そうした場合、「サンクコストのことは忘れて、今後開発を続けた場合と中止した場合を比べてみましょう。どうせ売れないなら、残り3割の開発費を余計に損することになりかねないので、開発はやめましょう」というのが正しいのでしょう。
美術館を建てたけれども客がほとんど来なかった場合、維持費を考えれば閉館する方がコストが安くすむのでしょうが、「こんな美術館を建てた自分が馬鹿だった」と考えたくないので、いつまでも閉館せずにコストをかけ続けている、といった場合もあるでしょう。
この場合も同様に、「このまま開館しつづけると、維持費がかさむので、サンクコストのことは忘れて閉館しましょう」と提案するのが正しいのでしょう。
もっとも、「もしかしたら新薬が売れるかもしれないし、入館者が増えるかもしれないのだから、続けよう」という反対意見が出てきそうですね。
プロジェクトを発案したのが社内の偉い人だった場合、「やめましょう」とは言い出せないので、続ける理由を考える人が大勢いるでしょうから。
まあ、そうした場合に正論を唱えるのが良いのか社内政治を考慮するのが良いのかについては、本稿は立ち入らないことにしておきます(笑)。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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塚崎 公義