2021年3月6日にログミーFinance主催で行われた、第18回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第5部・沖縄セルラー電話株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:沖縄セルラー電話株式会社 執行役員 経営管理本部 副本部長 上原靖 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
フリーアナウンサー 八木ひとみ 氏
第18回 個人投資家向けIRセミナー
上原靖氏(以下、上原):沖縄セルラー電話株式会社の上原でございます。本日は貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日はご覧のスライド資料に基づいてご説明します。資料の表紙は、沖縄セルラー電話のカレンダーの一部です。石畳で沖縄県の特徴を表しているかと思いますが、下のほうに鹿も写っています。
八木ひとみ氏(以下、八木):かわいらしいですね。
上原:これは「auシカ!」という、沖縄セルラー電話独自のマスコットキャラクターです。親会社のKDDIでは使っていません。「auシカ!」は大活躍しており、今日は彼がいるので少し落ち着いてお話しできるかと思います。
沿革
本日は、会社概要・経営目標、事業概要、社会貢献、株主還元の4章立てでご説明します。まず、会社の沿革です。沖縄セルラー電話は1991年6月に設立され、今年の6月で満30年を迎えます。
沖縄セルラー電話の設立には経緯があります。1990年10月に、沖縄の有力企業のみなさまと本土の有力企業のみなさまで「沖縄懇話会」を立ち上げました。沖縄は戦後に米軍統治されていましたが、1972年に復帰しました。社会インフラなどを整えてきたものの、経済振興はままならず、経済がうまくいかないということで、本土の方からご心配いただいて、懇話会ができました。
その中で「沖縄振興のために何かできないか」ということで、京セラや第二電電を立ち上げられた稲盛和夫さんが「沖縄に携帯電話会社を作ろう」と提案したところ、みなさまにご賛同いただき、沖縄に携帯電話会社ができました。
かなり昔ですが、関東にはNTTの対抗で日本移動通信という会社がありました。北海道から九州まで、各セルラー会社が第二電電の下で設立されました。よって、普通であれば九州セルラーの一支店のようなところで沖縄のサービスが開始されてもおかしくなかったのですが、この懇話会のおかげで沖縄に独立した会社ができました。
その結果、県内の有力企業のみなさまにご出資いただき、KDDIと連携して、1991年6月に沖縄セルラーを設立しました。そして、沖縄本島内に基地局を立て、翌年1992年10月に携帯電話サービスを開始しました。
その後、18年ほどは携帯電話オンリーで走ってきましたが、2010年1月に「沖縄通信ネットワーク」を子会社化しました。こちらは、当時は沖縄電力の子会社であり、固定の通信インフラを手掛けていた会社でした。
沖縄通信ネットワークは、固定通信の中でも特にFTTHサービス(光ファイバー)も手掛けていたのですが、残念ながら、当時はお客さまがほとんど集まらず、設備を減損処理せざるを得ない状況でした。このような中で私どもに子会社化され、我々がFTTHとモバイルのセットで提供するということで、営業活動をさせていただきました。その結果、モバイルとFTTHを提供する、沖縄県内唯一の総合通信事業者となったわけです。
その後、例えば「au」では「auスマートバリュー」という、両方ご契約いただくと割引されるバンドルサービスで加入者をどんどん伸ばしてきています。通信についてはこのようなかたちで進んでいます。
また、前期の2019年11月には、沖縄県の電力会社である沖縄電力と業務提携し、一般家庭向けの電力供給事業「auでんき」のサービス提供を開始しました。「auでんき」自体は沖縄以外では2016年からサービス提供されていますが、沖縄は一歩遅れて2019年のサービス提供となりました。沖縄電力と提携することによって、「auでんき」のサービス提供を開始することができたということです。
このように、「沖縄のために」という声から生まれ、沖縄のための総合通信事業者となったのが沖縄セルラー電話です。
会社概要
上原:次は会社概要です。スライド右側にビルの写真が写っていますが、こちらは沖縄セルラー電話の本社ビルです。2013年8月にやっと自社ビルを建てることができました。
八木:松山にあるのですか?
上原:おっしゃるとおりです。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):僕、行ったことがあります。すごい重厚なビルで、その時ちょうど株主総会を行っていました。
八木:繁華街の中心ですよね?
