2020年8月7日に行なわれた、キリンホールディングス株式会社2020年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:キリンホールディングス株式会社 取締役常務執行役員 横田乃里也 氏

2020年度2Q実績

横田乃里也氏:みなさまこんにちは、キリンホールディングスの横田です。コロナ禍において行動が制限される中、ご来場いただいた方あるいはリモートでご参加いただいている方、お時間いただき誠にありがとうございます。それではさっそく決算説明資料の3ページをご覧ください。第1四半期決算発表時に各事業の販売数量に対する新型コロナウイルス感染拡大の影響を開示しましたが、各事業のブレない取り組みにより4月の販売数量を底とし5月、6月と改善しました。

その結果2020年度第2四半期の連結売上収益は対前年6.2パーセント減の8,725億円となりました。連結事業利益については、厳しい事業環境ではありますが、各事業においてできる限りのコスト削減を実施したことにより、対前年で23.1パーセント減の699億円となりました。親会社の所有者に帰属する四半期利益に関しては、昨年度の豪州事業減損の反動により大幅に改善し333億円となりました。なお、為替影響を除いた事業利益では707億円であり対前年22.1パーセントの減少となりました。

2020年度 業績予想修正

6ページをご覧ください。下半期についても新型コロナ感染拡大によるビジネスの影響は非常に大きく、お客さまの行動はビフォアコロナの状態には戻らないと考えています。国内の7月、8月の感染再拡大の状況を見ても、今後も予断を許しませんが業績予想修正については感染拡大初期にあったような大きな混乱が生じることはなく、自粛や制限も部分的または一時的なものにとどまるという前提で見直しています。

その結果、連結売上収益は年初計画に対して8.8パーセント減の1兆8,240億円とし、連結事業利益は年初計画に対して26.7パーセント減の1,400億円としました。新型コロナ感染拡大による事業利益の影響を約700億円と見込み、各事業で追加的にコスト削減を実施し約250億円をカバーする計画となっています。

2020年度 業績予想修正:連結事業利益 事業会社別増減

7ページをご覧ください。対前年に対する事業利益の増減としては、主要事業のキリンビール133億円、キリンビバレッジ64億円、ライオン252億円と食領域を中心に新型コロナ感染拡大の影響を受け、事業利益の減少を見込んでいます。とくにライオン酒類事業は対前年51.7パーセント減と大きな影響となっています。

一方で協和キリンについては、感染拡大初期の医療現場の混乱から患者さまの通院が制限されたことによる影響を多少受けたものの、事業利益は対前年3パーセント増で食領域に比べ新型コロナの影響は小さく抑えられています。その他の事業についても、不断の努力で事業リスクを最小限に抑えた結果、連結事業利益トータルとして26.6パーセント、508億円の減少となります。

キリンビール

8ページをご覧ください。次に主要事業の実績と下半期の取り組みについて、ポイントを絞ってご説明します。まずはキリンビールです。上半期実績については、コロナ禍の環境変化を的確に捉えお客さま基軸の戦略をぶらさずに活動し、ビール類の市場が10パーセント減のところキリンは4.4パーセント減とアウトパフォームしました。

家庭を中心に定番回帰の流れを捉え、「一番搾り缶」は対前年2パーセント減、「本麒麟」は39パーセント増と大きく販売に貢献しました。また、健康セグメントの成長を捉えることに加え消費の二極化の流れからRTDの成長だけではなく、量販チャネルにおけるクラフトカテゴリーの成長も捉えることができました。

下期に向けては引き続き業務用チャネルが厳しいことからコスト削減は進めつつも、もう1つの大きな環境変化となる酒税改正をにらみ次年度以降にも繋がるブランド強化をしっかり行なっていきます。またRTDに対しても消費の二極化に応えるべく、高付加価値RTD商品を上市するとともにRTDの収益性のさらなる改善に着手します。

キリンビバレッジ

9ページをご覧ください。次にキリンビバレッジです。コロナ禍による在宅勤務増加や外出規制でお客さまの行動が制限されるなか、上半期の清涼飲料市場8パーセント減に対しキリンビバレッジは7.7パーセント減と市場並みの実績を確保しました。

