私立中学への進学は富の現れ?

東京都教育委員会が2020年10月に発表した「令和2年度公立学校統計調査報告書【公立学校卒業者(令和元年度)の進路状況調査編】」によりますと、東京都内の公立小学校の卒業者のうち、私立中学への進学者は全体の18.4%にのぼるそうです。区によっては2~3人に一人の割合で私立中学へ進学するという地区もあり、東京都にいると「中学受験を子どもにさせてあげなくては」という気持ちになりやすいのかもしれません。

休校措置の際、いち早くタブレット学習やZOOMによる授業をおこない新たな形での学習に対応するなど、フットワークの軽さに注目が集まった私立中学や私立高校。また、活発な部活動や独自のカリキュラムで早くから専門的な分野に特化した学習がおこなえるなど、子供のことを考えると通わせてあげたい魅力がたくさんあるようです。

そんな私立中学校ですが、株式会社ファルボが発表した『中学受験は本当に課金ゲームなのか?「中学受験にかかる費用」実態調査レポート』によりますと、私立中学に通う家庭の72.1%が世帯年収800万以上、52.3%以上の家庭が世帯年収1000万円以上に含まれているそうです。

小学校高学年からの通塾代、複数の受験料金、合格後の入学金や学費、また、高い学力を維持するために通い続ける塾代など…私立中学に通うにはかなりの経済力が必要といわれています。そういった面を考えると「ほとんどの家庭が親の年収800万円以上」となるのは自然な流れなのかもしれません。

そんな情報はママたちの間に当然流れており「子供を私立に通わせることができる=お金持ち」という印象も一般的についているのではないでしょうか。また、学校によって学費の金額も違うため「どこどこ中学に通っている」というだけでその世帯がお金持ちという印象になることから「子供の学校名=ステイタス」と考えてしまう人は、ゼロではないように感じます。

昔から「あのうちはどこそこ大学卒だからお金持ちだ」という話は東京に限らず耳にしてきました。それが悪いとはいいませんが、そういった「ネームバリュー」を優先してお子さんの進路を決めてしまうことは「本当にその子にあった学校がそこだったのか」という大切なポイントが抜け落ちてしまいかねない場合もあります。

忘れてはならないのは、私立中学への進学者が多いといわれる都内でさえ、公立中学への進学者が全体の79.5%も存在しているということ。私立の学校はメリットもたくさんありますが、家から遠いことが多くお子さんの負担になったり、特色がはっきりしているからこそそのカラーに馴染めないという場合も考えられます。そういった点も含め、お子さん一人ひとりの特性に目を向けず、華やかな部分にだけ見て「お金も工面できるし、みんながするからうちも」と考えてしまうのは、果たしてお子さんのためになるのでしょうか。