上原:そうなのですよ。久茂地交差点というビジネスの中心地があるのですが、そこから本当にすぐそこのエリアにあります。日銀の沖縄支店があった跡地が売り出されたところに私どもが手を挙げ、ビルを建てさせていただきました。日銀で使った大きな金庫の扉があり、沖縄セルラーの本社ビルに入るとそれを見ることができますので、株主になりましたら、ぜひ総会でご覧いただきたいと思います。
また、代表取締役社長は湯淺英雄です。auでモバイル関連の取締役をしていましたし、その後は中部テレコミュニケーション(ctc)で固定通信を経験していますので、移動通信・固定通信に非常に長けた社長です。
沖縄セルラーサマリ
上原:続いて、沖縄セルラーのサマリということで、スライド左側では財務関連、右側では株式関連について記載しています。
財務関連については、2020年3月末時点の情報となります。総資産額1,056億円、純資産額894億円ということで、自己資本比率が81.9パーセントとなっています。このような強固な財務基盤が自慢の1つです。
また、当期純利益は98億円を計上し、ROEは11.8パーセントとなっています。こちらも2桁あればというところだと思いますが、高い収益性も兼ねているということをご理解いただけるかと思います。
スライド右側の株式関連ですが、株価は4,790円と記載しています。こちらは2月18日に出した数字であり、現在は株価がだいぶ上がってきましたので、5,000円を超えています。よって、配当利回りは3.22パーセントだったのですが、3.00パーセントくらいになっています。
経営目標
上原:続いて、経営目標です。私どもは経営目標として「3増(サンゾウ)+配当性向40パーセント超」を掲げています。「3増」というのは、増収・増益・連続増配の3つです。そして連続増配を続けながらも配当性向は40パーセントを超えていこうというところです。
業績推移
上原:業績の推移として「3増」の状況を表したのが、7ページのスライドです。スライド左側が営業収益ですが、ご覧のとおり右肩上がりでずっと増収を続けており、終えた期までで10期連続の増収となっています。
加えて、足元の2021年3月期は730億円を予定しています。4月の業績予想では700億円でしたが、1月の第3四半期の決算発表時に業績予想を730億円に上方修正しました。これを達成すると、11期連続の増収となります。
スライド右側は営業利益をグラフで表していますが、こちらも8期連続で増益を続けています。足元2021年3月期は145億円を予想していますが、こちらも1月の第3四半期の決算発表時に上方修正しています。4月は140億円と発表しましたが、145億円に上方修正ということで、こちらを達成すると9期連続の増収増益となります。
一株当たりの配当金の状況①
上原:こちらのスライドは一株当たりの配当金の状況を表しています。ご覧のとおり、こちらも19期連続で増配を続けており、足元2021年3月期の中間配当は77円で終えていますが、期末も同額とすると154円となります。したがって、6月の総会で承認されると20期連続の増配となります。また、配当性向は40.1パーセントということで、「3増+配当性向40.1パーセント」を今期も予想しています。
沖縄セルラーグループ
上原:こちらは沖縄セルラーグループのフォーメーションとサービスを表していますが、まずスライド左側には沖縄セルラーがあります。先ほどもお伝えしたとおり、親会社はKDDIとなっており、51.5パーセントを出資していただいています。
沖縄セルラーの子会社としては、OTNet(沖縄通信ネットワーク)があります。先ほど沿革でお話ししましたが、以前は沖縄電力の子会社でしたので、沖縄電力にも2割ほど出資していただいています。光ファイバーの敷設も沖縄電力にご協力いただき、沖縄本島を整えているところです。
その右側にもう1つ、100パーセントの子会社の沖縄セルラーアグリ&マルシェがあります。こちらは新規事業として、通信やICTを絡めながら、観光あるいはアグリ(農業)事業関連を展開しはじめているところです。
スライド右側はサービス関連を記載しており、モバイル、FTTH、ライフデザインが売上収益の柱となっています。みなさまもご存知のとおり、モバイルは「au」というブランドがあります。これは使い放題の「auデータMAXプラン」などを中心に、しっかりと使っていただけます。
「UQ mobile」は、小中容量で使っていただけるお客さま向けですが、特にこの2月から始めた「くりこしプラン」が特徴的です。余ったデータの分を翌月に繰り越すことができますので、利用が安定しないお客さま向けになっています。
そして、3つ目の料金プランとして「povo(ポヴォ)」があります。これは3月23日からサービスを始めますが、オンラインでの受付専用となりますので、若い方を中心にお申し込みいただけると期待しています。
