投資家は長期投資を目指すべきだとよく言われますが、どのように長期投資をして良いか分からないことが多いですよね。今、日本はマイナス金利のため、利回り物などの金融商品も選択肢が限られてきているように思えます。また、身近な日本株に投資をするといっても、上場企業は3,500社以上もあり、どの銘柄に投資をすべきか迷ってしまうものです。

そこで、今回は投信1編集部が個人投資家向け金融経済メディア Longine(ロンジン)編集委員長の泉田良輔氏に長期投資のアプローチを聞いてみました。

――長期投資という観点からは日本株はどのように見えるのでしょうか。

泉田良輔 Longine編集委員長(以下、泉田):日本株全体で言えば、これまでの名目GDPやGDPデフレーターを見てもわかるように、デフレ等により経済成長率が高くありませんでした。結果、株価は景気循環に応じて動く資産だったと言えます。したがって、日本株のインデックスファンドやETFを長期でずっと保有していれば幸せだったかと問われれば、必ずしもそうではありませんでした。

その一方で、日本株は循環相場であったことから、TOPIXや日経平均株価が安い時に買い高くなれば売るという投資行動を繰り返せば、しっかりと超過収益を得ることができました。

たとえば、TOPIXで言えば「800で購入し1,800に近づいたら売り」という投資行動をしていればよかったわけです。今回のアベノミクス相場でも2012年にTOPIXは800を割っており、その後1,600を超えました。残念ながら1,800までは行きませんでしたが、先の鉄則通りにTOPIXが800を割った時点で購入していれば株価は倍近くになったわけです。

この投資手法では、毎日株価をチェックする必要もなく、投資期間も数年という時間軸です。ただ、この投資を長期投資かと聞かれれば違うと思います。

――では、日本株に長期投資は不向きということなのでしょうか。

泉田:”長期”をどの程度の時間軸で捉えるのかには個人差があると思います。ちなみに、アベノミクスにおける高値はTOPIXを月次ベースで見ていくと2015年5月末です。アベノミクスの始まりが2012年末とすれば、約2年半で高値を達成したことになります。この2年半で株価を2倍にしたアベノミクスは大したものだとは思いますが、この時間軸を長期と捉えるかどうかは人それぞれでしょう。

たとえば、30代から50代のサラリーマンが退職後の生活資金のために資産形成をするという前提であれば、2年半という期間は短すぎます。仮にアベノミクスで株式投資が上手くいって一旦売却できたとしても、ではその資金を次はどの資産に投資をしたらよいか困ることは十分考えられます。

日本株に投資をするのであれば、ビジネスモデルの競争優位が確立されており、長期で事業拡大が見込まれる企業が良いと思います。特に注目したいのは、景気が悪くなっても赤字になりにくい企業です。そうした企業を見つけることができれば株価が下がった時には自信を持ってポジションを持つことができます。

このような企業は、グローバルで活躍する企業にも国内のみで事業を展開する企業、いずれにも存在します。また、キャッシュフローの中から適切に配当がされるのであれば、現在のマイナス金利という環境を考えれば配当利回りも魅力的に見えるはずです。

Longineでは、そうした観点から長期投資銘柄をご紹介しているのでご興味があれば参考にしてみてください。

たとえば、小売りセクターで一般スーパーに変わる業態が伸び続けている銘柄世界的に水準が高まる医療に必要とされる機器向けのデバイスを提供している銘柄世界の電子デバイスに必要不可欠な材料を提供しているグローバルリーダーの銘柄など、日本企業にも30から50銘柄程度は長期で成長余地のある企業は存在します。

そうした企業と出会えればラッキーと言えますので、Longineによるスクリーニングにご興味があれば、そちらも参考にしてみてください。

――長期投資に向く資産で検討すべきものがあれば教えてください。

泉田:ここまで日本株についてお話ししましたが、経済成長率を考えれば外国株式も魅力的です。ただ、どの個別株に投資をすればよいかなどの判断に迷う方もいるかと思います。そうした場合は、MSCIコクサイなど日本株を除く外国株式のインデックスをベンチマークとし、購入手数料がかからず信託報酬が低いインデックスファンドを持っておくのは1つの選択肢です。

また、世界中で金利が低水準にある現在、国内外の金融商品に限らず高配当銘柄やREIT(リート)など、それなりの利回りを確保することのできる金融商品に資金が集まっています。ただし、資金が集まっているということはバリュエーションも高くなっているということでもあります。いわゆる”利回り物”は長期で持っていれば安心と考えるのではなく、機動的に資産をアロケーションするというスタンスで運用するのが良いかもしれません。

――海外資産だと為替レートが気になります。この点はいかがでしょうか。

泉田:為替レートは読みにくいものという前提はありますが、現時点で言えるのは、「利上げをしたい米国、低金利(マイナス金利)を続けざるを得ない日本」という構造だけを考えれば、これから急激な円高になる可能性は低いと思います。

ただ、中東・欧州地域でのテロや北朝鮮の動向など、地政学的リスクがこれまでになく高まってきていることには注意が必要です。そもそも景気がそれほど良くない欧州が、移民問題やテロのリスクを抱えているということ自体が資産運用にとってはリスクです。

従来、リーマンショックのような世界的なパニックが起きた場合には円が買われて円高となりました。パニック的な状況では円高になる傾向があるというのをリスクシナリオに入れつつ、すべてを海外資産することなく(そこまでする日本人も稀かと思いますが)資産形成をするのが良いかと思います。

Longineでは、このような相場に対する見方や、先ほどお話しした長期推奨銘柄などの記事を公開次第お知らせする無料のニュースレターなどもありますので、ご興味があればLongineのサービス案内ページから登録をしてみてください。

――本日はどうもありがとうございました。

泉田:こちらこそありがとうございました。

 

LIMO編集部