2020年9月26日にログミーFinance主催で行われた、第15回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第2部・ダイドーグループホールディングス株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:ダイドーグループホールディングス株式会社 執行役員コーポレートコミュニケーション部長 長谷川直和 氏\n元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏\nフリーアナウンサー 八木ひとみ 氏

世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするDyDoグループへ

長谷川直和氏(以下、長谷川):ダイドーグループホールディングスの長谷川でございます。本日は大変貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。また、平素は私どもの商品、また自動販売機などのご利用を賜り、誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、資料をご覧ください。本日は、私がみなさまにぜひ知っていただきたいことを冒頭でお伝えしたいと思います。それは、私どものグループが今、非常に大きく変わろうとしている、変化の時期にあるということです。

缶コーヒーや自動販売機は中核のビジネスではあるのですが、では、どのように変わろうとしているのか……その姿をこの資料の表紙に示しています。つまり、「世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするダイドーグループへ」変わっていきたいと思っています。これは、昨年策定した私どものグループの2030年のありたい姿を示す言葉ですので、今日は、具体的に何をすることによって変わっていくのか、ということを中心にご説明します。

会社概要

今日は、最初に当社のグループについて簡単にご紹介します。次に、成長戦略として、具体的にどのような投資をして、どのような姿に変わっていこうとしているのかを中心にお話ししたいと思っています。そして、最後に株主還元についてご説明します。

まず、会社概要についてです。ダイドーグループホールディングス株式会社は持株会社であり、設立は1975年1月27日です。この1975年というのは、ダイドードリンコという飲料の会社ができた年であり、実はグループとしてはもう少し前に歴史があります。

DyDoグループの事業セグメント

次に、現在取り組んでいる事業セグメントについてご説明します。国内飲料事業は、ダイドードリンコの缶コーヒーや自動販売機のビジネスです。海外飲料は、トルコを中心に事業を行っており、2016年にM&Aで取得したことが本格化したきっかけになっています。

また、医薬品関連事業は主に大同薬品工業であり、先ほどご紹介したダイドードリンコより前に創業した会社です。こちらの会社は何を行っているかというと、スライドの写真にありますが、茶色の小瓶のドリンク剤の受託製造を行っている会社です。店頭でもよくご覧いただけるかと思います。

そして、食品事業はフルーツゼリーのたらみです。こちらは2012年にM&Aで取得した経緯があります。フルーツゼリーのたらみがダイドーグループだということはあまり知られていないかと思いますが、このような構成となっています。

スライドの下側に売上構成比を記載しています。約70パーセントが国内飲料事業ということで、今は国内飲料事業が売上構成比の多くを占め、利益もほとんどが国内飲料事業で生み出されている状況です。そのため、事業の構成やビジネスの内容を大きく変えていこうと考えているところです。

代表者

そして、この変化をリードしているのは社長の髙松です。ご覧のとおり非常に若い社長であり、現在44歳です。就任は2014年の37歳ということで、すでに7年目です。若い社長のもと、どんどん変化することを試行しています。

グループ理念・ビジョン・スローガン

当社のグループ理念・ビジョン・スローガンについてご紹介します。ご覧のグループ理念は、先ほどご紹介した社長の髙松が2014年に社長に就任した時に新しく制定したものです。創業以来あった理念は「共存共栄」ということで、共に在り、共に栄えるという言葉だったのですが、今の理念は「人と、社会と、共に喜び、共に栄える。」となっています。この部分に関しては、もともとあった理念を少し言い換えてはいるものの、そのまま活かしています。

そして、新たに加わったのは、「その実現のためにDyDoグループは、ダイナミックにチャレンジを続ける。」というところです。もともとあった価値観を大事にしながら、新しい時代に向けて、ダイナミックにどんどんチャレンジを続けて変わっていこうということです。このようなことを新社長就任と同時に社内外に決意表明しました。