FTTH(光ファイバー)の回線については、沖縄通信ネットワークがインフラ展開している「auひかり ちゅら」があります。自前のインフラを使っています。
もう1つは「ひかりゆいまーる」です。自前ではなかなか展開できない、世帯の薄い地域については、NTT西日本が展開している「光コラボレーション」を利用させていただき、私どものブランド「ひかりゆいまーる」として展開しています。
ライフデザインについては、前期の11月から「auでんき」を開始しました。以上の3つが売上の柱となって走っています。
モバイル契約者推移
上原:続いて、モバイル契約者の推移です。事業については先ほどご説明しましたが、次は屋台骨であるモバイルについてご説明します。スライド左側の棒グラフは、沖縄セルラーとご契約いただいている、「au」や「UQ mobile」の加入者数です。しっかりと右肩上がりで増加しており、足元の契約者数は70万を突破しています。2021年3月期末には、73万契約を予想しており、今期も順調に加入者を伸ばしています。
坂本:御社のシェアとして、沖縄にきめ細かい販売網がたくさんあることが1つの要因だと思っていますが、それ以外のこのシェアの背景について教えていただけたらと思います。
上原:沿革のところでお話ししましたが、沖縄県内の有力企業のみなさまに出資いただいています。サービスを開始した当時はまだ携帯電話が高く、個人が持っている状況ではありませんでした。つまり、企業の方がお持ちになることが多かったのです。出資いただいた企業に代理店になってもらい、会社やグループ、お取引先とどんどん契約を取っていただいたことが、まず大きなところだと思います。
そして、やはり携帯電話はなんといってもネットワークが使えないといけません。当時はまだアナログだったのですが、漁師の方が海に携帯電話を持っていき、「かなり遠方まで使えるぞ」という口コミをどんどん広げていただきました。今はNTTはどこでもつながると思いますが、当時のまだどこでもつながる状況ではない中で、遠くの海まで使えるということで、「沖縄セルラーのネットワークは非常によい」と、広めていただいたところも大きいかと思います。
加えて、最初に立ち上げたことで、シェアは7割を超え、それからどんどんとコンシューマーに広がっていきました。当時は「家族割」というものもあり、それが広がる段階でみなさまに家族で組んでいただきました。一度家族で組むとシェアはなかなか強固になります。そして、多くのお客さまが手続きするため、auショップを数多く作りました。だんだん集約されてきましたが、今でも他キャリアの倍くらいあります。
八木:確かにショップが多いと便利ですよね。
坂本:販売網ですね。
上原:立ち上げからしっかりとシェアを上げていき、家族で組まれ、auショップでアフターフォローするということです。また、沖縄セルラーの本社が沖縄県にあることも大きいです。他のキャリアの本社は東京にありますが、東京と地方では売り方などが異なってきますので、沖縄県那覇市に本社があるのは強みです。他社との差別化、さまざまなマーケティングや営業手法が強みだと考えています。
沖縄県では2人に1人が沖縄セルラーを契約しているということで、みなさまありがとうございます。
沖縄県の特色
上原:足元はお伝えしたような契約状況ですが、次に「今後どうなの?」というところについてご説明します。日本の人口は減少傾向にありますし、東京でも先月「前年比で人口が減った」というニュースが流れました。しかし沖縄県の特色としては、2030年まで人口が増加するという推計が出ていますので、市場はさらに拡大します。
また、沖縄県は若年層の割合が全国1位です。10歳ごとの年齢別での人口構成比を見ると、10歳未満が11パーセント、10代も11パーセントとなっています。全国において、それぞれの世代で2桁を構成している地域はなく、だいたい8パーセント、よくて9パーセント台です。そのような中で若年層の割合が高いため、今から携帯電話やスマートフォンをお持ちになるポテンシャルの高い人口構成比となっています。
坂本:確かに、出生率や出生数を考えると11パーセントってすごく大きいですよね。100万人をどんどん切っていますので、おそらく将来そこが伸びる部分だと思います。
投資家からよく聞かれる質問だと思うのですが、MVNOに加えて「ahamo」や「povo」など、いろいろな安いサブブランドが入ってくると、若年層はそちらに流れると思っています。したがって、もともと沖縄セルラーさまのサービスにいくはずだったものが「povo」に流れた場合、トップラインは落ちると思います。こちらのグランドデザインと言いますか、将来的な見通しについてもう少し教えていただけたらと思います。
