新型コロナウイルスの感染者数が1日2000人を超えるなど、感染は再び増加の一途をたどっていますが、長期化による「コロナ疲れ」や「GoTo」などの政策による気のゆるみなどもあってか、緊急事態宣言時に比べると街には人通りも増えています。

一方で、まだ大学のキャンパスは閑散としているところが多いようです。感染拡大を防止するために対面授業を実施せず、オンライン授業を行い、学生の登校を制限している大学も多いためです。このことを受けて、2020年10月に文科省は「11月上旬に対面授業が半数以下の大学名を公表する」と発表し批判が集まりましたが、12月初旬までのところ、公表はされていない状態です。

この記事では、「オンライン授業の是非」についての大学や学生、その親の意見などをみていきます。

文科省の考えと「対面派」の学生の声

それではなぜ、文科省は上記のような発表をするような判断に至ったのでしょうか。萩生田文部科学大臣は「入学したのに一度も学校に行けない、友人がいない、そのことによって休学や退学を考えている学生もいる危機がある。大切なのは学生の皆さんが納得しているかどうかだ」と説明しています。

これを受けて、対面授業をしたいという学生は、次のような反応をしていました。

「これはありがたい泣。これで大学行けるようになったらいいな」
「大学生の現状を知ってほしい。会社も高校も中学も専門も対面しているのに」
「学習効果は変わらないというが、決して大学の価値はそれだけではない」

「綺麗なキャンパスに憧れて入学したのに、まだ一度も大学に行ったことがない」という大学1年生は多くいるようです。また、オンライン授業のために、「課題を授業ごとに提出し、それによって出席を取る」という形をとっているという授業が多くあるようで、学生の負担となっていることもあるという声もみられます。

大学は学問をする場であるのは大前提ですが、実際に「コミュニケーション能力を養う場」としての役割も期待されており、サークル活動やキャンパスライフを送れないことを不満に思う学生は多くいるようです。

また、大学教員とみられるアカウントからは「大学教員の負担も大きい。慣れていない動画編集をしてオンライン授業をして課題を添削していると研究どころか家事、睡眠をする時間もない」とオンライン授業の大変さを吐露する投稿も見られました。

大学側の事情と「オンライン派」の学生の声

こうした状況で、授業料や施設費などを減額せず、オンライン授業を続けている大学には、次のような理由があるのではないかと推察する声もあります。

「以前クラスターが発生したある大学では報道後、多くの抗議や批判が集まったように、クラスターが発生するとメディアで執拗に取り上げられる」
「大学側も感染対策やオンライン授業の導入に例年よりもお金と手間がかかってる」
「実際にアンケートではオンライン授業の質が低いという学生は少ない」

大学は、講義室をさまざまな学生が代わる代わる利用することや、数百人の学生が一つの部屋で講義を受けることになるなど、感染拡大が起きやすい環境であるという指摘が見られました。実際に海外の大学でも、オンライン授業の導入は進んでおり、対面よりもそちらを充実させるのが主流のようで、日本の大学もそれに追随しているのだという分析をしている人もいます。

また、オンライン授業のほうがいいという学生の意見には、次のようなものがありました。

「対面授業で気になっていた私語がないので授業に集中しやすい」
「質問がチャット機能を使ってできるので、気兼ねなく質問できる」
「通学の無駄な時間が減り、効率が良くなった」

オンラインならではの利点を活かして、生まれた自由な時間を資格試験の勉強などに充てているといった声もよくみられました。

大学生の子を持つ親の焦り

このオンライン授業に対する意見で、SNS上に多く見られるものは、意外にも「大学生の子を持つ親」の投稿です。

「gotoや入国制限は緩和するのに大学生はオンライン授業のみ。部活も未だに自粛中。納得できない。せめて施設費を返して」
「大学生の息子は家から出る機会もなく、ついにメンタルにも不調がではじめた。最近は不眠でほとんど寝つけないし、オンライン授業でイヤホンをずっとしているので耳にも違和感があるとのこと。もう限界です」
「娘は課題がたまりすぎて、週一回の対面授業を欠席しオンラインで受けた。絶対に対面の方が集中できるしその方がいいと思ったとのこと」

現在、多くの大学は図書館などの施設を自由に使うことができないため、特に施設費を含む学費が満額であることに不満と批判が集まっているようです。また、大学に通学する必要がなくなったため家を出る機会が減り、不健康になっている子どもを心配する親の声が多くみられます。

大学にとっても悩みのタネ

文部科学省が推奨する「対面とオンライン授業のハイブリッド」は、必要に迫られて、ここまでオンライン化を進めてきた大学にとっても、依然として苦しい問題のようです。たとえば、ある学生にとって、同じ日に「対面の授業」と「オンラインの授業」があれば、学生はキャンパスに来なければならず、どこでオンライン授業を受けるのかなど、また新たな感染防止策を講じなければならないでしょう。

新しい生活様式の中で、学生だけでなく、大学もどのようにあるべきか問われています。

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