DyDoグループの変遷

こちらがグループの変遷ということで、絵にまとめたものです。先ほどご紹介したとおり、創業のビジネスは飲み物ではなく配置薬業ということで、スライドの左下のところに薬箱の写真を載せています。

最近は配置薬をあまり見かけないと思いますが、昔はよくありました。救急箱をご家庭や事業所などに置かせていただいて自由に使っていただき、減った分だけ代金を頂戴し、減ったものを補充して帰る、というビジネスがもともとありました。

グループとして大きな転機になったのは1970年頃です。スライドの少し上のところに、自動販売機と缶コーヒーが出ていますが、日本で缶コーヒーが発売され、HOTでもCOLDでも販売できる自動販売機ができたのが1970年頃でした。

大同薬品工業も、当時はいわゆるルートセールスという仕事をしていたため、そのようなお客さまのところにどんどん自動販売機をおすすめして設置していったところ、時代の流れに乗って非常によく売れ、設置台数も大きく伸びたというのが始まりでした。非常に順調であったため、清涼飲料の会社を分離してつくったのが、ダイドードリンコの始まりです。それが先ほどご紹介した1975年です。

配置薬と自動販売機ではまったく異なることを行っているようなのですが、いわゆるビジネスモデルという考え方でいうと、実は同じことを行っています。お客さまの便利なところに買いたいものを常に配置し、自由に買っていただいて、減っただけ補充し、その場で代金をいただいているという点でまったく同じビジネスになります。このベースのビジネスを大事にして大きくなってきている歴史があります。

連結売上高と営業利益率の推移

次に、近年の業績推移についてです。スライドの右側の昨年実績と今年の業績予想をご覧ください。数字だけ見ると利益が大幅に減っており、不安に思われるかと思います。しかし、今は2021年までの新しい中期経営計画に取り組んでおり、いわゆる先行投資のステージという位置付けになっています。

経営環境の変化

では、具体的に何に対して先行投資をしているのか、将来どうなりたいのか……このような成長戦略についてご説明します。今回、2030年までのありたい姿を策定した前提になっているのが、日本の人口動態という外部環境の変化になります。みなさまご案内のとおり、日本の人口はすでにピークアウトしたと言われており、すでに人口の減少は始まっています。そして、高齢者の比率がどんどん上がってきています。スライドの2030年のところに31パーセントと記載していますが、2060年の時点では38パーセントぐらいまで上がるのではないかと言われています。

このような社会になると何が起こるかというと、1つが労働人口の減少です。また、高齢化比率が上がってくるため、逆にビジネスチャンスとして出てくるのが、いわゆる健康や長寿に対するニーズです。グループ全体のビジネスの姿を、このような時代の変化にマッチしたものにしていこうというのが私どもの考えです。

中長期的な企業価値向上に向けたロードマップ

今までのビジネスをそのまま行っていれば相応の利益は出ますが、当面は利益が目減りしても、将来のためにあえて先行的に投資を行っていこうというのが、現在遂行中の「中期経営計画2021」の取り組みです。

グループミッション2030

そして、冒頭にご紹介したとおり、2030年のありたい姿というのが、「世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするDyDoグループへ」ということで、お客さま、社会、次代、人の4つのテーマごとに目指す姿を定めています。

このスライドの右側が、事業ポートフォリオに置き換えるとどのような姿を目指しているのか、という図になります。縦軸が売上額、横軸が営業利益率で、丸の大きさが利益の絶対額の大きさを示しています。また、薄い色になっているのが2018年の実績で、濃い色になっているのが2030年のありたい姿になった時の事業ポートフォリオの大きさとなっています。

お伝えしたいことは、冒頭にお話ししたとおり、利益が国内飲料事業にかなり偏っているということです。非飲料事業での第2の柱とありますが、将来的には国内飲料事業と並び立つものを打ち立てていこうと考えています。特に、先ほどお伝えしたとおり健康のニーズが高まってくるため、ヘルスケア領域でのビジネスを大きくしていくことが目指す方向性となります。

