そもそも、MonotaRO (モノタロウ)とはどのような会社か

MonotaRO(3064)は、軍手などの消耗品や工具などの間接資材を扱うインターネット通販会社です。このユニークな社名には、1)欲しい商品がすべて手に入る”モノが足りる”という意味の語呂合わせ、2)既存流通システムに一石を投じる”流通の鬼退治”という意味、3)“メンテナンス・リペア・アンド・オペレーション”の頭文字(M、R、O)からMonotaRO、という3つの由来があります。

4年半で株価は23倍に、だが最近は軟調

同社の創業は2000年ですが、創業当時、工場で使われる間接資材は商社、問屋、工具商などを通して購入されることが一般的でした。こうした複雑で非効率なモノの流れを、ネットを活用して改革に成功したことが同社の急成長の背景です。

実際、業績の拡大には目を見張るものがあります。2016年12月期の会社予想を5年前の2011年12月期実績と比較すると、売上高は3.2倍、営業利益は4.4倍の見込みとなっています。この間、株価も大きく上昇しており、2016年の上場来高値(6月10日の4,025円)は、2011年12月末の173円から、わずか4年半で23倍に上昇しています。

過去の長期トレンドについては、このように申し分のないパフォーマンスを示していますが、やや気掛かりな点は最近の株価が軟調であることです。直近、8月31日終値の2,611円は、2016年6月10日の高値から▲35%下落した水準に留まります。この間のTOPIXの変動率が横ばいであるため、市場平均に対しては大幅なアンダーパフォームとなっています。

上期決算で何があったのか

急成長を遂げてきた同社に、何か大きな変調が起っているのでしょうか。その背景を探るために、まず、7月末に発表された2016年12月期上期決算を振り返ってみることにします。

上期実績は、売上高が対前年同期比+22%増(会社計画+23%増)、営業利益が同+31%増(同+25%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益が同+37%増(同+29%増)となっており、売上高は若干の未達となっていますが、利益は超過達成と、まずまずの決算でした。

また、通期会社予想は据え置かれていますが、通期計画に対する上期実績の進捗率は、売上高が47%、営業利益が48%に達しているため、特段、下振れリスクを感じさせるものでもありませんでした。

ただし、あえて懸念点を指摘するとしたら、売上高が若干の未達となっていたことや、四半期ごとの増収率の鈍化傾向が続いていることが挙げられます。

とはいえ、増収率については、2015年12月期Q3(7-9月期)が前年同期比+30%増、Q4(10-12月)が同+26%増、2016年12月期Q1(1-3月)が同+23%増、Q2(4-6月)が同+20%増ですので、減速はしているものの“失速”というほどではありませんでした。

ちなみに、7月29日に開催された決算説明会において会社側は、上期売上高が未達になった要因として「マクロ経済の影響や、同社の販促活動にも改善すべき点があると考える」とした一方で、「競合の影響はない」とコメントしています。

こうしたことから、利益は上振れ傾向で推移しているのに、株価が大きく崩れてしまった一因は、売上の減速によるところが大きいと推察されます。

今後の注目点

最近の株価が軟調であったとはいえ、同社の株価指標(バリュエーション)はPERが50倍超、PBRが30倍超と、依然として市場平均を大きく上回っています。

同社に限らず、高評価を受けている企業は長期的な利益見通しに大きな変化がなくても、短期的な業績の些細な変化等により株価が大きく下落してしまう、“バリュエーション調整”という「試練」に直面することはよくあることです。そのため、長期的な成長トレンドの維持が可能かを改めて精査することが大切であると考えられます。

ちなみに、会社側によると同社が扱う間接資材の市場規模は5~10兆円とのことです。これに対して、今年度の同社の年間売上高予想は710億円に過ぎません。“鬼退治”をすべき巨大市場が依然として大きく残っていることに留意しながら、今後の動向を注視していきたいと思います。

 

和泉 美治