2021年2月12日に行われた、国際石油開発帝石株式会社2020年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:国際石油開発帝石株式会社 代表取締役社長 上田隆之 氏
国際石油開発帝石株式会社 取締役 常務執行役員 財務・経理本部長 山田大介 氏

2020年12月期決算説明会

上田隆之氏:本日はお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。社長の上田でございます。本日は私から事業活動報告、それからネットゼロカーボン社会に向けた事業展開につきまして、そして中期経営計画の進捗についてご説明を差し上げます。後ほど山田より決算の説明および業績予想について説明をいたします。

2020年12月期 決算説明会 ハイライト

それでは2020年度の事業活動の報告についてご説明いたします。まず、2020年度の決算についてご説明を申し上げます。後ほど山田より詳しく説明をいたしますが、連結の売上高は7,710億円、親会社株主に帰属する純損益は1,116億円の損失となりました。

一過性損益の影響を除くベース純利益は546億円の純利益となりましたが、原油価格の大幅な下落に伴い資産の再評価を行った結果、1,899億円の減損損失等の一過性損益を計上いたしました。これによりまして1,116億円の純損失と大変厳しい結果となりました。

2021年度の業績予想に関しましては、足元原油価格も一定の回復を見せており連結売上高は8,830億円、親会社株主に帰属する純損益は1,000億円の黒字を予想しております。

配当に関しましては、2020年度は一過性損益により業績が大きく悪化したものの、中間12円とした上で期末12円の計24円を予定しております。今年度は相当程度業績が回復する見通しを踏まえ、前期実績の24円から3円増配の27円といたします。なお油価等の事業環境を見極めた上で、中間・期末の時点で配当額を改めて判断いたします。

経営のハイライトでありますけれども、2021年1月27日にネットゼロカーボン社会に向けた当社の今後の事業展開をお示しいたしました。また社名を株式会社INPEXに変更することを公表させていただきました。これらの点については後ほどご説明を申し上げます。

それから昨年は低油価環境に速やかに対応すべく、投資・コストの削減、流動性とフリーキャッシュフローの確保に取り組んでまいりました。

2021年以降もこれらの努力を継続してまいり、業績の底上げを図ります。また新型コロナウイルス感染症対策にも引き続き徹底し、エネルギーの安定供給に取り組んでまいります。プロジェクトの状況に関しましては、次のスライド以降で個々にご説明を申し上げます。

イクシスLNGプロジェクト

まずイクシスLNGプロジェクトの状況であります。2020年度は順調に操業を継続いたしました。結果、122隻のLNGカーゴを出荷いたしました。イクシスプロジェクトの足元の生産量は2020年10月から12月までの平均で、日量約35.7万バレルとなりました。

また今年度のメンテナンスの計画でありますが、安定・安全操業に必要なメンテナンスを2021年の上期に約1ヶ月程度実施する予定としております。また今後もプラトーレベルの生産を長期的に維持するために、2021年も引き続き、生産井の掘削を予定しております。

イクシスLNGプロジェクト 周辺探鉱鉱区

次にイクシス周辺の探鉱鉱区等についてご紹介をいたします。当社はこれまでもイクシス周辺エリアのポテンシャルの高さに注目し、積極的に鉱区の権益を取得し、探鉱作業を進めてまいりました。

現時点でイクシスLNGプロジェクト周辺に18の探鉱鉱区を保有しており、複数のガス構造を発見、これらのガス構造が少なくとも9の鉱区にわたって広がっているということを確認しております。

中長期的にはこれら周辺のガス構造に対し、イクシスの既存施設を活用し、競争力のある開発生産につなげられるよう、引き続き前向きに検討を進めてまいります。

アバディLNGプロジェクト

次にアバディLNGプロジェクトについてご説明をいたします。本プロジェクトは年間約950万トンのLNG、周辺地域のガス需要向けにパイプラインで日量1億5,000万立方フィートの天然ガス、日量最大約3万5,000バレルのコンデンセートを生産する大規模なプロジェクトであります。

2019年に海底開発計画がインドネシア政府当局により承認されたこと、それから生産分与契約の7年間の期間追加、さらに20年間の期間延長、これらについても政府当局の承認が得られ、マセラ鉱区のPSCの期限は、2055年まで延長されることになりました。