DyDoグループがめざす方向性

ビジネスモデルとしては、配置薬の時からベースとして同じことを行っています。そのため、2030年のありたい姿についても、2030年の方々が求めるであろう商品を生み出し、お届けする機能を磨き上げることによって、より便利な場所で、よりお求めやすく、必要なものを買っていただくという姿を目指していきたいと思っています。

コロナウイルスの感染拡大を契機とした社会の変革

今年は新型コロナウイルスの感染拡大ということで、非常に大きく世の中が変わりました。みなさまの生活も非常に大きく変わったと思うのですが、つまりそれは、ビジネスの前提も大きく変わったということだと思います。

この変化は、短期的な業績でいうと間違いなく相応のインパクトがあり、業績に影響を与えています。逆に社会が大きく変化したということは、ビジネスチャンスとしては極めて大きく、いかにこの変化に対応したビジネスにしていくかが問われています。非常に大きく変わっていくというのは、ある意味では私どもとしてもまさにチャンスではないかと考えています。

中期経営計画2021の投資戦略と進捗状況

したがって、「中期経営計画2021」では、投資戦略をあらかじめ定めて積極的に投資していこうということで、投資戦略の考え方に変わりはなく、長期的な観点で取り組みを進めていこうと考えています。

国内飲料事業の特徴①

投資戦略としては大きく4つあるのですが、投資の狙いなど、事業の内容をご紹介しながら順番にご説明します。まず、国内飲料事業です。このビジネスは、大きな特徴がいろいろあります。自販機の比率が多いことや、商品構成としてコーヒーが多いことはみなさまおそらくご存知かと思うのですが、スライドの「特徴②」のところに記載しているとおり、商品づくりにけっこうこだわりがあり、香料を一切使わずにつくっています。

また、「特徴③」のところにありますが、従来から、自販機そのものは私たちの店舗であると考えています。そのため、お店でお買い上げいただくからには、やはり楽しくお買い上げいただきたいということで、当たりが出たりスマホでポイントが貯まったりなど、付加的なサービスを付けています。

八木ひとみ氏(以下、八木):私も人生で1回だけ当たったことがあります。

長谷川:たくさん買っていただくともっと当たると思いますので、ぜひもっと買っていただけたらと思います。

また、ビジネスの特徴として非常に大きいのが、「特徴④」のファブレス経営というもので、製造そのものは外部へアウトソーシングしています。一方で何をしているのかというと、実際に自動販売機を通じて商品をお届けするところに特に経営資源を集中させています。

実は、この仕組みは財務的にも非常にメリットが大きいものがあります。考えていただくとおわかりになると思うのですが、自動販売機は現金で回収します。また、製造アウトソーシングをしているということは、商品を仕入れているため、仕入代金は通常は何ヶ月かあとに払うことになります。

つまり、回収が先行して支払いがあとになるビジネスモデルになりますので、非常に運転資本が小さく、キャッシュフローがよいビジネスとなっています。一定の安定した財務基盤があるため、先ほどお伝えしたとおり、新型コロナウイルスがあっても、投資戦略はあえて大きく変更する必要がないということになります。

【投資戦略①】スマートオペレーションの確立

では、どこに投資していくのかというと、まさに商品をお届けするところになります。投資戦略の1つ目は、名前だけを聞くと何のことかと思われると思いますが、スマートオペレーションの確立です。投資そのものでいうと、一台一台の自動販売機に通信機器を付けて、リアルタイムで何が売れているかを常に把握できる状態にすることにはお金がかかります。ただ、実際に実現したいのは、単にデータを取ることではなく、実際の現場の仕事をいかに変えていくかということです。

これからは労働力不足の時代です。ということは、それに対応できる仕事の仕組みに変えていく必要があるということであり、通信するからスマートなだけではなく、働き方そのものもスマートにしようと考えています。自動販売機に商品を補充する方はすべてを一人で行っているのですが、これをある程度分業化し、効率化していこうとしています。

