2019年、金融庁の報告書で「老後の生活費として、公的年金以外に2000万円が必要である」といった内容が示されました。いわゆる「老後資金2000万円問題」です。

これをきっかけに、年金生活に入る前までの貯蓄目標額として「2000万円」という金額を設定された方もいるかもしれませんね。

多くの人にとって、定年退職前の正念場ともいえる50代。リタイヤ後の生活も視野に入れた貯蓄計画の見直しが必要となる時期でもあります。

今回は、老後生活に直結する50代・60代の貯蓄額をながめつつ、「2000万円」にどの程度近づいているのかをみていきましょう。

50・60代は、どのくらいお金を準備できている?

さいしょに、「50代・60代」の貯蓄の状況を、他の世代と比べてみましょう。

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、二人以上世帯(全世代)の貯蓄現在高は1,755万円(うち通貨性および定期性預貯金は1,138万円)、負債現在高は570万円と示されています。

では、世帯主の年齢階級別にみた、貯蓄額と負債額をながめていきましょう。

貯蓄現在高

  • 29歳未満:354万円
  • 30~39歳:730万円
  • 40~49歳:1,076万円
  • 50~59歳:1,704万円

(59歳未満:1,201万円)

  • 60~69歳:2,330万円
  • 70歳以上:2,253万円

(60歳以上:2,285万円)

通貨性および定期性預貯金

  • 29歳未満:234万円
  • 30~39歳:513万円
  • 40~49歳:681万円
  • 50~59歳:1,016万円

(59歳未満:749万円)

  • 60~69歳:1,464万円
  • 70歳以上:1,542万円

(60歳以上:1,510万円)

負債現在高

[ ]内は土地・家屋のための負債(住宅ローン)

  • 29歳未満:877万円[815万円]
  • 30~39歳:1,395万円[1,337万円]
  • 40~49歳:1,124万円[1,052万円]
  • 50~59歳:652万円[578万円]

(59歳未満:1013万円[944万円])

  • 60~69歳:250万円[190万円]
  • 70歳以上:70万円[51万円]

(60歳以上:145万円[109万円])

貯蓄現在高が2000万円の大台をこえるのは、60代ということがわかります。また、貯蓄額・負債額ともに40代と50代の間で大きく差が開いている点には注目すべき点です。

40代以下は、教育費と住宅ローン、ダブルの大きな出費を抱える人が多い世代です。そして、50代でようやく預貯金が負債額を上回るという様子がうかがえます。

50代で貯蓄が増える背景

定年前の50代で貯蓄が一気に増える背景には、「出費や負債がひと段落するフェーズである」という点に加えて、「給与のピークを迎える人が多い」という傾向があることが考えられるでしょう。

国税庁による「民間給与実態統計調査(令和元年)」(2019年)を見ると、電気・ガス・熱供給・水道業などを除くほとんどの業界において、給与のピークを迎えるのは50代という結果になっているのです。

引退までに「2000万円」準備できそう?

支出が落ち着き、収入のピークを迎える世帯が多い50代。となると、「老後の備えは50代になってからでも間に合うのでは?」と感じた方もいるかもしれませんね。

また、退職金、相続、贈与といった形でのまとまった収入が発生するケースもありますが、その状況は人それぞれとなります。

長期化するコロナ禍での不安もあいまって、少しでも確実にお金を「貯める」「増やす」ことを考えていらっしゃる方も多いでしょう。

50代から資産運用をはじめるとなる、健康上の理由などにより、保険に加入しにくくなったり、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に加入できるのは原則60歳未満(※2021年1月現在)という制限があったり…と、何かと選択肢が減ることも考えられます。

収入や家族構成はひとそれぞれ。30代、40代の若い世代のみなさんの中には、教育費や住宅ローンの返済などで、貯蓄や投資にまで手が回らないというご家庭も多いでしょう。

とはいえ、安心できる老後に向けたマネープランは、若いうちから意識しておかれることを強くおすすめします。

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

参考資料

LIMO編集部