また昨年はインドネシア国営電力会社、国営肥料会社、国営ガス会社との間でインドネシア国内向けへのLNGおよび天然ガスの長期供給に関する覚書をそれぞれ締結いたしました。

現在取組中の作業といたしましては、新型コロナウイルスの感染症対策の影響で遅れが見込まれておりますが、早期のFEED作業開始を目指し、FEED作業の準備を実施しており、引き続き2020年代後半の生産開始を目指し、アバディLNGプロジェクトを推進してまいります。

上流事業のトピックス(生産・開発プロジェクト)

続きまして当社の事業基盤となるアブダビ、カザフスタンならびにアゼルバイジャンにおける事業に関してご説明を申し上げます。

スライドに記載のとおり、一部プロジェクトで生産能力の増強に取り組むとともに、安定的に生産操業を続けております。またアブダビにおいては、これら生産・開発プロジェクトに加え、探鉱プロジェクトも当社は保有をしております。

探鉱鉱区ブロック4でありますが、現在オペレーターとして鉱区の評価作業と掘削の準備作業を実施しておりまして、今年の4月頃に掘削作業の開始を予定しております。

またスライドにはございませんが、その他のプロジェクトといたしまして、ベトナムにおいてはサオバン・ダイグエットガス田で開発作業を進めてまいりましたが、このうちサオバンガス田からのガスの販売を2020年の11月に開始いたしました。

今年1月にはノルウェーにおいてPL1130鉱区およびPL1129鉱区を落札いたしました。ノルウェー海、これは今後も新たな油ガス田発見が期待されている有望エリアの1つであると考えております。

2月には米国にてルシウス油田およびハドリアンノース油田の参加権益を約2.35パーセント追加取得し、約7.75パーセントから約10.11パーセントへと増加することになりました。

国内天然ガス事業及び再生可能エネルギー事業・カーボンリサイクルへの取組み

次に、国内天然ガス需要および再生可能エネルギー・カーボンリサイクルへの取り組みについてご説明をいたします。まず国内の天然ガス事業において、2020年度の販売量実績は約20.7億立方メートルとなりました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響等による需要の減少を少しでも食い止めるべく、さまざまな営業努力をしてまいりましたが、一方で昨年12月以降の低気温および荒天の影響を受けまして、今年の冬のガス需要は例年比で大きく増大をいたしております。引き続き年間供給量25億立方メートルの早期達成を目指し、取り組んでまいります。

次に、再生可能エネルギー・カーボンリサイクルへの取り組みとして、引き続きインドネシアのサルーラ地熱IPP事業において、商業運転を継続してまいりました。秋田県では地熱発電所の建設に向けた環境アセスメントを継続するとともに、2020年に一斉噴気試験を開始いたしました。

また新潟県では、二酸化炭素と水素からメタンを合成するメタネーションの試験設備を設置し、試運転を経て現在各種試験運転を実施するとともに、今後のスケールアップを含めた検討を進めているところであります。昨年5月には秋田県における洋上風力発電事業の実施に向けたコンソーシアムに参画いたしました。

また人工光合成化学プロセス技術研究組合、アープケムと言っておりますが、その一員といたしまして、製造時に二酸化炭素を排出しないソーラー水素製造の技術開発、これを当社は担当しておりまして、イクシスプロジェクトの陸上プラントがある、豪州のダーウィンの実験サイトに、昨年の12月に人工光合成のパネルを設置し、実験運転を開始いたしました。

これは、日射量が多い地域に設置された初めての人工光合成パネルとなり、実用化に向けた重要なステップになると考えております。

2020年12月期 ネット生産量

次に2020年度のネット生産量についてご説明をいたします。2020年度のネット生産量は、日量57.3万バレルとなりました。

前年同一期間比でも微増と、各現場において新型コロナウイルス感染症対策を速やかに導入したことなどで、不測の生産停止、こういったことが生じなかったことに加えまして、イクシスにおいて高稼働率での操業が行われたことなどが影響いたしております。