自販機やコンビニチャネルが厳しいながらも「午後の紅茶 ザ・マイスターズ」や「おいしい無糖」そして「FIRE ワンデイブラック」など注力している無糖・低糖領域は市場を大幅に上回る実績を残すことができました。下半期についても新型コロナ影響によりお客さまの活動は引き続き制限されることを想定しています。

さらに7月の長雨による販売数量影響を考慮しながらも無糖・低糖領域の引き続きの強化、成長ドライバーである健康カテゴリーの「プラズマ乳酸菌」に力を入れ、強固なブランド体系の構築を推進していきます。もちろん販売費の適正化や営業活動を含む一般管理費の見直しなど、可能な限りのコスト削減を実施し、厳しい環境ながらも利益確保を目指します。

ライオン 酒類事業

10ページをご覧ください。ライオンはコロナ禍の影響が最も大きい事業となりました。ライオン酒類事業は北米ニュー・ベルジャン・ブルーイングの連結化に伴い、販売数量および売上収益が増加しましたが豪州、ニュージーランドではとくに業務用チャネルが大きく影響を受けました。

日本以上にロックダウンの規制が厳しいため、第2四半期は業務用チャネルの販売が約9割減になったことに加え、大きなダメージを受けた得意先を支えるべく大樽の無償回収や不要在庫の手当てを行なったことで関連コストが増加しました。

家庭用に比べ酒税の税率が低く、収益性の高い業務用チャネルが大きく減少したこと、また家庭用チャネルにおいては消費者の低価格志向の影響を受け、大幅にミックスが悪化する結果となりビジネスに与えるインパクトは非常に大きなものとなりました。

下半期については、業務用チャネルは段階的に回復すると見ているもののビクトリア州が再びロックダウン状態になるなど、コロナの感染状況については継続して注視する必要があります。

引き続き第2四半期に発売した好調な新商品の市場浸透を進めるほか、健康志向などを背景に北米で急成長をしているHard Seltzerカテゴリーに力を入れるべく、自社ブランドに加え10月からは北米トップブランドであるWhite Clawの豪州独占販売を開始します。本社費用の削減も含めあらゆるコストダウンを実行し、新型コロナの影響の軽減に努めます。

協和発酵バイオ「事業再生へ向けた取り組み」進捗

11ページをご覧ください。次に協和発酵バイオです。第1四半期決算でもご報告しましたが、生産管理・生産技術を強みとするキリングループの人材を主要ポストに派遣することで総力を挙げて生産体制の復旧、品質保証機能の強化を進めています。

また山口事業所防府工場に、医薬事業における経験豊富な品質保証責任者を派遣するなど、生産現場のテコ入れを実施し、再生計画は順調に進んでいます。さらに抜本的な組織能力強化を目的として、組織風土の改革に向けてプロジェクトを始動させています。

再生の道筋が見えたことから、さらなる成長のため高収益体質への改善の取り組みもスタートしました。7月1日付けで協和発酵バイオの基礎研究部門をキリンホールディングスの中央研究所に統合し、将来に向けた研究開発力の強化を図るとともに、競争優位性のある高機能素材の構成比を高め生産品目のポートフォリオ改善にも努めていきます。

ヘルスサイエンス領域 プラズマ乳酸菌

12ページをご覧ください。事業については最後になりますが、ヘルスサイエンス領域の「プラズマ乳酸菌」です。第1四半期に引き続き消費者の健康意識の高まりを受け、プラズマ乳酸菌の関連商品は大きく伸長しており、上半期は対前年2倍以上の実績となりました。下半期についても飲料、食品、タブレットとすべての商品群において各事業会社にて力を入れていきます。

中計キャッシュアロケーション・プライオリティー

13ページをご覧ください。最後にキャッシュアロケーションです。お客さまの行動はすぐには戻ることはなく、しばらくはコロナ禍での経済活動が余儀なくされることを考えると、次年度についても営業キャッシュフローは、コロナ前の水準に戻らないことも想定しなければなりません。

