商品だと日東工業では受け止めています。

充電器に関してですが、従来よりも充電スピードを速くするために、充電容量の大きなものやクラウドサーバーから管理・制御できる通信機能付きの製品開発にも取り組んでいきたいと思っています。

将来的に、電気自動車が普及した際、電力消費量の拡大が非常に問題になると思っています。夏場でエアコンを使う時期は最も電力量が不足すると言われていますが、この不足する時に電気自動車の充電を始めると、一部の機関が試算するには原子力発電で10基必要とのことです。

八木:かなり必要になるのですね。

黒野:現実的に、日本で原子力発電10基を追加することは不可能に近いと思っています。そのため、必要なこととしては、例えば充電を順番にする仕組み、そして蓄電池で蓄えられた電力を有効に使うなど、電力消費を平準化することが必要になってきます。

我々の充電スタンドにおいてそれらの対策をすべきということで、開発に取り組んでいます。

質疑応答:瀬戸工場の新設について

坂本:瀬戸の新工場を作った目的と業績への影響を教えてください。

黒野:目的ですが、当社のメインの工場である名古屋工場が1967年、昭和42年に操業を開始しています。非常に老朽化しているため、老朽化対策として瀬戸工場に移るというのが目的です。

今はまだ土地だけを購入した状況ですが、開発許可申請、造成工事を経て、2024年春の稼働を目指しています。

日東工業としては、そのほかにも全国に工場があり、生産品目の入れ替えなどを行い、生産能力の増強および生産性の向上に努めていきたいと思っています。

生産性向上などから利益率の向上を目指していますが、現時点では業績に対して具体的な数字は算出していません。ただし、先ほどのESGの部分で触れたように、地域社会との共生や、従業員、環境にも優しく、そしてDX、IoTを駆使した「スマートファクトリー」というものを目指しています。

質疑応答:海外事業で注力している点について

坂本:海外事業の展開にも積極的ということで、資料の中でもご説明がありましたが、海外事業で一番注力されている点を教えてください。

黒野:海外事業ですが、現在のところ順調とは言えません。しかしながら、日本で配電盤関連の方々から「日東工業があってよかった」といったように、たくさんの「ありがとう」のお言葉をいただいています。

そのような言葉を海外でもいただきたいということで、品質、納期、コスト、サービス面から必ず喜んでいただけるものと信じて事業を展開しています。

東南アジアをメインに置いてはいるのですが、日東工業のグループ会社はたくさんあり、そちらでも海外展開していることから、海外でもグループ会社で結束して、まずはマーケティング体制を構築します。そして海外顧客のニーズを正確に掴み、製品化するということを加速させたいと思っています。

今年、タイの工場が稼働を開始するため、日系企業が多いタイ市場での売上拡大も目指しています。

また、先ほどご説明した放電検出ユニット「スパーテクト」といったものの海外販売も目指していきたいと思っています。

電気工事は、日本では非常に厳しい教育を受けて、資格を持った人が行いますが、海外ではそうではないケースも多くあります。そのため、火災というものが多いと聞いています。我々の商品は、海外で電気火災を防ぐことも可能ですので、広めていきたいと思います。

今年、海外の展示会にも出展します。そのほか、海外向け配電盤の開発も終わり、IEC規格も取得しましたので、これから製品を拡販していきたいと思っています。

質疑応答:今後展開する新製品について

坂本:将来の成長を含めて伸ばしていきたいものと、既存事業を伸ばすものとがあると思うのですが、新製品について、どのようなものの開発、販売を考えているかを教えてください。

黒野:たくさんあるのですが、1つは防災・減災製品を増やしていきたいと思っています。日東工業の製品である配電盤やブレーカは、先ほどもお話ししたとおり、電気火災や漏電火災から人や建物を守っています。

キャビネットに関しても、内部機器を外部環境から守っているということを説明させていただきましたが、当社は「何かを守る製品」を主力に販売しています。その意味で、やはり今後も防災・減災製品を増やしていきたいと思っています。

また、「スパーテクト」のような放電検出ユニットは、いろいろなシリーズを増やしていきたいと考えています。

さらに、感震ブレーカーというものもあります。日本では数多くの地震が発生していますが、その地震発生後に電気火災が発生すると言われています。その火災が発生しないように、ブレーカをオフにする感震ブレーカーの普及に努めていきたいと思っています。

質疑応答:今後のM&Aについて

坂本:守る製品を含めて伸ばしていきたいということですが、ここ10年くらいでM&Aなどを積極的に行っており、サンテレホンや北川工業も子会社化したというお話でした。

坂本:これで情報通信流通の部分が伸びると思っています。このあたりで事業拡大されていますが、御社の財務はまだ余裕があって非常に好財務だと思っており、M&Aする余力は当然まだあると思っています。

先ほど、製品のお話を教えていただいたのですが、次世代ビジネスモデル対応のために考えている業種や業態について、お話しできる範囲で構いませんので教えてください。

黒野:先ほど、注力すべき商品として「防災・減災」だとご説明しました。そのほかにも、EV自動車関連、エネルギーマネジメント関連、蓄電池関連が我々の進むべき道だと考えています。

分電盤、配電盤に関してはその中心的なもののため、分電盤の中にますます大きな機器やシステムが加わってくると考えています。

現在は、安全・安心なインフラを心がけてきましたが、今後はその電力市場に向けた、環境に優しいカーボンニュートラルを意識した製品開発が必要です。

先ほど、開発も当社の強みだとお伝えしましたが、お客さまに喜んでいただく製品開発をするにあたっては、いろいろな技術が必要になります。その必要な技術を、すべて日東工業が保有しているわけではないため、不足する技術に関しては他社との協業で確保して、早期に製品開発を進めていきたいと思います。

質疑応答:自動運転分野における取り組みについて

坂本:事前に個人投資家からいただいていた質問ですが、今後伸ばす分野で「自動運転について聞きたい」ということです。自動運転分野での貢献も考えられるということですが、国内や海外自動車メーカーとの具体的な取り組みがあれば教えてください。

黒野:そちらは、機密情報になります。

坂本:もちろん、そうですよね。話せる範囲で構いません。

黒野:先ほど自動運転についてお話をさせていただいたとおり、誤動作が起きたら車がどこに行ってしまうかわからないわけですから、非常に大きな問題になると思います。

そのため、北川工業が持っているEMCの技術や、熱対策技術が非常にそこに貢献するのではないかと考えています。北川工業では「EMCセンター」というものがあり、電子機器の対策を専門に行える設備があります。実は、車1台をまるごと試験設備に入れて、電磁波による影響、その他もろもろを検証できます。

電磁波は非常に難しい対策で、電気が流れる配線の長さや配線の位置を変えると電磁波の影響を受けるなど、すごくデリケートです。そのため大変高い技術を要しています。これらに対応できるよう、各種ご提案を自動車メーカーに行っていきたいと考えています。

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