上原:当然のことながら、今回の新しい料金ではネットでの手続きがありますので、まず若い方は入りやすいサービスとなっています。そのような方々がどこにいくかについては、やはり「povo」にいくのだと思います。
利用していくと動画など、リッチなコンテンツにどんどんつないでいき、外で動画を見ることも多いと思います。若い方は20ギガを使うでしょう。そして、だんだん20ギガでは足りなくなってくるのではないでしょうか。
八木:特に5Gになってくると移りますよね。
上原:おっしゃるとおりです。「povo」は2,480円ですが、「UQ mobile」の15ギガ使えるMプランも2,480円です。これは繰り越しできるため、余らず使えます。さらに、Lプランですと3,480円で25ギガ使えます。
また、「au」の「auデータMAXプラン」は、割引などのいろいろな組み合わせで変わるのですが、「家族割」+「auスマートバリュー」を組むと4,480円まで落ちます。沖縄の場合は、先ほどもお伝えした「家族割」が非常に人気です。実は私も10人で「家族割」を組んでいます。
坂本:おお。
八木:すごい。
上原:私の家内と子ども、そして家内の実家の家族で組めるため、10人で組めます。そうすると、「家族割」プラス、3人以上で最大の割引が1,000円になるため、3人以上で組まれるご家族が多いです。そこで、先ほどお伝えした4,480円になるわけです。ハードルとしては1,000円単位で上がっていくくらいですので、リッチなコンテンツを使えば使うほど、必要になってくるギガもワンステップずつ上がっていくということです。
八木:気が付いたら同じくらい払っていたという可能性もあるということですよね。
上原:5Gはもう目の前まで来ていますから。まず入っていただき、どんどん楽しく使っていただいて、使いやすい料金プランがワンステップずつ上がっていくというのを期待しています。
坂本:もともとのシェアが高いと、そこは非常に強みですよね。
上原:繰り返しになりますが、やはり先に高いシェアを維持できているところが大きいです。
5G/IoT時代到来
八木:続いては、その5Gに関してですよね。
上原:今後は5G、IoTの時代が到来します。ご存知のとおり、携帯電話はどんどん世代が上がり、1980年代の「もしもし、はいはい」の1Gから始まり、現在は4Gです。2010年代はそれを中心にスマートフォンがどんどん広がっていきました。
足元、2020年には5Gが始まりました。残念ながらまだネットワーク自体が整えられていませんが、今期末、そして来期とどんどんと広がっていきます。
KDDIグループの社長は、「来期末には90パーセントの人口カバー率になる」とおっしゃっています。沖縄セルラーも、しっかりとそこを目指してエリアを整えていきます。今後は5Gが広がっていきますので、それに合わせたビジネスモデルを作っていきたいと思います。
5Gが実現する世界
上原:次は5Gが実現する世界についてです。みなさまご存知のとおり、ライフスタイル変革につながるさまざまなサービスが誕生しています。
バーチャルで360度自分の見たい角度から見られる自由視点VRや、スライドの右下に写真がありますARやVRを使った観光案内、テレイグジスタンスでの観光など、さまざまなサービスが出ると思います。まだキラーとなるサービスは固まっていませんが、期待できる変革を迎えられるかと思います。以上がモバイルでした。
FTTH回線契約者推移
上原:FTTH(光ファイバー)の回線契約者の推移をスライド左側のグラフでお示ししています。こちらも右肩上がりで伸びており、今期末で10万8,900件の契約を予定していると発表しています。契約者は着実に増加しています。
また、スライド右側の回線シェアの推移は31.2パーセントとなっており、こちらも少しずつシェアを伸ばしています。
加えて、現在の全国の光インターネットの普及は58.2パーセントなのですが、5年前はちょうど5割くらいでした。一方、沖縄は現在52.6パーセントと、5.6ポイントほど下回っています。5年前は7ポイントくらい開いていましたが、だんだん縮まってきています。
全国の普及率もどんどん高まってきていますので、普及率の高まりと全国との差を縮めるということで、沖縄セルラーとしては、まだまだ普及する中でシェアも伸ばし、モバイルのシェアに一歩でも近づけるよう取り組んでいます。
auでんき契約件数
上原:「auでんき」は前期の第3四半期からサービスを開始し、まだ5四半期です。サービス開始当初は「2023年3月期に4万5,000契約到達」という目標を掲げたのですが、2年前倒しで計画を達成しました。
坂本:非常に伸びが著しいですよね。積み上げてきたスピードについても、御社のブランド力や販売網があったからだと思っています。目標は早めに達成したということですが、これは来年、再来年も伸び続けるイメージでしょうか?