事実上、当初中計案では3年間の営業キャッシュフローを7,000億円としていましたが、この水準の営業キャッシュフローは見込めないものと考えています。この事実を受け止め設備投資計画を見直し、不急な支出を削減することでフリーキャッシュフローを確保します。中計で想定していたキャッシュ創出力は一時的に低下しますが、基本的な資本配分の優先順位は変更しません。本年度の配当金については当初の予定どおり、対前年1円増額の1株あたり65円を目指します。

大型戦略投資については、既存事業のテコ入れを最優先とし当面は抑制します。また自己株買いについては、営業キャッシュフローが通常レベルに回復するまでは実施する予定はありません。キャッシュを大事にするとともに、既存事業のシナジー創出に注力していきます。私からは以上となります。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて①

磯崎功典:みなさまおはようございます。キリンホールディングスの磯崎です。日頃はキリングループ製品へのご愛好ならびに企業活動へのご理解とご支援を賜りまして、厚く御礼します。まず最初に新型コロナウイルスの感染症によりまして、亡くなられた方々に謹んでお悔やみします。

罹患された方々には、心よりご回復をお祈りします。また九州、中部、東北地方をはじめ広範な地域におきまして、令和2年7月豪雨が発生しました。被害を受けられたすべてのみなさまにお悔やみお見舞いをします。

新型コロナウイルスの感染拡大に際し、従業員の安全と感染リスクの低減に配慮しつつ、キリングループならではの取り組みとしてCSVパーパスに沿った活動をグローバルに展開していきました。健康領域に関しては、医療機関および医療従事者への支援を中心に当社製品の提供や寄付を行ないました。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて②

そして地域社会、コミュニティに対しては家族や仲間と過ごす機会を増やすとともに、サプライチェーンにかかわるコミュニティを支援することで、世の中のみなさまの健康や日常生活に対して貢献していきました。

KV2027で何を目指しているか

ご存じのとおり昨年2月に長期経営構想「KV2027」を発表し、再生から成長へとステージをシフトさせることを明確にしました。その原動力は事業を通じて社会課題を解決し、社会的価値と経済的価値を最大にするCreating Shared Value、すなわちCSVです。

キリングループは創業以来一貫して発酵バイオテクノロジーをコア技術として酒類、飲料事業だけでなく医薬事業にも強みを持つ、世界でも例を見ない企業グループに進化しました。この強みとなる技術力や、マーケティング力などのイノベーションを実現する組織能力を最大限活かし食領域、ヘルスサイエンス領域、医領域が一体となり世界のCSV先進企業を目指すことが長期経営構想「KV2027」です。

新型コロナウイルスの感染拡大は誰も予想できない事態ではありましたが、この影響によりまして当社グループがとくに重きを置いていた健康や地域社会、コミュニティにおける課題がより一層意識される社会に様変わりしました。よって今後とも「KV2027」の方向性をぶらさずに、むしろ加速度的に社会課題の解決に取り組むことが我々の使命であると考えています。

新型コロナウイルス感染拡大で何が変わるのか

新型コロナウイルスの感染拡大は人々の行動を大きく制限し、社会の交流や営みが激減しました。一方で物理的な交流が減る中、デジタル化の発展によりバーチャル、リモートの繋がりが強化されるなど人々の生活やビジネス環境は一変しました。

このように社会活動が制限される環境下では、社会的ロスは削減されニーズを捉えたものやサービスがより際立った存在となります。この変化を見極め、対応することが重要な課題解決となります。

酒類・飲料事業のサステナビリティ

キリングループの基盤である食領域は自国生産、自国消費を基本としたビジネスモデルであり新型コロナウイルスの影響を受けてサプライチェーンが寸断されるリスクは低く、サステナビリティとして非常に強いビジネスモデルであると考えています。

キリングループの事業ポートフォリオ

個々の事業が高い収益性と持続力をもっていることが前提となっていますが、キリンの事業ポートフォリオは発酵バイオテクノロジーをベースにした食領域、医領域、そしてヘルスサイエンス領域。

