株主重視のROE経営は危険で迷惑。コロナ不況でわかった日本型安全経営の価値

銀行が弱い立場だとROE重視が進む

企業の自己資本比率が低下すると株主は高いROEを享受できるわけですが、もう一つ株主が享受できるのがリスクの軽減(リスクの銀行への押し付け)です。

株式会社には株主有限責任の原則というものがあり、会社が純資産以上の損失を被っても株主は追加の負担を求められることはありません。つまり、会社が借金を返せなければ、その分は銀行が損失を被るというわけです。

会社が儲かった時は株主が利益を受け取るのに、会社が大損をすると銀行が損をするわけです。そして、何円以上の損だと銀行が損を被るのか、という境目が純資産額なのです。

したがって、企業が銀行から借金をして自社株買い(あるいは配当)をするということは、株主から銀行にリスクを移転する行為なのです。

そうしたことを考えると、本来であれば銀行は、自己資本比率の低い借り手、たとえばB社のような企業に対しては高い金利を要求すべきです。倒産する可能性が結構高く、銀行が損失を被る可能性があるからです。

たとえば金利が2%より高ければ、B社は赤字になりかねませんから、増資によって資金を調達して銀行借入を減らすでしょう。そうなれば、銀行は安心して金を貸せるようになるわけです。

もっとも、今は企業の資金需要が弱いため(新型コロナの影響は除く)、銀行間で貸出金利引き下げ競争が行われており、「自己資本比率が低い借り手には高い金利」などと言い出しにくい状況です。「それなら、他の銀行から借りる」と言われかねないからです。

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執筆者
塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と関係なく個人として行なっているため、現職は経済評論家と表記したものである。【近著】なんだ、そうなのか! 経済入門』『老後破産しないためのお金の教科書』『経済暴論: 誰も言わなかった「社会とマネー」の奇怪な正体』『一番わかりやすい日本経済入門』『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由【雑誌寄稿等】Facebook、NewsPicks、アメブロ等にて適宜ご紹介