なお、当社は原油からガスへのシフトを進めており、生産する原油とガスの比率は現在6対4の割合となっております。

生産コスト、埋蔵量の推移

次に生産コスト・生産量・埋蔵量の指標および確認推定埋蔵量の推移についてご説明いたします。1バレル当たりの生産コストは、2020年度は5.2ドルとなりました。2020年12月末時点での確認埋蔵量は前期末に比べて減少しております。

投資・コスト削減および十分な流動性・フリーキャッシュフローの確保

次に投資・コスト削減についてご説明をいたします。2020年度は目標に鋭意取り組んできた結果、当初の目標の開発投資20パーセント超、探鉱投資40パーセント超の削減に対しまして、期初の見通し比で開発投資は37パーセント、探鉱投資は64パーセントと目標を大幅に上回る削減を達成することができました。今後とも投資、操業費、各種管理費等々、あらゆる支出・コスト削減および最適化を継続してまいります。

次に流動性とフリーキャッシュフローの確保についてご説明をいたします。まず当社は現在において潤沢な手元資金を保有しております。またコアバンクからの十分な規模のコミットメントラインも確保しております。

2020年12月末時点の手元の資金残高は約2,000億円となりました。2021年度には約1,850億円程度のフリーキャッシュフローを確保できる見込みであります。足元の油価は一定程度の回復を見せておりますが、今後とも流動性を確保するとともに事業活動から十分なフリーキャッシュフローを創出してまいります。

今後の事業展開~2050ネットゼロカーボン社会に向けて~①

次に当社のネットゼロカーボン社会に向けた事業展開についてご説明をいたします。当社は2021年1月27日にネットゼロカーボン社会に向けた事業展開戦略を公表いたしました。

2050年ネットゼロカーボン社会に向けた経営の基本方針として、当社は今後も増加する我が国および世界のエネルギー需要に応え、長期にわたり引き続きエネルギー開発・安定供給の責任を果たしながら、2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けたエネルギー構造の変革に積極的に取り組んでまいります。

第1に、エネルギーの安定供給に向けて、上流事業を引き続き基盤事業と位置づけ、事業の強靭化とクリーン化を進めることにより、エネルギーの安定供給と気候変動への責任ある対応という2つの社会的責任を果たしてまいります。

また天然ガスシフトを進め、国内および成長市場であるアジアにおけるグローバルガスバリューチェーンの拡大に向けた取り組みを継続・強化いたします。さらにカーボンニュートラルLNGの販売等についても、これを推進してまいります。

今後の事業展開~2050ネットゼロカーボン社会に向けて~②

第2に、ネットゼロカーボン社会に向け目標を設定し、その達成に向けた取り組みを推進いたします。当社は気候変動に対するパリ協定目標の実現に貢献すべく、2050年に自社排出ネットゼロカーボン等を目指す気候変動対応目標を定めました。

そのプロセスといたしまして、2030年時点では排出原単位を30パーセント以上低減いたします。その対象は、当社の事業プロセスからの排出量であるScope1と2であります。販売した石油天然ガスの燃焼による、いわゆるScope3の排出量につきましては、バリューチェーン全体の課題として取り組んでまいります。

目標の達成に向けて5つの事業の柱を強力に推進してまいります。第1に、国内初のCCS実証等を通じて蓄積した当社の技術的強みを発揮し、国内および豪州イクシス等の海外操業地域において、上流事業で発生するCO2を地下に圧入することで、CO2の安全確実な貯留・活用を目指します。

加えて探鉱開発・操業のあらゆる段階において省エネルギーやエネルギー量の効率化を徹底し、天然ガスのシフト、カーボンニュートラルLNGの販売等を推進いたします。具体的には新潟県等におけますCO2EORの実証、それから海外のイクシスLNGプロジェクトでのCCSの検討等、上流事業のCO2低減に向けてCCUSを推進いたします。

第2に、中長期的な水素社会の到来を展望し、水素の製造・供給事業への展開を図ります。新潟県の柏崎市での水素製造・利用一貫実証プロジェクト、それからアブダビにおけるクリーンアンモニア事業等を推進してまいります。

