台湾FPD(Flat Panel Display)メーカー大手4社(AUO、イノラックス、ハンスター、ジャイアントプラス)の2020年12月業績が出揃い、年間業績の暫定値が明らかになった。年間売上高は4社合計で前年比4%増の5676億台湾ドルとなり、17年以来3年ぶりに増加した。新型コロナ禍で上期は収益確保に苦戦したが、下期は液晶パネル価格の上昇で業績が大きく回復した。
液晶パネルの価格上昇が寄与
TFT液晶パネルの価格は、20年下期に上昇が続いた。電子デバイス産業新聞の調べによると、20年の値上がり率(円ベース)は32インチが96%、55インチが64%、65インチが33%となり、いずれも過去に例を見ない急騰を記録した。
引き続きテレビやノートPC、タブレット端末といったIT製品の巣ごもり需要が堅調な一方、韓国FPDメーカーが21年内に大型液晶パネルの韓国国内での生産能力を削減していく方針(現在は生産継続中)であるため、21年も価格は大きく下がらないとの見立てが大勢を占めている。
AUOは大型の出荷拡大
AUO(友達光電)の20年業績は、売上高が前年比0.8%増の2710億台湾ドル、出荷台数が大型パネルは同11%増の1億2019万台、中小型パネルが同10%減の1億1748万台となった。
価格の上昇幅が大きかった大型パネルの生産を増やしたことで、20年10~12月期の売上高は17年以来3年ぶりに800億台湾ドルを超え、前年同期比で30%も伸びた。一方で、産業用PCやAI、エッジIoT事業を手がける台湾のアドリンクテクノロジーを傘下に入れ、AIoTソリューション事業の強化を並行して進めている。
イノラックスは7%増収
イノラックス(群創光電)の20年業績は、売上高が前年比7%増の2699億台湾ドル、出荷台数が大型は同9%増の1億3371万台、中小型が同14%増の2億9171万台となった。AUOを上回る伸びを記録したが、売上高はわずかにAUOを下回った。
20年10~12月期の売上高は前年同期比19%増の781億台湾ドルだった。今後の事業方針として、パブリックディスプレーや電子黒板など新規用途を開拓し、ミニLEDやセンサー、パネルレベルの半導体パッケージといった新製品の開発を推進する。また、AUOと同じく、AIサービスを付加したスマートマニュファクチャリングを推進していく考えだ。
ハンスターは2割増収
ハンスターディスプレーの20年業績は、売上高が前年比20%増の196億台湾ドル、出荷台数が大型は同41%増の237万台、中小型が同14%増の4億4625万台となった。20年10~12月期の売上高は前年同期比56%増の70.4億台湾ドル。下期にスマートフォン用パネルの受注が回復した。
20年8月、台湾の南部科学園区に保有していた土地と建物、付帯設備をファンドリー最大手のTSMCに売却すると発表した。売却価格は48.4億台湾ドル。第6世代マザーガラスを採用した第4工場を建設するため十数年前に同園区から借り受けていたが、工場は建設途中のまま遊休地になっていた。建物面積は8万9847㎡。TSMCは今後、先端プロセスの拡張用地として活用する。
一方、20年11月にはグループ企業のタッチパネルメーカー、ハンスタッチから南部科学園区の遊休工場を取得すると発表した。取得額は27.7億台湾ドル。ハンスターディスプレーは、この工場をミニ/マイクロLED製品の開発に活用する方針だ。
ジャイアントプラスは約2割の減収に
凸版印刷グループ傘下のジャイアントプラス(凌巨科技)の20年業績は、売上高が前年比19%減の71.6億台湾ドルにとどまった。出荷実績は非公表。20年10~12月期の売上高も前年同期比4%減の20.4億台湾ドルと、復調に時間を要している。
20年4月末に深セン市の液晶モジュール組立子会社「深セン旭茂光電技術有限公司」の閉鎖を決議し、生産設備を含めて江蘇省昆山市と台湾の工場に生産を移管すると発表したが、同年6月末には昆山市の後工程子会社の土地使用権と建物の売却についても決議した。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