祝マイクロソフト株最高値更新
2016年10月21日にマイクロソフト(MSFT)の株価が60.45ドルを付け、最高値を更新しました。これまでの最高値は1999年12月に付けた59.97ドルと言われています。喜ばしい出来事です。
前回最高値はIT・ドットコムバブル最盛期の1999年
覚えておられる方も多いと思いますが、マイクロソフト株の前回の最高値は1990年代後半から2000年までのいわゆるITバブルの間に付けています。Windows95を搭載したパソコンが破竹の勢いで全世界に普及していき、同社はインテルとともに”ウィンテル”と呼ばれていました。
さらに、当時はちょうどインターネットの普及が加速した時期にあたります。シスコシステムズ、アマゾン、eBayといった銘柄が、壮大な夢とともに華やかに取引されていました。
日本もこの相場と無縁ではありませんでした。ソフトバンク、ヤフー、楽天、ライブドア、光通信、USENなど、新しい銘柄が現れスポットライトを浴びました。特に、筆者が思い出すのはソフトバンクと光通信の急騰で、個人だけでなく運用競争を繰り広げる機関投資家もこぞって買っていたことです。
買いが買いを呼び、さらに株価が上がるという循環が生まれ、いわゆるチキンレースのような状況になりました。当時ソフトバンクに集中投資をしてパフォーマンスを上げていたファンドマネージャーが、非常に自信満々だったことを今でも鮮明に覚えています。
マイクロソフトの株価の軌跡
さて、ここでマイクロソフト株の推移をおさらいしておきましょう。
1999年12月に60ドル目前まで行った株価は、その後ITバブルの崩壊とともに下落します。2000年末には22ドルを下回るまで下げました。その後は8年の間いったりきたりの推移となりましたが、リーマンショック後の2009年に15ドル台前半まで下落してしまいます。しかし、それ以降はおおむね順調に株価は回復し、右肩上がりで推移してきました。
以上を一言で言えば、ITバブル崩壊後株価がしっかりした上昇基調に入るのには10年かかり、最高値更新まで17年弱かかったということです。
マイクロソフトの業績の軌跡
では業績はどうだったでしょうか。
当期純利益をさかのぼると、1990年代の急成長を受けて、2000年6月期にいったん94億ドルを上げますが、翌年度は▲22%の大幅減益になります。しかし、2003年6月期には早くも100億ドルの最高益を上げて復活しています。ちなみに2016年6月期の純利益は168億ドルで、2000年6月期に比べて+78%高い数値になります。
時間を敵にせず、味方にすること
業績は早く回復したのに、株価が最高値を更新するのにおよそ17年かかってしまった――これがマイクロソフト株の示す教訓です。
PCインターネットからモバイルインターネットに世の中が移行する中で、うまく立ち回りきれなかったのがこれだけ時間のかかった背景と考えられます。しかし、1999年当時の相場の熱気の中では、最高値更新にこれほど時を要すると予見するのは難しかったと思います。
今、冷静に振り返れば、当時の株価で見た投資指標は決して安くありません。しかし、バラ色のストーリーがこれを覆い隠していました。「バラにはトゲもある」と冷静になれるかが大切です。それができないと、時間を敵に回してしまうことになります。
最後になりますが、このITバブル期の株価を現在優に超えている銘柄はアマゾンやアップルです。一方、インテルも、シスコも、最高値には程遠い株価にあります。マイクロソフトはこうした銘柄の中では「勝ち組」と呼んで差支えないでしょう。
LIMO編集部