この仕組みに変えることによって、今持っている自動販売機約27万台の管理にかかる人員において、30パーセント程度少ない人数で対応可能になります。デジタルトランスフォーメーションとよく言いますが、デジタル化するだけではなく、働き方そのものも変えていこうという取り組みです。

トルコ飲料事業の概要

次に海外飲料事業についてです。今どのようなことを行っているかというと、トルコ等を中心にビジネスを展開しています。「トルコで飲料事業を行っています」とご紹介すると、「なぜ、そのようなリスクの高い国でわざわざ事業を行っているのですか?」とよくご質問をいただきます。2016年にM&Aで進出したのですが、その進出した理由は、スライドの左下の人口ピラミッドにあります。

トルコは非常に平均年齢の若い国であり、30歳台と言われています。つまり、これから爆発的に人口が増えることが約束されている国です。ちょうど日本と逆です。そのようなことが市場背景としてあります。人口が増えれば、当然生活必需品の水や飲料の市場規模もそれに応じて非常に大きくなることが想定されます。

スライドの右側のグラフは、2016年にM&Aを行ってからどのように売上が推移しているかをグラフにしたものです。残念ながらトルコリラがどんどん下がっていますので、日本円換算では海外事業は伸びていないように見えます。しかし、実際に現地通貨ベースで3年前と比較すると88パーセント増ということで、ほぼ倍増に近い規模感になっていると思います。これだけ成長のスピードが速いということであり、将来、このようなところをベースにさらに海外売上高の比率を伸ばしていきたいと考えています。

既存事業の概要:食品事業

先ほど、非飲料事業で第2の柱を構築するというお話をしたのですが、では、飲料以外の事業でどのような事業があるのかというと、1つがフルーツゼリーのたらみです。

既存事業の概要:食品事業の特徴と強み

コンビニエンスストアやスーパーなどで商品をご覧いただく機会は多いと思います。あまりご存知ないかもしれないのですが、スライドの右上の円グラフにあるとおり、たらみのフルーツゼリー市場におけるマーケットシェアは45パーセントと非常に高く、ナンバーワンシェアをもっています。直近でも上がっており、市場の半分近くまで占めているところです。

スライドの右下がマーケット全体の動きとたらみの売上高の動きです。マーケット全体は伸びていませんが、たらみだけがほぼ一人で勝っている状況です。たらみのゼリーは非常においしいというイメージをお持ちいただいていると思うのですが、その一方で、ゼリーは誰がつくっても同じようにできるイメージもあるかもしれません。しかし、実はそうではなく、おいしいゼリーをつくるには非常にノウハウが必要です。

既存事業の概要:通信販売チャネル(国内飲料事業)の成長

また、近年非常に伸びているのが、国内飲料事業でダイドードリンコの中で行っている、サプリメントの通信販売です。中心的な商材は「ロコモプロ」です。プロテオグリカンという鮭の鼻軟骨から取った成分なのですが、この成分を配合した「ロコモプロ」が非常によく伸びています。スライドの左側のグラフにあるとおり、毎日かなり大幅に売上を伸ばしています。2012年から始め、ゼロから立ち上げたビジネスなのですが、今や立派にV字転換し、かなり収益率も高いビジネスに育ってきています。

既存事業の概要:医薬品関連事業①

創業の会社である大同薬品工業についてです。ドリンク剤の受託製造を行っているのですが、つくっている商品はスライドの右下の写真にあるとおり、「アリナミン」や「エスカップ」のような医薬品メーカーのドリンク剤や、美容メーカーの美容ドリンクなどを取り扱っています。

既存事業の概要:医薬品関連事業②

先ほどのダイドードリンコとの違いは、すべて他社メーカーのブランドの商品を受託し、当社はつくるほうに専念していることです。このような幅広い顧客基盤をもっていることが大きな強みです。

