2020年11月10日に行われた、日揮ホールディングス株式会社2021年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:日揮ホールディングス株式会社 代表取締役会長CEO 佐藤雅之 氏
日揮ホールディングス株式会社 代表取締役社長COO 石塚忠 氏
日揮ホールディングス株式会社 財務部長 田口信一 氏

1.2020年度第2四半期ハイライト

田口信一氏:グループ財務部の田口です。第2四半期の決算概要を説明させていただきます。最初に第2四半期のハイライトでございます。通期業績予想に変更はありません。発表値に向けて着実に進捗しております。第2四半期は国内外の案件で採算の改善があり、利益率は上振れしております。

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、遂行中案件では感染防止対策を取りながら工事を進めており、追加的な採算変動は生じておりません。財政状態につきましては、経済情勢の不透明感が一層強まる中で今後の事業環境の変化に対応できるよう、強固な財務基盤を維持しております。

受注に関しては先月発表したとおり、イラク製油所近代化プロジェクトの契約調印が行われ、受注高を計上しております。

2.連結損益計算書及び連結包括利益計算書

連結損益計算書でございます。全般に期初の見通しに沿って着実に進んでいる状況です。売上高は前年同期比189億円減の1,994億円、売上総利益は35億円増の215億円でした。粗利益率は10.8パーセントと2.5ポイントの改善になりました。

総合エンジニアリングセグメントで赤字案件の終息などによりまして、収益性が改善しております。特にこの第2四半期は国内外の案件での採算改善があったことなどにより、通期予想を上回ることになりました。営業利益は43億円増の115億円、経常利益は15億円増の119億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は5億円減の39億円です。

3.セグメント情報

セグメント情報です。総合エンジニアリングは売上高が前年同期比8.1パーセント減収の1,784億円となりましたが、セグメント利益は91億円に増加しております。LNGカナダの本格的な売上貢献に加え、国内の複数の案件で順調な進捗により工事終盤を迎えたことなどで採算が改善しており、前年同期比で増益となっております。

主な売上計上案件は、海外ではLNGカナダ、アルジェリアのガス昇圧設備、国内の化学案件などです。新型コロナウイルス感染拡大による一部案件での工期延長に伴う追加コストについては、今回特段追加はありませんでした。機能材製造は、売上高は前年同期比で8パーセント減収の201億円、セグメント利益が12.8パーセント減少の27億円です。

新型コロナウイルス影響をはじめとする経済全体の活動停滞から触媒、ファインケミカル製品ともに需要が低下しており、減収減益となりました。通期予想に対する売上高の進捗は総合エンジニアリングが41パーセント、機能材製造が48パーセントでした。

4.連結貸借対照表

連結貸借対照表です。総資産が前期末から横ばいの6,642億円となりました。流動資産は103億円減少しております。終了案件のジョイントベンチャーからの配当金入金など、資金回収による完成工事未収入金の減少が主なものです。負債・純資産サイドでは流動負債が388億円減少しております。

工事終盤の案件の進捗に伴う工事未払金及び未成工事受入金の減少によるものです。固定負債の増加196億円は、社債200億円の発行によるものです。10月の前回債償還資金に充当しております。純資産の増加121億円は、為替換算調整勘定の増加などによるものです。自己資本比率は60パーセントでした。

5.連結キャッシュ・フロー計算書

連結キャッシュ・フロー計算書です。現金及び現金同等物の残高は2,579億円と前期末からほぼ横ばいでした。営業キャッシュ・フローが175億円のマイナスになっております。工事終盤案件で工事未払金の支払いが進んだことなどによるものです。財務キャッシュ・フローは社債発行によりプラスになっております。

6.受注の状況①

受注の状況です。受注高はイラクの製油所近代化プロジェクトの受注により海外が4,688億円、国内が293億円、合わせて合計4,981億円となりました。国内外の大型案件の下期受注に期待しており、通期予想は6,700億円を変更しておりません。

