過剰な医療行為と「施設使用料」

そもそも、「この検査は必要だったのか」と考えました。以前からアメリカでは高い医療費だけではなく、必要のない検査やこじつけ診断による治療、手術、薬の処方などの過剰ともいえる医療行為が問題視されています。

ある調べによれば、過剰な医療行為によりアメリカの患者たちが支払う無駄な医療費は年間約2,000億ドル(約19億1,500万円)だそうです。また、過剰な医療行為の医療ミスで障害を負うことになったり、死亡する人が年間約3万人もいるというのです(※1)

特に最近は無駄な医療行為だけではなく、「ファシリティフィー」という、医療そのものではない管理費まで請求書に含まれているという話をよく聞きます。筆者の場合も、前回は診察室と採血ルームだけのこじんまりした施設でしたが、今回はERもある大きめな施設で検査を受けたことで、8倍も値上がりしたのです。

要するに、ある程度の規模の検査施設にはそれなりの管理費がかかるから、と場所代(施設使用料)が取られるということです。「次回からは近所のカフェか我が家にきて採血してくれ」と言ってやろうかといつまでも根に持ち、どこかの大統領のように往生際の悪い筆者です。

医療機関の変革が迫られる

話がそれましたが、実はコロナ禍で医療機関は過剰医療行為だけではなく、不透明で高額な費用などの「医療機関の経営方針」の変革が迫られているようです。

コロナ禍では多くの人が医療機関を避けるようになりました。感染を恐れていることはもちろんですが、失業し医療保険も失ったという人が多いのはアメリカならではの問題です。

“British Medical Journal”に掲載した医学研究をまとめた論文の中(※2)で、オーストラリアのボンド大学のレイ・モイニハン教授らは、「アメリカでは、医療機関に足を運ぶ人が半分になった」と述べています。それにより、心臓病など深刻な症状がありながらも見逃してしまい、亡くなったケースも少なくないといいます。

その一方で、定期検査や医師とのアポイントメントを延期したことで、過剰な医療行為による危害を免れた患者もいるようです。また患者自身が、今までの検査や診断が過剰だったのでは?と見直すきっかけにもなっているようだということです。