第3に、国内外において、石油天然ガス開発での技術を応用した地熱発電事業や、海外現場での洋上浮体施設の建設・操業で培った経験を活かした、洋上風力事業に対する取り組みを加速し、再生可能エネルギーの強化と重点化を進めてまいります。

第4に、当社事業とのシナジーを活かしまして、メタネーション事業の加速化や、人工光合成等のカーボンリサイクルを推進し、早期事業化を目指すとともに成長が予想される新たな分野の事業にスピード感を持って取り組んでまいります。

第5に、インドネシア等における森林保全によるCO2吸収を目的とした事業を推進いたします。

こうした5つの事業の柱、これへの資金配分は、イメージでありますけれどもイクシス立ち上げ後の実績を踏まえ、油価50ドルから60ドルを前提にいたしますと、今後5年程度の平均的な年間の投資額想定は2,500億円から3,000億円程度と想定されますが、中期的にはそのうち200億円から300億円程度を当社の強みを活かした、今申し上げました5つの分野の開拓に投入していくということを展望しております。

これらの事業により、ネットゼロカーボン社会に向けた変化に積極的に対応し、エネルギートランスフォーメーションのパイオニアとなることを目指します。

当社社名の株式会社INPEXへの変更

また、第15回の定時株主総会での決議が前提となりますが、当社の商号を主に海外で広く浸透している「INPEX」に統一し、グローバルブランドとして国内外で展開することといたしました。2021年の4月1日より当社の社名を「国際石油開発帝石株式会社」から「株式会社INPEX」に改めます。

引き続き当社は新しい社名のもと、国内外に多様なエネルギーをよりクリーンなかたちで安定的に供給することで、エネルギーの安定供給、環境保全、経済発展、社会開発等に貢献し、グループ全体の企業価値向上に努めて、ネットゼロカーボン社会に向けた変化に積極的に対応し、エネルギートランスフォーメーションのイノベーティブなパイオニアを目指します。

INPEXという字には「Innovative Pioneer of Energy Transformation」という意味も込めているところであります。

中期経営計画2018−2022の進捗および今期見通し①

それでは次に、中期経営計画の進捗と今期の見通しについてご説明いたします。これまで事業活動についてご報告をいたしましたが、中期経営計画の3年目にあたる2020年12月期におきましては、イクシスLNGプロジェクトの極めて順調なランプアップや、再生可能エネルギー強化に向けた地熱・洋上風力の取り組み等、中期計画における重要なマイルストーンの達成を着実に積み上げております。

2021年12月期はランプアップ後のイクシスの安定操業の継続、再生可能エネルギーにおけるメタネーションの実施試験の完了等、引き続き重要なマイルストーンの達成に向けて取り組んでまいります。

中期経営計画2018−2022の進捗および今期見通し②

売上でありますけれども、中期経営計画において2022年度12月期として1兆3,000億円程度とお示しをしておりますが、2020年12月期実績は7,710億円、2021年12月期は8,830億円と見込んでおります。

親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、2020年12月実績は油価低迷に伴う減損の影響を主因といたしまして、1,116億円の損失となっておりますが、2021年12月期は1,000億円を見込んでおります。

2022年12月期目標として1,500億円程度とお示しをしておりますけれども、中期想定の油価・為替等の外部環境、これを仮に前提とすれば目標達成可能な水準と考えております。

ネット生産量につきましては、2022年12月目標として日量70万バレルとお示しをしておりますが、2020年12月実績は日量57万3,000バレル、2021年12月期はOPEC減産の継続を前提としたことや一部のメンテナンス等により、日量55万9,000バレルとなる見込みであります。

ROEは2020年12月実績は赤字決算によりマイナス3.9パーセントとなりましたが、2021年12月期は黒字化に伴い改善を見込んでおります。

中期経営計画2018−2022の進捗および今期見通し③

次に成長投資でありますけれども、中期経営計画5年間の累計のガイダンスとして、1兆7,000億円とお示しをしております。2019年3月期実績は4,884億円、2019年12月期の実績は2,432億円、2020年12月期実績は1,808億円となっております。

