(3)パートタイム労働者の就労時間と年収

パートタイム労働者の平均的な就労時間や年収を見てみましょう。2019年の1日当たり所定内実労働時間数(男女計)は5.4時間で、過去の2010年当時のデータでも平均5時間前後。ほぼ横ばいの状態が続いています。そして60歳以降のパートタイム労働者の年収は以下の通りです。

【パートタイム労働者の年齢階級別年間収入推計】

(男性)
60~64歳:167万8,720円
65~69歳:156万4,040円
70歳~:152万6,220円

(女性)
60~64歳:137万2,500円
65~69歳:135万540円
70歳~:135万4,200円

年収ベースで比較すると、男女差が大きいことが分かります。女性が老後に働く場合、可能であれば正社員として就労したり、職場の再雇用制度を利用したり、今までの仕事を活かす方向に進んだ方が、収入的にも有利なのかもしれません。時間給で働く場合、職場の勤務日数にも大きく左右される可能性がありますので、その点でも正社員の月給制の方が有利となります。

また、厚生労働省発表の「高齢者の雇用状況」(※4)データによると、高齢者の雇用環境も改善の方向にあるようです。

  • 65歳までの雇用確保措置のある企業は99.8%
  • 66歳以上働ける制度のある企業は27.6%
  • 70歳以上働ける制度のある企業は25.8%(対前年3.2ポイント増)

利用できるのであれば、定年延長の制度や再雇用制度を検討してみましょう。

老後の就労と資産管理の選択肢

健康を維持できて就労先があるのであれば、年を重ねても働き続けることができますが、年齢的にどうしても病気や介護のリスクも高まっていきます。健康面に不安があったり、施設への入所を検討したりしている場合、さらなる資金も必要となるでしょう。長期的な視点から老後資金を考えると、現役世代からの貯蓄が重要ですし、資産運用という方法も視野に入れるべきかもしれません。

投資・運用は元本保証の方法ではないため、投資に割り当てる資金は全体のうちの一部ということになりますが、投資信託商品など、投資先のバランスを取ることで、できるだけリスクを軽減する方法もあります。「iDeCo」や「つみたてNISA」は、税制面の優遇もある方法です。iDeCoは自分で年金を準備するための制度であり、つみたてNISAは長期の資産形成をするための制度となります。貯め方の選択肢としてこのような制度も検討してみてはいかがでしょうか。

さいごに

高齢者のパート就労は増えていますが、期待通りの収入が得られるかどうかは人それぞれだと思います。再雇用制度など企業側の制度も改善されてきていますので、利用できる環境にある場合は活用した方が収入の面でも有利になる可能性があります。一方で、現役時代の資産形成も忘れてはならないでしょう。まとまった資金を準備した上で就労による収入もあれば、「老齢年金の繰下げ受給」も検討することができます。ぜひ、現役時代からの計画的な貯蓄を進めていきましょう。

参考資料

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

LIMO編集部