また、第7位の株主の沖縄電力といろいろなお仕事をされていると思います。どちらかと言うと、ある程度は沖縄電力のフィーが御社にいくと思うのですが、このまま伸び続けて大丈夫でしょうか? 現在の関係は良好だと思いますが、投資家からしたらこのまま伸び続けてよいのかと感じます。いかがでしょうか?
上原:まず、伸びとしてはまだ始めたばかりですので、妨げる要素は特にありません。こちらは世帯に1契約ですが、世帯に1契約というのは、1つ前のFTTHも基本的には1世帯に1つです。
工事を伴うFTTHでさえ10万契約を超えています。「auでんき」は、沖縄電力の電気を使用しているご家庭は、申し込みの翌月までには切り替わります。工事は特にありませんので、お客さまにとって障害となるものはありません。
また、お客さまからすると、まったく損はありません。私どもと沖縄電力とお客さまの3者契約になっており、沖縄電力からサービス提供、そして我々からご請求させていただくかたちとなっています。
さらに、利用料金に応じて、使っていただいた料金の1パーセントから5パーセントまでをお客さまに「Pontaポイント」でバックしますので、まったく損がありません。
一部の他の新電力では、元のプランとだいぶ異なるため、使い方によっては料金が逆に高くなってしまったり、LNGの高騰により12月、1月あたりでかなり高騰したりしています。
坂本:変動性になる部分がすごい見られてきたと言いますよね。
上原:ある新電力は「もうこれはお手上げだ」ということで、一度サービス買付を停止していましたが、このサービスに関しては、沖縄電力と一定の率で契約していますので、お客さまにご迷惑はかけませんし、私どもも痛みは伴いません。
また、沖縄電力も新電力、あるいは各キャリアも、モバイルと電気のバンドルのサービスを行っています。あちらは3者契約ではないので、電力からすると全部持っていかれてしまうということです。
坂本:それを防止すると言いますか、新電力に行くのを御社で巻き取っておくということですよね。
上原:ですので、電力からすると、全部持っていかれるよりは沖縄セルラーとタイアップしてよりよいところを、と考えますので両方にメリットがありますし、お客さまにもメリットがあります。
坂本:ある意味ではみなさまにメリットがあるということですよね。
上原:みなさま「Win-Win」になるということです。
坂本:ありがとうございます。非常によくわかりました。
新たな成長分野の育成
上原:屋台骨となるモバイルと、それに続くFTTH、ライフデザインの新しいサービス「auでんき」がありますが、さらに新規事業も手がけており、その成長を考えています。
海底ケーブル
上原:その1つが海底ケーブルです。こちらは前期末に竣工し、この4月から収益を計上しています。海底ケーブルは、もともと沖縄県と本土で東側のルートが2回線ありました。こちらは私どもではなく、親会社のKDDIが手がけているルートなのですが、昨今の大地震等があり、東だけでは危ないということで、西側ルートとして、私どもが自前で50億円を超える投資を行い、海底ケーブルを展開しました。
南海トラフなどの大地震の心配はありますが、西側ルートと東側ルートで二重化することにより、強靭な通信ネットワークの環境を構築できました。
さらに、先ほどお話しした5Gによりトラフィックがどんどん上がっていきますので、そのトラフィックを吸収するためにも、この西側のルートは今後期待できるのではないかと思っています。他社に使っていただけるチャンスも考えられるところです。
沖縄セルラーフォレストビル
上原:新規事業のもう1つは、沖縄セルラーフォレストビルです。こちらは2021年秋に竣工予定なのですが、IoTやICTを活用する企業の集積の拠点となる、沖縄セルラー提供の賃貸オフィスビルであり、データセンターを併設しています。
スライド左側の写真が新ビルの外観イメージ、右側がロケーションです。那覇市の中心地にあり、那覇空港から車で7分です。
八木:近いですね。
上原:那覇空港からモノレールが伸びていますが、モノレールの旭橋駅のすぐ目の前です。そして、その目の前にはバスターミナルがあります。