2021年12月期についても投資の厳選等により、2,550億円となる見込みであり、4年間の成長投資額の累計額は1兆1,674億円となる見込みであります。

加えて当社は、従来より量だけではなく質、あるいは戦略性ということを重視しながら総合的にポートフォリオの最適化を検討しておりまして、相対的に重要性が低下したプロジェクト、早期に現金化することが望ましいと判断されるプロジェクトについて売却を進めることで、十分な流動性およびフリーキャッシュフローの確保を目指したいと考えております。

配当につきましては先ほど説明いたしましたが、2020年度は年間24円、2021年度は年間27円を予定しておりまして、今後とも株主のみなさまの日頃からのご支援に応えるべく、還元を実施してまいります。ありがとうございました。

2020年12月期の前年同一期間との比較について

山田大介氏:財務・経理部門を担当しております山田でございます。それでは2020年度決算の概要についてご説明させていただきます。

まずはじめに、改めまして決算期の変更についてご説明申し上げます。当社は2019年12月期より、当社および連結子会社の決算期を12月に統一いたしました。

2019年12月期は決算期の変更に伴い9ヶ月決算となりましたが、今回2020年12月期からは1月から12月までの間の1年決算となっております。本説明資料では2020年12月期の比較対象として表左側の参考値、前年同一期間でございます2019年1月から12月の間の期間を参照しております。

2020年12月期 決算ハイライト

当期決算のハイライトでございます。当期決算においてはBrent平均油価が43.2ドルと、前年同一期間比32.7パーセント下落したことを受け、売上高は4,001億円、34.2パーセント減収の7,710億円。

営業利益は3,107億円、55.6パーセント減益の2,484億円。経常利益は3,273億円、56パーセント減益の2,573億円となりました。

また減損損失を1,899億円計上したことにより、親会社株主に帰属する純損益は前年同一期間の1,673億円の利益に対し、当期は1,116億円の損失となりました。

コロナ禍に伴う油価の下落により、2008年の統合以来、初めての赤字決算を余儀なくされました。大変厳しい決算でした。なおイクシスプロジェクトの利益貢献は約400億円と見積もっております。

原油売上高

続きまして売上高につき、原油・天然ガス別に概要をご説明申し上げます。原油販売量はほぼ横ばいの4.1パーセント、500万バレル減少の1億1,700万バレルに。海外原油販売単価はBrent油価の下落率を上回る38.3パーセント、25ドル下落の40ドルとなりました。

結果としての原油売上高は前年同一期間比で3,660億円、42パーセント減収の5,055億円となりました。油価の下落の直撃を受けたことが減収の主要因であります。

天然ガス売上高(LPG除く)

天然ガス販売量は、イクシス増産効果により11.3パーセント、473億キュービックフィート増加の4,674億キュービックフィートに。海外ガス販売単価は16.6パーセント、0.72ドル下落の3.61ドルに。国内ガス販売単価は14.1パーセント、7.69円下落の46.93円になりました。いずれも油価下落影響を受けたものでございます。

結果としての天然ガス売上高は前年同一期間比で概ね横ばい、297億円、10.7パーセント減収の2,478億円となりました。イクシス減産に伴う販売量増加と、油価下落に伴うガス価格下落影響が相殺された格好となっている決算でございます。

損益計算書

損益計算書のスライドです。親会社株主に帰属する純損益の増減につきましては、次スライド以降のチャートにてご説明いたしますので、本スライドは後ほどにご参照いただければと思います。

2020年12月期 ベース純利益 増減要因分析

前年同一期間の連結純利益との増減要因分析について、一過性要因を除くベース純利益と一過性要因とに分けてご説明申し上げます。当期純損失である1,116億円の損失は、一過性損益を除くベース純利益546億円と一過性損失1,663億円のマイナスに分解できます。

まずはベース損益546億円に対し、前年度ベース損益1,495億円との間で増減分析を行います。油価・ガス価下落に伴う売上高減収幅は、約4,000億円となりました。このうち販売単価下落が占める割合は9割強の3,600億円であり、甚大な影響となりました。

売上原価は、原油はアブダビ原油売上の減少に伴い、販売ロイヤリティは売上高連動で減少いたしましたが、一方でガスはイクシス増産に伴い、上流事業の減価償却費が増加したことから、結果として売上原価の減少は712億円に留まりました。

