女性が30歳で仕事を辞めてしまうと…

男女の生涯賃金の比較では、フルタイムで定年(60歳)まで働くことが前提となっていますが、女性の場合、子育てなどのライフスタイルの変化によって、仕事を辞めたり、フルタイムで働くことを断念したり、キャリアを中断するケースが珍しくありません。

たとえば、年収400万円の収入があった女性が30歳で仕事を辞め専業主婦になった場合、生涯賃金は約3,000万円となります。最初のグラフのように、60歳まで働いた場合の2億円近い生涯賃金のたった15%です。

子育てが一段落したあと、再就職をするケースも多いと思いますが、一度キャリアが中断されると、低い賃金からのスタートとなってしまうことが考えられます。こうした低賃金での就業は年金額にも反映されるため、60歳まで仕事を辞めずに続けた人とキャリアが中断された人の生涯における賃金差は男女差以上のものとなるでしょう。

人生100年時代といわれる中で、定年の後ろ倒しは避けられなくなっています。長く働くことを考えた時、産休、育休制度の利用など、女性のキャリアが中断されない仕組み作りが必要であり、このような制度を躊躇せずに利用できる世の中が実現できれば、男女格差も自然と解消されるように思います。

参考

『ユースフル労働統計 2019―労働統計加工指標―21 生涯賃金など生涯に関する指標』JILPT
『ユースフル労働統計 2019―労働統計加工指標―15 各種の賃金格差』JILPT
『データブック国際労働比較2019(5.賃金・労働費用)』JILPT

石倉 博子