現役ナースが見た「行動を変えられない、ざんねんな患者たち」

では、筆者が実際に出会った「習慣を変えられない」患者さんたちとの光景を振り返っていきます。習慣となった行動を変えることが、いかに難しいかを考えてみましょう。

※患者さんの個人が特定されないように病名や年齢を伏せています。

病室がタバコ臭い・・・。

多くの人がやめられない嗜好品の代表格「タバコ」。

最初に紹介するのは、個室に入院中だった高齢の男性Aさんの「喫煙問題」です。

Aさんは肺の病気で呼吸がしづらくなり、退院後も在宅での酸素療法が検討される方でした。在宅でも酸素吸入が必要になる、ということは、日常生活ではかなり息苦しいはずなのですが・・・。

しかし、ある日病室へ行くと・・・

タバコ臭いんです。

Aさんは個室に入院中でしたが、病棟内はもちろん禁煙。

「あれ~この部屋タバコ臭くないですか?」とやんわり問い詰めていくと、すんなり白状してくれました。そしてひと言。

「タバコが吸えないと生きる楽しみがない。どうせ老い先短いし、ええやろ?」

愛煙家のみなさんが、そう簡単にタバコを手放すことはできないでしょう。その点は、喫煙者である筆者も重々理解しています。でも、病室では吸わないのがルール。

「ダメですよ。次に吸ったら、病院の規則で強制退院になりますよ」としっかり伝え、タバコは筆者が預かることになりました。

・・・が、結局、お見舞い時の差し入れで手に入れたのか、そもそも隠し持っていたのか・・・。後日タバコを吸っていることが看護師長の耳に入り、Aさんは強制退院になってしまいました。

お菓子で看護師を買収!?

次は糖尿病のおしとやかな女性患者、Bさん。

血糖のコントロールが必要、ということで入院、間食(おやつ)は禁止されていました。しかし、部屋に入ると美味しそうにシュークリームを頬張るBさんが…。

頭ごなしに「禁止されているでしょう!」と注意してしまうと、患者さんとの信頼関係が崩れる可能性があります。そのため、こういう場面でどう対応するか、看護師の間では結構難しいとされているのです。

どう声をかけようか考えている筆者に、Bさんは

「あは、バレちゃった」

と、かわいらしく肩をすくめて言われました。続けて「このお饅頭あげるから内緒にしてくれない?」と“買収”をせまられて思わず筆者は苦笑。

丁寧にお断りして、血糖測定すれば何かしらを食べたことは簡単にバレてしまうことを伝えて退散しました。