一過性要因を除く探鉱費は前年度実績236億円に対し、油価低迷を受け全社ベースで探鉱投資の圧縮に努めた結果、20年12月期探鉱費は70億円強と、3分の1程度まで縮減し、ネットで160億円強の増益要因となりました。

また販管費に関しても経費節減を徹底いたしましたことから、35億円の増益要因となりました。ちなみにコロナ影響により、出張費・交際費は約9億円程度節減いたしたかたちになっております。

法人税は収益減に伴い2,173億円減少いたしましたが、以上の増益要因をネットした20年12月期のベース純利益は前年同一期間比で948億円減益の546億円に留まりました。

2020年12月期一過性損益の影響

続いて、一過性損益の影響についてご報告申し上げます。20年12月期のベース純利益は546億円です。当期は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるエネルギー需要の落ち込み等による原油価格の大幅な下落に伴い、当社グループ資産の再評価を行った結果、減損損失1,899億円を計上いたしました。

内訳はプレリュードFLNGプロジェクトで1,290億円、イーグルフォードで332億円、ルシウス油田で186億円、バユ・ウンダンで89億円でございます。

ここから減損損失に係る税効果399億円の利益、イクシスリファイナンスに伴う一過性利益138億円、有価証券の評価損、プロジェクト撤退関連費用、その他を加減いたしまして、当期の一過性利益は合計で1,663億円のマイナスとなりました。

ベース純利益546億円から一過性損失1,663億円を控除した20年12月期の親会社株主に帰属する純損益は、1,116億円の損失という結果となったわけでございます。

貸借対照表

次に連結貸借対照表についてご説明申し上げます。総資産は主に固定資産の減損損失の計上により、前期末比2,154億円減少の4兆6,345億円となりました。なお、オフバランスになっているイクシス下流事業会社の総資産は3兆6,014億円です。負債は主に借入金の増加により、流動・固定合わせて前期末比803億円増加の1兆6,331億円となりました。

純資産は主に損失計上に伴う株主資本の減少や、その他包括利益累計額の減少により前期末比2,958億円減少の3兆13億円となりました。なお、イクシス下流事業会社を加えた当社ネット借入金は約2.1兆円でございます。

2020年12月期キャッシュフロー実績

続いてイクシス下流会社を含むキャッシュフローについてご説明申し上げます。探鉱投資前の営業活動に係るキャッシュフローは、前期の大幅な油価下落を受けたものの、イクシスの順調な生産等もあり、3,492億円を確保いたしました。

投資活動によるキャッシュフローは油価下落に伴うコスト削減最適化の結果、1,672億円の支出となりました。これにより20年12月期は1,820億円のキャッシュフローを確保いたしました。財務活動によるキャッシュフローは借入の返済による支出等により、1,954億円の支出となりました。

2021年12月期 連結業績予想

続きまして21年12月期連結業績予想についてご説明申し上げます。まずは油価・為替の前提条件ですが、油価は足元60ドル前後で推移しており回復基調にありますが、1月の平均油価は約55ドルであり、油価先物市場は期近高・期先安になっています。

またコロナ影響など、さまざまな要因によって引き続き不安定な相場が続くと考えており、油価は53ドルとあえて保守的な前提といたしました。為替レートは1米ドル当たり103円といたしました。

前期実績との比較で申し上げますと、油価は前期比9ドル79セント、22.7パーセントの油価高。為替は期中平均ベースで3円77銭、3.5パーセントの円高を想定しております。

この前提による通期の業績予想はご覧のスライドのとおり、連結売上高は前期実績7,710億円から1,120億円、14.5パーセント増収の8,830億円に。連結経常利益は前期実績2,573億円から957億円、37.2パーセントの増益の3,530億円を見込んでおります。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上した減損損失の剥落や原油価の前提を前年度実績比で10ドル程度切り上げたことを主因として、前期実績の1,116億円の純損失から2,116億円増益の1,000億円の当期純利益を見込んでおります。

