さいごに、離職防止・人材確保に向けた国の対策についても触れておきましょう。

介護職員処遇改善加算

介護職員の安定的な処遇改善を図るための環境整備とともに、介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設された加算です。

実際に、介護職員改善加算を受けている事業所は約8割と多いうえ、事業所に入った加算は介護職員の処遇改善に充てることが義務付けられているため、介護職員の賃金は増加傾向にあるといえるでしょう。

再就職準備金貸付事業(実施主体は都道府県社会福祉協議会等)

介護職員としての知識や経験を持つ人が、再び介護の仕事に就くことをサポートするための制度です。

子どもの預け先を探す活動費や、研修参加費・参考図書の購入など、介護の仕事への再就職に関するもののみが対象となります。条件を満たしている人であれば最大で40万円の貸付を受けることが可能です。

2年間介護職員の業務に従事することで、返還が全額免除されるので、利用しやすい制度といえるかもしれません。

おわりに

先述の調査結果からは、相談窓口の有無で、介護労働者の「悩み・不安・不満」などに大きな差があることがわかりました。いつでも相談できる窓口を施設などに設置することは、離職防止につながると考えられます。

介護職の離職率は、ゆるやかな減少傾向にあります。現在、事業所や国がおこなっている対策が功を奏し始めているのかもしれません。とはいえ、高齢者の増加に伴い、依然として介護人材は慢性的な人手不足が続いています。他業種からの転職や、新たな介護職員を増やすためにも、さらなる対策が求められます。

「2025年」はもうすぐそこ。それまでにいかに介護人材を確保するかが大きなカギとなるでしょう。

【参考】
福祉・介護人材の確保対策について」(令和元年)厚生労働省
令和元年雇用動向調査結果」厚生労働省
介護労働実態調査」(令和元年)公益財団法人介護労働安定センター
令和2年就労条件総合調査」厚生労働省

鈴木 咲季