しかも、返済が順調に進んでいたにもかかわらず、気が付いたら返済困難に陥ってしまっていたケースが少なくないようです。今回の一連のコロナ禍の影響で住宅ローン返済計画が大きく狂った人も少なくないはずですが、1年前には全く予想していなかったことだったのではないでしょうか。

「オーバーローン」になったときの金融機関は甘くない

住宅ローンの返済が滞り、いよいよ破綻が迫った時、多くの債務者が“最後の一手”として考えるのが売却による返済です。つまり、今現在住んでいる自宅を売却して、その売却金額を返済に充てるというものです。しかし、そうは問屋がおろさない場合があるのです。

最大の理由は、その自宅に(金融機関の)抵当権が設定されているからです。抵当権が設定されたままでは不動産を(勝手に)売却できません。自宅の売却には金融機関の許可が必要になります。

ここで重要になるのが、「アンダーローン」と「オーバーローン」という状況です。簡単なモデルで考えてみましょう。

たとえば、何らかの理由(リストラや病気、今回のコロナ禍等)によって収入が激減し、住宅ローン残高3,000万円の返済が難しくなったとします。

この時、自宅の評価額(=市場取引額。相続税評価額ではない)が3,500万円の場合、金融機関は抵当権を抹消して売却を承諾するでしょう。なぜならば、金融機関は残額3,000万円を回収できるからです。これが「アンダーローン」です。

しかし、もし自宅の評価額が2,500万円の場合、単純に売却しても金融機関は残債3,000万円を回収することはできず、▲500万円の不良債権が発生します。