なお、イクシスプロジェクトの利益貢献額は通期で650億円程度と試算しており、前期実績の400億円から250億円程度の増益を見込んでおります。

20年度12月期の期末配当につきましては、社長の上田からも説明がありましたように1株12円にいたしたいと存じます。中間配当金12円と合わせ、年間配当金は1株当たり24円となります。21年12月期の配当予想につきましては、前期実績の24円から3円増配の年間27円としております。

2021年12月期 連結業績予想 増減要因分析

前期実績と今回の業績予想の差異につきまして、親会社に帰属する純利益の影響額をもとにチャートでまとめてみました。まずは前期に計上した減損損失等の一過性要因の損失1,663億円を除いた利益をベース純利益と定義し、前期のベース純利益546億円から今期の業績予想1,000億円に至る増益についてご説明申し上げます。

原油価格前提を前期実績より10ドル程度引き上げたことに伴う増益影響が426億円、為替レートを円高方向に修正したことに伴う減益影響がマイナス75億円、探鉱費は前期実績比ほぼ横ばいで2億円の減益影響。

個別プロジェクト要因につきましては、個別プロジェクトごとに増益減益のデコボコはあるんですが、合わせますとほぼ横ばいの5億円程度の減益影響。その他、今期に計上が見込まれる一過性損益による増益影響が110億円でございます。

結果、通期の親会社に帰属する純損益は前期実績1,116億円の純損失から2,116億円増益の1,000億円の当期純利益と見込んでおります。

なお、原油価格における増益影響426億円につきましては、Brentの前期実績と今期原油価格前提との値差……およそ10ドルですね、および今期の油価感応度により計算される油価影響からかい離しておりますのは、一部のガス販売において認められる遅効性を考慮したことによるものでございます。

2021年12月期 販売量・投資額(予想)

ただいまご説明いたしました業績予想の前提となる販売計画・投資計画につきましてご説明させていただきます。21年12月期の原油販売量は前期実績比で555万バレル、4.7パーセント減少の1億1,100万バレルに。また天然ガス販売量は前期実績比で139億キュービックフィート、3パーセント増加の4,814億キュービックフィートを見込んでおります。

原油販売量につきましては、一部プロジェクトにおける販売減により減少を見込んでおります。天然ガス販売量につきましては、プレリュードの生産再開、コンソンのランプアップ等により増加を見込んでおります。

次に投資計画ですが、開発投資・探鉱投資計画は投資効果を見極め、十分な議論を尽くして積み上げた結果、開発投資額は38.2パーセント増加の2,310億円、探鉱投資額は49.5パーセント増加の160億円となる見込みです。

前期実績比で増額予算となっておりますが、先ほど12ページでお示ししていましたように、今次予算においては探鉱前営業キャッシュフローは約4,400億円を見込んでおり、増額予算となる投資キャッシュフロー約2,550億円を織り込んでも、なおフリーキャッシュフローは約1,850億円と前期並みのキャッシュフローの創出が可能であると見ています。

なお、先日対外発表いたしました今後の事業展開を踏まえ、上流事業のCO2削減、水素アンモニア事業の展開、森林保全、再生可能エネルギーの強化、カーボンリサイクル推進との予算を織り込んでおります。

探鉱投資は中東地域における作業増を主因として前期実績比53億円、49.5パーセント増加の160億円を見込んでおります。

原油価格・為替レートのセンシティビティ

当年度期初の時点における、財務状況をもとに算出した原油価格・為替レートが変動した場合の2021年12月期、当期純利益予想に対する感応度の参考値はご覧のとおりでございます。油価が1バレル当たり1ドル上昇した場合の影響額は、期初時点でプラス66億円と試算しております。

なお、一部のガス販売に適用される油価につきましては遅効性がございますため、これを考慮いたしますと第2四半期期初時点ではプラス46億円、第3四半期期初時点にはプラス24億円、第4四半期期初時点にはプラス10億円と感応度が変化する見込みでございます。「注2」に油価センシティビティの四半期内訳を記載しておりますので、ご参照ください。

為替レートにつきましては、1ドルあたり1円円安に変動した場合の影響額は、プラス20億円と試算しております。外貨建て資産と外貨建て負債から発生する為替評価損益に係るセンシティビティは、ほぼ中立化しております。以上で私からのご報告を終了させていただきます。

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