それぞれのお客さまや患者さまの異なるニーズに応えることで複数のキャッシュフローの源泉を持つことができます。そのため、キリングループは世の中の変化に強い企業体であり「KV2027」の方向性に間違いはなかったということが証明されたと考えています。

ニューノーマルに向けて

一方で「KV2027」の方向性は変わらないものの、新型コロナウイルスがビジネスに与えたマグニチュードは非常に大きいためウィズコロナ、アフターコロナを見据えたニューノーマルに備え我々もビジネスを総点検する必要があります。なぜならば、お客さまの行動はもはやコロナ前には戻らないからです。

ビジネスについてもお客さまの行動に基づいて見直さなければなりません。私は今社内に大号令を出し、各ビジネスや本社機能において加速する、変革するという切り口で課題と対策を再定義しています。その方向性について一部ご紹介します。

ニーズの変化とそれらに対応する盤石な基盤(酒類事業の例)

具体的な取り組みの話に入る前に酒類事業を例にとって、お客さまの行動から新たな方向性を考えてみたいと思います。人々の行動が制限されたことにより、業務用チャネルの販売数量は激減しました。この状況はあまりに大きな社会現象であり、アフターコロナにおいても完全に元に戻らないと私は考えています。

新型コロナウイルスが収束したとしても、リモートワークが日常になり都市部の人の動きも少なく外食の機会も減少します。今までと違い外食に行く機会が少なくなるからこそ、お客さまは家ではつくれない食事や雰囲気など、お店ならではのエクスペリエンスを求めるようになります。

キリンは店舗の演出をお酒で彩ることでお客さまの満足度を上げるとともに、店舗にとって少しでも売上単価が上がる提案をしなければなりません。一方で自宅で過ごす時間が増え、いかに充実した家庭の時間を楽しむかということも大事になり、家庭用チャネルにおけるお客さまのニーズはますます多様化していきます。

足元の販売状況から、低価格志向と健康志向が高まることは我々が想定したとおりではありますが、今後ますます健康への意識は加速すると考えています。またコロナ禍で注目したい変化としては、家庭でちょっとした贅沢を味わいたいというお客さまが増えていることです。家庭の中で非日常を感じていただくための演出として「クラフトビール」や「ホームタップ」を提供し、加速する志向の多様化に応えていきます。

キリンビール 営業スタイルの変革

それでは具体的な取り組みについてお話ししていきます。まずコロナ禍で直面したことは、訪問を前提とした営業活動ができないということです。よって徹底的にリモートワークの研究を行ないました。ここで重要なのはより本質的な提案のみが対話に繋がるということです。

月並みな言い方ではありますが、お客さまが困っていることや実現したい課題を解決することこそがキリンの提供できる価値であり、これをハイレベルに行なうということです。例えば成功しているお店の取り組みを外食ニュースとしてご紹介したり、自治体の助成金の申請方法をわかりやすく伝えるなど、困っている課題に寄り添って一緒に解決していくことです。

行動が制限されても自主的な営業はできており、結果として営業担当者の移動時間が減少し営業効率があがり、体の負担が減るだけではなく考える時間も格段に増えます。経済効果としても移動にかかる費用や非効率的な販促もなくなり、ひいては事務所の数が減少するなど固定費の削減にも繋がります。よってこの営業スタイルの変革は不可逆的であり、ますます加速させるポイントになるわけです。

キリンビール 業務用ビジネスモデルの変革

またサービス内容の面でもニューノーマルを考えた時に業務用ビジネスモデルのイノベーションとして開発しました「タップ・マルシェ」のサービスはウィズコロナ、アフターコロナの状況に非常にフィットします。

密ということを解決するため飲食店は席数を絞るなど必要になり、なにもしなければ売上が減少するので「クラフトビール」を提供することは売上単価の向上につなげることができます。またビールの販売数量が減少した場合7リットル、10リットルといった大樽での提供よりも3リットルの小型容器の方がフレキシブルに量を調整できます。