6.受注の状況②

受注残高です。2020年9月末の受注残高は1兆2,642億円となりました。分野別ではLNG関係が44パーセントと半分以下になり、石油精製が37パーセントとなりました。地域別では北米他が39パーセント、中東が37パーセントとこちらも分散するかたちになりました。主な受注残高はLNGカナダとイラクの製油所近代化案件が1,000億円を超えるものとなっております。

7.業績見通し

最後に通期業績見通しですが、期初の発表予想から変更はございません。この予想は新型コロナウイルス感染拡大の影響が今後著しく悪化せず、当社グループの事業環境が今年度末に向けて徐々に回復するという前提で算出しております。

総合エンジニアリングでは今四半期末の売上進捗が40パーセント台に留まりましたが、下期完工案件や国内案件での年度末に向けての伸びが期待できます。機能材製造は触媒関連の需要減による影響を受けておりますが、売上進捗は50パーセント近くを確保しており、通期予想の達成に向けて着実に進んでいると考えております。

今回、予想レートを1米ドル107円から105円に変更しております。為替レート変動による影響は参考値ですが、米ドル1円あたり売上高で25億円、粗利益で2億円、経常利益段階で4億円と見ております。以上で決算概要の説明を終わります。

現在のマーケット環境と策定中の長期ビジョン「2040年ビジョン」の方向性

佐藤雅之氏:みなさんこんにちは。会長の佐藤でございます。本日は私から現在のマーケット環境と策定中の長期ビジョン「2040年ビジョン」の方向性についてお話させていただきます。まず日揮グループの経営環境に対する見方ですが、基本的に5月にお話しした状況と大きく変わっておりません。

COVID-19の収束時期が見通せない状況が続いており、エネルギー需要減少の影響から原油価格はご存知のとおり1バレル40ドルを挟んだ展開で推移しており、世界経済全体の回復の兆しはまだ見えてこないというところが正直なところでございます。

次に総合エンジニアリング事業の状況ですが、国内はライフサイエンス・再生可能エネルギー関係の設備投資が実行され、着実に受注が期待できるものの、海外はオイル&ガス、インフラとも数少ない実現可能性の高い案件の受注に向けて全力を上げているという状況です。機能材製造事業においてもCOVID-19や米中貿易摩擦の影響が懸念される状況となっております。

こうした不透明感が強いマーケット環境の中で、去る10月に受注金額が4,000億円を超えるイラク、バスラ製油所近代化プロジェクトを正式に受注できたことは、今期の受注目標達成に大きく前進したことのみならず、売上高の約2年分となる1兆円を超える受注残高を確保できたという点でも大変意義が大きいと考えております。

また後ほど社長の石塚からもご紹介させていただきますが、もちろんイラク復興という側面においても社会的意義が非常に高い仕事だということでございます。足元の受注高は約5,000億円となっており、残り半年、目標の6,700億円の達成に向けて全力を上げてまいります。

さて、ご案内のとおり現在当社グループは2021年度から開始予定の新中期経営計画とその前提となる長期ビジョン「2040年ビジョン」策定に取り組んでおります。当社グループが今後も持続的かつ安定的な成長を実現していくためには低炭素化・脱炭素化がさらに加速していく中で、海外オイル&ガス分野だけに依存しない収益構造の構築が必要不可欠だと考えております。

昨年10月に持株会社体制に移行したのは、海外オイル&ガス分野だけに依存することなく、複数の事業ドメインで収益を上げる企業グループを実現していくための枠組みをつくることが目的であり、この方向性に変更はございません。

長期ビジョン「2040年ビジョン」はこの枠組みをベースにして既存事業の変革と新規事業の探索の2つで構成する予定であり、日揮グループの今後の具体的な事業ポートフォリオ構築の方向性を示すものになると考えております。そして新中期経営計画はこの長期ビジョンを実現していく中でのファーストステップという位置付けです。

長期ビジョンの方向性としましては、世界観として地球環境を適切に保全しながら2050年が世界人口が100億人に到達していく中で、エネルギー・食糧問題、インフラ整備、さらに有限である資源をいかに活用していくかというさまざまな社会課題に対し、日揮グループはなにができるのかというところにフォーカスしております。

