当然ながら、取り崩し率が大きければ大きいほど引退後に現金が減ります。ただし実際、70代や80代になるとお金を使うにもかなり体力が必要で、毎日レストランで外食なんて無理なのです。これは筆者の両親を見ていれば分かりますので、思いのほかお金は使えません。

図表1:引退後老後資産3,000万円を65歳から定率(年5%/年10%/年15%)で取り崩した場合の資産推移

注:筆者作成(単位:横軸は年齢、縦軸は万円)

引き際を決めるのは難しいが…

こうなってくると、引退後は増やすというよりも使い切る、すなわち個人資産をプラマイゼロにする知恵が要ります。

米国ではディベストメントの定義を、「自身の投資戦略に合わない投資資産を取り崩すこと」としています。つまり、投資を継続する必要がなくなったら、いったん現金化しましょうということなのです。

投資(インベストメント)を始めるのは簡単ですが、引き際(ディベストメント)を決めるのは難しいことです。こうした観点から、資産形成をされている方は資産を増やすことを優先させると共に、引退後どのようにディベストメントするかも考えないといけません。

そう、投資はインベストメントとディベストメントのせめぎ合いなのです。いずれにせよ、いくら儲けてもあの世にお金は持っていけませんからね。

太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)