さらに「タップ・マルシェ」のサービスは自社製品だけでなく、魅力的な世界のクラフトブルワーのビールを提供することで非日常の特別な体験を提供することができます。まさに飲食店の期待に応えるプラットフォーム型ビジネスとして業務用ビジネスを変革していきます。

キリンビバレッジ 自動販売機ビジネスの構造改革

国内清涼飲料事業で大きく打撃を受けたのは自販機チャネルです。とにかくお客さまの行動が以前のように戻ってこない以上、自販機チャネルの販売数量が元に戻ることはありません。ニューノーマルでリモートワークが当たり前になれば、オフィスなどを中心とした不採算機の整理を含め自販機にかかる固定費を削減しなければなりません。そして競合他社と共通する課題については、引き続きアライアンスを模索し業界として最適なオペレーションを目指していきます。

キリンビバレッジ SKUの適正化

また昔は新製品を大量に出し、その内の1つでも当たれば良いというのが業界の常識でしたが、キリンビバレッジではすでに基盤ブランドへの集中投資とパーパスブランディングによる長期的なブランド育成を行なっています。すでにSKUの適正化にも舵を切っていますが、このコロナをきっかけに本中計期間中の目標として約20パーセントの削減を目指しています。その効果としてブランド価値に繋がらないコストを削減できるだけではなく、フォーカスすべきブランドに経営資源をより重点的に配分できるメリットも出てきます。これも不退転な施策として加速して取り組んでいきます。

ライオン 酒類事業戦略

ライオンについてはCFOの横田からも説明がありましたとおり、3割を占める収益性の高い業務用チャネルの急激な落ち込みが大きな打撃となりました。そこで課題となるのは70パーセントの家庭用市場の収益性を引き上げることです。日本の酒類事業においてお客さま基軸でニーズを捉え、注力すべき商品の選択と集中で業績を回復させたキリンビールのマーケティング手法を横展開していきます。

すでにタスクフォースで具体的な取り組みを始めていますが、マーケティングを抜本的に改革していきます。さらにはサプライチェーン全体の見直しや本社コストの見直しなど、あらゆるレベルで利益構造の再点検を行ない、徹底したコスト削減も実施する予定です。

協和キリン 医薬品の自宅投与

次に医領域です。一般的に医薬事業は新型コロナウイルスの影響は比較的小さいと言われていますが、外出制限により通院が限定されています。協和キリンでは新型コロナの感染以前から患者さまの負担軽減という課題解決のため、通院回数を減らす仕組みを研究していきました。

例えばくる病の治療薬である「CRYSViTA」は初回に処方されるあとは看護師による自宅投与が可能となっています。この結果、混乱した医療現場での診療を減らすことにより患者さまに薬の供給を継続することに貢献しています。また日本におきましても、がん治療のあとに白血球が減少する症状を抑える「ジーラスタ」という薬について自動投与できる専用デバイスの開発にも着手しました。

プラズマ乳酸菌 機能性表示食品登録受理

さて、ここでヘルスサイエンス事業について大きな進捗がございましたのでご報告します。この度「iMUSE」などのブランドで展開していきました「プラズマ乳酸菌」の主力商品が、免疫に関する機能性表示食品として消費者庁からその届出が受理されたことが公表されました。消費者庁の開示情報によりますと、これまでに届出された機能性表示食品は約3,000に上りますが、免疫と直接表現できる商品は「プラズマ乳酸菌」が唯一であり、史上初となります。

プラズマ乳酸菌の作用と一般的な乳酸菌の違い

そこで改めまして「プラズマ乳酸菌」の機能についてご説明します。人間には免疫という素晴らしい生体防御システムが備わっています。人間がそもそも備えているこの免疫力を健康なレベルに維持するのが「プラズマ乳酸菌」です。従来、免疫システムの司令塔の役割を果たす細胞であるプラズマサイトイド樹状細胞、pDCですけどもこれに作用する乳酸菌は存在しないと言われていました。ところが2012年にキリンで世界で初めてプラズマサイトイド樹状細胞を活性化できる乳酸菌を発見し、広範囲の免疫を活性化することが確認できました。