新興国を中心にエネルギー需要は拡大していく一方で、低炭素化・脱炭素化の流れはもはや不可逆的です。さらに資源は大量消費から資源循環や省資源化に向かっています。先進国のみならず、新興国も豊かな生活を送るためにはインフラの拡充も必要不可欠です。

こうした中で、我々の事業構成も短期的・中期的にはLNGなどのオイル&ガス分野などの既存事業を主体にしつつも、もちろんCCS・CCUS技術などとの組み合わせが必要ですが、海外を促す分野以外の新たな事業分野の立ち上げを迅速に進めていかなければならないと考えております。

新規事業の領域につきましては、SDGsを羅針盤に解決が求められている社会課題に我々の身を寄せ、低炭素・脱炭素エンジニアリング、新エネルギー、資源循環、ヘルスケア・ライフサイエンス、インフラ産業革新、低炭素・環境対応高機能材の6分野にわたり、現在各分野における具体的な事業構築に向けた検討を行っております。

新事業領域のうち、4分野を占める環境エネルギー分野は当社グループの将来にとって大きな鍵となる分野と考えております。既存事業の変革及び新事業領域の探索において、すでに取り組んでいる具体的な活動内容については後ほど社長の石塚からその一部を紹介させていただきます。

日揮グループは低炭素化・脱炭素化をはじめとする時代の大きな変化をチャンスとして捉え、資源・環境・健康・社会といった、これまで以上に幅広い領域の社会課題の解決を通じて持続的に成長していく企業グループを目指していきたいと考えております。詳細につきましては来年5月頃にあらためて説明させていただきます。私からの説明は以上です、ありがとうございました。

1.総合エンジニアリング事業の受注状況

石塚忠氏:みなさまこんにちは。石塚です。私からは事業概況についてご説明いたします。3ページをご覧ください。総合エンジニアリング事業の受注状況ですが、すでに田口・佐藤会長のほうから話が出ましたが、6,700億円のターゲットに対して現時点で約5,000億円の受注を確保できました。後ほどお話ししますが、受注目標の6,700億円の達成に向けて有望案件もありますので努力していきたいと思います。

2.海外分野

4ページをご覧ください。海外分野の受注ですが、オイル&ガスとインフラストラクチャーの2つに分けて説明させていただきます。オイル&ガス分野の上半期の受注実績は4,700億円です。主な受注案件はサウジアラビアの子会社が受注しましたガス処理プラント、先ほどから話が出ておりますイラク向けバスラ製油所近代化プロジェクトです。

インフラストラクチャーのほうは1,400億円のターゲットに対して14億円の現時点で受注ということで多少残念な結果なのですが、複数の案件でコロナの影響があり、翌年へずれ込みとなり、残念ながら今年度の受注目標の達成は厳しい状況になっています。下半期は進展が期待されるEPC案件に加えて、将来に向けた種まきとして来年度以降に具体化する案件の受注に注力してまいります。

3.バスラ製油所近代化プロジェクトを正式受注

5ページです。受注の話が出ましたバスラ製油所についてご紹介させていただきます。本プロジェクトはイラク復興と経済発展に貢献する非常に意義の大きいプロジェクトです。イラクはご存知のとおり世界有数の産油国であるにも関わらず、現在操業中の製油所は生産能力が低下しており、石油製品を輸入せざるを得ない状況になっています。

このため年間約45億ドルが国外に流出しています。本プロジェクトが稼働すれば国外に流出している外貨を止めることができ、その資金を国内復興に充てることが可能となります。さらに本プロジェクトの遂行に際しては、建設期間中には7,000人のイラク人技能労働者、そして2,000人以上の雇用創出効果が見込まれております。

