社会人にとって、仕事を円滑に進めるためにも「ビジネスマナー」は重要です。しかし、マナーの形式そのものが本来の目的よりも優先されてしまい、不必要な揚げ足取りや揉め事が生じてしまうなど、本末転倒となってしまうことも少なくありません。言葉遣いなどは、とくにその傾向があるのではないでしょうか?
SNS上では最近、「きこりん@リバラボの採用広報」さんの次のようなツイートが話題を呼んでいました。
「仕事の連絡に対し「了解しました」って同僚や目下の人に対して使う言葉であって、目上や上司の人に使うのは失礼にあたりますので、注意してください。って前職で口酸ッッッッッッッッッぱく指導されたので、今でも使う人を見ると勝手にヒヤッとする。社会人の皆様は気をつけようネ」
この投稿は1700件以上の「いいね!」を集めるなど、共感を得ています。……が、それと同時に、「了解しました」は失礼ではないのだという反対意見も多く集めています。
この記事では「『了解』は失礼なのか、問題ないのか?」という問題へのさまざまな考え方を、専門家の意見なども交えつつみていきます。
「『了解』は失礼」派の意見
「了解ですって言われると仕事する気なくなった。そう言うところが一番大切」
「会社に入ってきた新人が上司に了解ってすごい言うからドキドキする」
「了解が失礼って最近の子は知らないのかな?めっちゃ後輩が言って気になる」
これらはいずれも、後輩や新人が口にする「了解」に対して、マイナスな印象を受けたというSNS上での投稿です。
実際にビジネスマナーを紹介するサイトを見ると、「了解」は目上の人に使わないほうがいいと書かれているものが多くあります。そうした流れもあってか、ネット上では以下のような意見がよくみられます。
「リスクとりたくないから承知しましたっていうなあ」
「私も目上の人への了解しましたはヒヤッとする」
「了解しましたってなんかぶっきらぼうな感じがする」
実際の業務では「了解しました」を使うのは避けて、「承知しました」などを使うという声が多く見られました。慣習でそうしてきたということがその理由のようです。また、ある国語辞典には「慣用に馴染まないため、目上の人には承りましたなどを使うほうが好ましい」と記載されていると主張している人もいました。
「『了解』は失礼ではない」派の意見
一方で、「了解」は失礼ではないぞという意見の人も多く投稿されています。
「了解しましたが失礼だと言われるようになったのはここ10年ほどのこと」
「警視庁や海保でも了解と使うのに失礼なことあるかな?」
「了解が失礼だというロジックを教えて欲しい」
「『了解』は失礼ではない」派の意見によると、「了解しました」が失礼だというマナーはごく最近に生まれたものであるといいます。また「了解」という言葉は、理解し承諾したことを意味していて、「単に承諾したという意味合いのある『承知』よりも上位の存在である」と主張する声もちらほら見られました。
「了解」が失礼と言われる理由
「了解」が失礼だと言われる理由について詳しく調べてみると、専門家によるツイートもみられます。
「「承知しました」や「かしこまりました」は「分かった」に丁寧と謙譲の意味が加わった表現の例です。一方、「了解」は「わかる」の漢語表現に過ぎず特に敬意はありません。(中略)しかしながら丁寧かつへりくだった「いたしました」をつけて「了解いたしました」といえば、何ら失礼ではなく、敬語として十分です。」
この投稿は、国語辞典編纂者の飯間浩明さんによるもので、2016年の投稿ですが、4.3万件のリツイート(RT)と3.5万件の「いいね!」がつき、大きな話題を集めていました。
飯間さんによると、「了解しました」という言葉は「分かりました」とほぼ同等で特に敬意は含んでおらず、「承知しました」や「かしこまりました」は敬意を含む表現です。これらを比べた視点で、「『了解』は失礼」と言われることになったものと推測されます。
それぞれがもっと寛容になるべき
飯間さんは続けて、「了解いたしました」のように、「いたしました」が入っていれば、敬語としては十分だと伝えています。そして、「『了解いたしました』を相手が使っても怒らないであげてということです」とも。ビジネスマナーは相手を不快にさせないために重要であることは間違いありませんが、確かに、マナー以前にそもそも各人がもっと寛容になるべきだという意見もよく見られます。
このように、専門家の意見としては、「了解」を用いる場合は「いたしました」をつければ問題ないとのことです。……が、先にも紹介した通り、それでも不快に思う人もいるかもしれません。先に紹介したツイートにもありましたが、リスクを考えると、「了解」を使うことは避け、「承知」などを使うべきなのか、悩ましいところです。皆さんはどう思われますか?
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