プラズマ乳酸菌 科学的エビデンスと機能性表示

「プラズマ乳酸菌」に関する研究は自社だけでなく、アカデミアネットワークと共同し臨床試験を経て共同研究を実施していきました。科学的エビデンスとしては総説7報、論文25報を発表しています。これまで免疫機能を商品に紐づけて話をすることができませんでしたが、今回消費者庁に届出が受理されたことにより「健康な人の免疫機能を維持する」と表示することができるようになりました。これにより免疫機能を維持したいと考えるお客さまが何を選んでいいかわからないという不安を解消することができます。免疫機能を謳って商品を提供できるのは画期的なことであり、キリンのヘルスサイエンス領域のビジネスはますます成長が期待できます。今後もさらに免疫領域の研究を加速することで、世界の人々の健康に貢献し、さまざまな社会課題の解決に向き合っていきたいと考えています。

ヘルスサイエンス領域 ファンケル シナジー

次にファンケルとのシナジーです。繰り返しになりますが、コロナ禍で我々が最も強く感じていることは健康に対するお客さまの期待の高まりです。新たな柱として注力するヘルスサイエンス領域を加速するためにもファンケルとのコラボレーション、シナジー創出はますます重要になります。

これまでは主にチャネルの相互利用を中心とするシナジー創出への取り組みをお示ししていきましたが、今回いよいよ両社のブランドを冠した新商品を発表することができました。具体的にはファンケルの「カロリミット」ブランドとキリンビールの「氷零」ブランドとのコラボとして機能性表示食品のノンアルコールRTDを、またキリンビバレッジでは、ファンケルの独自素材と肌の健康の知見を存分に活かした飲料としてフレーバーウォーター「BASE」を開発しました。どちらも10月に発売予定です。引き続きファンケルとの共同は予定どおりしっかりと進めていきます。

ヘルスサイエンス領域 グローバル戦略素材

さらに健康意識の高まりに対して競争力のある免疫領域および脳領域において優良な素材を提供していきます。「シチコリン」は日本やEUでは脳梗塞や認知症の薬として販売されています。一方、米国では食品として記憶力、集中力向上を訴求するサプリメントとして販売されています。

世界的に外出制限によりコミュニケーションが減少するなか、社会課題の解決として販売を加速していきます。また「ヒトミルクオリゴ糖」はもともと協和発酵バイオが製造技術を確立したものですが、現在は粉ミルクへの利用にとどまっています。しかし免疫機能と認知機能に効果がある母乳中の成人も享受できる製品形態に発展させ、日本だけでなく世界で通用する素材として社会課題の解決に努めていきます。

多様な人材と挑戦する風土

各事業において加速すること、変革することを述べていきましたが、これを実行するのは人間です。そして企業を変革していくためには、従来の発想と違う新たな価値創造マインドをもって事にあたらなければなりません。在宅勤務の原則化、シェアオフィスの活用など働きやすい環境を整えるだけなく「働きがい改革」と称し、組織の活性化に繋げたいと考えています。組織を活性化するにはダイバーシティを強化する必要があり、副業を解禁したのもその一環です。外部からの人材登用についてもマーケティング機能を強化したようにDXをはじめとしたグループに不足している機能についてますます加速させていきます。

社内の管理職への登用についても今年より制度を大幅に変更し早期化しました。多様性のある組織の中で切磋琢磨し、実力を示している社員には責任あるポジションへ早期に登用し社員がモチベーションをもって社会課題の解決に邁進できる組織をつくっていきます。

最後に

最後になりますが、新型コロナウイルスの感染拡大による甚大な環境変化に遭遇し、私は社会課題の解決こそが企業の使命であり存在意義であると改めて感じました。そして社会課題の解決し続けることこそが価値創造の源泉であり、持続的な企業価値の向上に繋がると確信しました。世界のCSV先進企業を目指し、この難局を乗り越え長期経営構想「KV2027」を達成していきます。今後のキリングループの成長にぜひご期待ください。長時間ご清聴ありがとうございました。

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