また本プロジェクトの特徴として、イラクでの現地工事を最小化すべく可能な限り中小型モジュールを最大限活用する予定です。

4.LNGカナダの進捗

6ページをご覧ください。これは遂行中のプロジェクトの話題ですが、当社が扱っています最大のプロジェクト、LNGカナダの状況でございます。努力によりまして、スケジュール的にはコロナ前の工程にリカバリーいたしました。また右側の写真は少し見えにくいのですが、ドイツで製作していました主要機器が無事出荷されました。

5.国内分野

次のページをご覧ください。国内分野です。国内分野の受注はターゲット1,300億円に対して上半期で290億円となりました。下半期に複数のバイオマス発電のほか太陽光発電、LNG発電などの受注が期待できます。

もうすでに受注が先週あたりから決まりかけてるものもありまして、受注目標1,300億円の達成に留まらず、さらなる上積みもできるのではないかと考えております。

総合エンジニアリング事業の今年度の受注のまとめになりますが、バスラ製油所近代化プロジェクトの受注、国内の今後の案件により目標6,700億円に対して6,000億円強までの手応えをすでに持っております。年度末に向けてさらなる上積み、積み増しを図り目標達成に向けて努力してまいります。

6.機能材製造事業の状況

機能材製造事業の状況、8ページです。上半期の売上高、セグメントの利益は田口からもご説明したとおりです。COVID-19や米中貿易摩擦の影響が懸念されますが、半導体分野では設備投資再開の兆しが見え始めています。厳しい環境下ではありますが、国内外で営業活動を強化し業績目標の達成を目指します。

7.DXを活用したプロジェクト遂行の競争力向上

9ページをお開きください。佐藤から説明いたしました、既存事業の変革と新規事業の探索の話題です。まず既存事業の変革の話題ですが、当社はデジタル・ITを用いたプロジェクトの遂行の生産性を高めるということでは、以前から先鋭的に取り組んでまいりました。

プロジェクト遂行の生産性を高めることはEPCを通しての永遠の課題ですが、当社は各フェーズの作業を細分化し、建設工事と関連付けて管理することで効率性の向上を図るAWP(Advanced Work Packaging)の実装をしてまいりました。

今回資本参加した英国MODS社の持つバーチャルマネジメントは画像処理が中心ですが、これをAWPと組み合わせることにより効果を飛躍的に高めることができます。受注いたしましたイラク、バスラ製油所近代化プロジェクトへも適用する予定です。

今後も設計業務・調達業務のデジタル化をさらに推進し、EPCを通してデジタルでシームレスで高生産性を持つプロジェクト運営を目指します。

8.環境技術のビジネス化を推進

10ページです。これは新規事業領域の探索の話題でございます。代表的な2つの取り組みを少しご紹介いたします。1番目が廃プラスチックのガス化ケミカルリサイクルでございます。世界的な課題になっています海洋汚染を引き起こす廃プラスチックの問題の解決に貢献する技術です。

10月に荏原環境プラント、宇部興産、昭和電工と廃プラスチックからアンモニア、オレフィンの原料となる合成ガスを生産するプロセスであるEUPの再実施許諾契約を締結しました。今後は本プロセスを活用し、世界中の顧客に対して廃プラスチックのガス化設備などの提案に取り組みます。

2つ目は水素エネルギーの話です。当社は水素キャリアとしてアンモニアにフォーカスをしてまいりました。10月27日には燃料アンモニア導入官民協議会が開かれ、経産省をはじめ政府関係者、それから民間から10社が参加して第1回目の会議が開かれました。当社もその10社の中の1社に選ばれております。

エネルギーキャリアとしてアンモニアはすでにサプライチェーンが確立されているだけでなく、燃焼時にCO2を排出しないため、直接燃料として活用することが可能です。再生可能エネルギー由来の水素から製造されるクリーンアンモニア、もしくは化石燃料からアンモニアを製造し、排出されるCO2をCCSでオフセットするブルーアンモニアはCO2フリーのアンモニアとして環境への貢献が期待されています。

当社グループはアンモニア合成において新規触媒及び新プロセスの開発に取り組んでおり、国内外で複数のアンモニア製造プラントの案件のFEEDに関わる引き合いをいただいております。私の説明は以上です。ありがとうございました。

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