また、空港からたった7分ということで、アクセスの非常に良好な場所にあります。ぜひとも本土の企業のみなさまにもご利用いただき、沖縄を活性化させていただきたいと思っています。以上が、事業の概要です。
アグリ事業
上原:続いて、社会貢献についてご説明します。沖縄セルラーは沖縄県に本社があるということで、地元のみなさまに支えられていましたので、社会貢献活動にしっかりと取り組んでいます。
1つはアグリ事業です。子会社の沖縄セルラーアグリ&マルシェが手がけている野菜工場やイチゴ工場があるのですが、このイチゴ工場は、県内初のICTを活用した完全無農薬のイチゴ工場です。
第1弾としては地元の方々に卸しましたが、2020年3月期に内閣府から補助金をいただきましたので、第2弾として工場を増設しました。この増設した部分については、今後海外市場として、香港あるいは台湾など、アジアへ輸出を検討しています。
工場のロケーションは、沖縄県北部の名護市よりもさらに北の大宜味村です。人口3,000人ほどの村ですが、こちらを新産業として広めていきたいですし、雇用にも貢献していきます。
ヘルスケア事業
上原:続いて、ヘルスケア事業です。コロナ禍により、離島に1つしかない診療所になかなか訪れることができないということで、オンライン診療の実証実験を開始したところです。与那国町は2,000人くらいの人口であり、大部分が高齢者ですので、与那国島でうまくいけば他の離島にも展開したいと思います。
コロナ禍でのサポート
上原:また、コロナ禍でのサポートも行っています。海外からさまざまな留学生が沖縄県に来ていますが、特に春先はバイトの収入が途絶えたこと、あるいは通信に影響があったということで、支援金やタブレット端末を提供するなどしています。
地元支援の取り組み
上原:さらに、沖縄県は所得が低いということで、貧困がかなり問題になっています。子どもの貧困の支援ということで、団体への寄付を5期続けています。
スライド右側は「離島ケータイ奨学金」です。離島に高校がないため、学生は中学を卒業すると1人で本島に出てきます。彼らのために、3年間の通信費あるいは携帯電話端末の無償提供を行うということで、こちらも6期続けています。
首里城再建に向けて
上原:また、火災で首里城が焼失してしまいましたが、当然のことながら寄付も行っています。さまざまなプロジェクトも走っていますので、修復再建に向けて、このようなところも今後もしっかりと取り組んでいきたいと思います。
一株当たりの配当金の状況②
上原:株主還元についてです。繰り返しになりますが、一株当たりの配当金は154円です。先ほどのとおり、経営目標の「3増」の中の連続増配となっています。
20期連続増配というのは、上場会社の中でもトップ10に入るくらいの年数になっています。一度途絶えてゼロからになると、また20年の時間がかかりますので、ここはしっかりと続けていきたいと思います。
坂本:目立ちますよね。ITバブルの時もそうですし、リーマンショックや東日本大震災などで断絶した会社も多いのですが、ここで続けるとかなり上位になります。株主はうれしいと思いますので、このまま続けていただきたいと思います。
株主優待
上原:個人の株主さまには株主優待も魅力的かと思います。3月決算ですので、3月末の株主さまには株主優待として6月ごろにカタログギフトを贈らせていただきます。持っている株数と保有期間により、3,000円から最大で1万円のカタログギフトとなります。
全国47都道府県のグルメ品から、「auPAYマーケット」あるいは沖縄セルラーが手がけている「沖縄CLIPマルシェ」の商品を自由に選べるということで、非常に好評いただいています。
自己株式の取得状況
上原:4月に自己株買いを発表しました。上限20億円ということで5月から開始し、スライド左側の金額ベースで言うと、20億円に対して現在は89パーセントとなっています。4月を期限としていますが、もう9割まで届いていますので、3月、4月でしっかりと進めていきます。
「JPX日経中小型株指数」構成銘柄へ初選定
上原:また、「JPX日経中小型株指数」の構成銘柄に初選定されました。今後も、投資家のみなさまにしっかりと情報を発信し、評価され続けるよう、きちんとIR活動に取り組んでいきたいと思います。
まとめ
上原:ご説明は以上となりますが、みなさまに少しでもご理解いただけますと幸いです。ありがとうございました。
質疑応答:携帯電話事業以外の収益源やM&Aについて
坂本:通信を軸に生活に密着したサービスも進められていますが、携帯電話事業以外でも収益源は立つのでしょうか? 僕が「おっ」と思ったのはケーブルです。海底ケーブルが他社に使ってもらえるということで、確かに非常に収益源になるかと思います。貸し出しなども考えての投資かと思ったのですが、いかがでしょうか? また、今後はM&Aを検討していますか? どのようなイメージで考えられているのか教えていただけたらと思います。
上原:沖縄セルラーには、通信を中心に70万人を超えるお客さまがいますので、新しい事業にも基本的には自ら取り組んでいきたいと思います。また、沖縄県内の企業のみなさまに支えられていますので、沖縄県内の企業のみなさまとタイアップできる部分はしっかりとしていきたいと思っています。新しい事業に対してスピード感が求められる中で、必要となればM&Aも考えたいと思いますが、今のところは自前で走ることを中心に考えています。
質疑応答:新型コロナウイルスによる業績の影響について
八木:個人投資家の方から事前にいただいていた質問なのですが、「2021年3月期は在宅勤務の拡大で過去最高益となっていますが、新型コロナウイルスによる業績の影響についてはいかがでしたか?」
上原:1年前の春先を思い出すと、みなさま初めての在宅勤務であり、テレワークがかなり拡大されました。テレワークの中心となるのは通信だと思うのですが、今まで1人でお住まいでFTTHが必要なかった方も、トラフィックを使うためにはFTTH、光回線が必要だということで、光の契約の申し込みがかなり入りました。
モバイルについても、FTTHが引けないため、モバイルの使い放題などにプランを上げる動きもありました。ただし、経済的な負担が大きいということで、学生には一定数のトラフィックの援助を行いました。したがって、今回新型コロナウイルスでかなり苦しんでいる事業のみなさまもいると思うのですが、沖縄セルラーの通信は追い風になったと考えています。
質疑応答:株式の分割について
坂本:「現在の株価水準で株式の分割は考えていないのですか?」というご質問を個人投資家からいただいています。分割するかしないかは経営判断の部分であり、なかなか答えにくいところだと思うのですが、「これから株価が高騰したら考えます」くらいでもよいので、何かイメージがあれば教えてください。
上原:先ほどのとおり、私どもは株主、投資家のみなさまに対して、配当で還元したり優待を出したり、情報を発信するなど、さまざまなことを行っています。ですので、株式の分割についてもさまざまな観点で市場の状況を見ながら考えていこうということはあります。しかし、今しようというお話ではなく、いつもそのような流れがあるのかどうかも含めてウォッチさせていただこうと思います。
質疑応答:海底ケーブルについて
八木:海底ケーブルが気になっている視聴者の方もいらっしゃいますが、いかがでしょうか?
坂本:御社としてはけっこう大きな投資額でしたよね。
上原:そうですね。本来はモバイルの投資とFTTHの投資を合わせても、年間で60億円から70億円となる中で、110億円くらいの投資を行いました。足元ですぐに必要かと言うとそうではないと思うのですが、どんどんトラフィックが増えていくのは間違いないため、それに備えるということで取り組んできました。将来を見据えてというところです。
一定の利益を計上し、このような投資をしっかり行えるのも、沖縄県民のみなさまに支えられているところが大きいと思います。地域貢献をしながらしっかりと沖縄の通信を支えていきたいと思います。
質疑応答:沖縄セルラーフォレストビルについて
八木:沖縄セルラーフォレストビルについて、何社くらい入るかというイメージはありますか?
上原:フロアを貸したりしますからね。
八木:それでまた違いますよね。
上原:ロケーションが非常によいので、ぜひ沖縄に出たい本土の企業に興味を持っていただきたいと思っています。