【投資戦略②】大同薬品の工場の新設と新剤形への取り組み

投資戦略の2つ目として、近年、大同薬品の工場の増強に投資を積極化しています。まず、医薬品でもできるパウチゼリーのラインをつくったことが大きなところです。また、今までは奈良県1拠点だったのですが、関東工場の群馬県ということで、首都圏に製造拠点をつくり、受託メーカーとしてより地位を高めていきたいと考えています。

【投資戦略③】ヘルスケア領域におけるM&A投資

では、今後、これを含めてヘルスケア領域をどのように伸ばしていきますか? ということなのですが、今取り組んでいるビジネスには、フルーツゼリーをおいしくつくる技術や伸びているサプリメントの通信販売、医薬品の製造免許があります。

これからは、医薬や医療、食品の垣根がどんどん低くなってくるのではないかと思います。「食品を取りながら体に良いものを取りたい」また、逆に「薬であってもおいしく食べたい」というニーズが広がると考えられますので、このような市場をつくっていきたいと思います。そして、そのために補完すべき事業があればM&Aを活用して確保していきます。これが投資戦略の3つ目です。

【投資戦略④】希少疾病の医療用医薬品事業の立ち上げ

投資戦略の4つ目としてご紹介したいのが、最終的に医療や治療のところまで事業領域を広げよう、という取り組みです。2019年1月にダイドーファーマという新しい会社を設立しています。このビジネスで何を行いたいかというと、いわゆる希少疾病の医療用医薬品をお届けしていこうと考えています。

ビジネスのスタイルとしては、「持たざる経営」ということで、自社で設備を持つのではなく、製薬業界からいろいろな人材をスカウトしてきて、できるだけそのような方々を中心に投資しているところです。

希少疾病の医療用医薬品について

希少疾病について少しご紹介します。難病や国内で患者数が5万人以下の疾病など、非常にめずらしい病気を対象にしています。また、治療薬がない疾病も非常に多くなっています。例えば、海外では実際に薬として認可されているものがあるけれど、日本ではまだ認可されていないものを海外から導入し、実際に患者さまへお届けできるようにしていきたいと考えています。これが目指しているビジネスです。

資本政策と株主還元について

次に、株主還元に関する考え方をご説明します。先ほどからお伝えしているとおり、私どもは今は投資のステージにあるということで、内部留保に相違はあるのですが、基本的な金額はあくまで成長のための投資として活用したいと思っています。

最近は、新型コロナウイルスの環境下で減配される会社や配当をなくす会社も多いと思いますが、あくまで安定配当の方針のもと、厳しい環境下でも今までと同じような配当をお届けしていきたいと考えています。

株主の皆様へ ―配当金―

もう1つご紹介しておきたいのが、剰余金処分についてです。どのような会社でもあると思うのですが、毎年の株主総会の議案である剰余金処分案について、図に置き換えたものをスライドに示しています。一般的な剰余金処分案は、配当がいくらかということだけが書いてあるのですが、当社の場合は、このほかに地域コミュニティ貢献積立金に1億円を積み立てることが必ず議案に入っています。

これは、株主の方にも安定的に配当として利益を還元することに加えて、私どもがビジネスを通じて大変お世話になっている地域社会にも、毎年安定的に利益を還元していきたいという考え方です。この考え方のもと、毎年1億円は社会貢献に使うということで、別議案として必ず上程しています。

地域・社会の皆様へ①

地域コミュニティ貢献積立金の具体的な活用方法としては、東日本大震災の継続的な支援や青少年の健全育成に使わせていただいています。

地域・社会の皆様へ②

また、今年は新型コロナウイルスにより、日本の各地のお祭りの中止が相次いでいます。地域の方が非常に大切にしている日本のお祭りの応援にも活用させていただいています。

株主の皆様へ ―株主優待―

次に、株主優待についてご紹介します。私どもの優待は雑誌などでもよくご紹介いただくのですが、今までは3,000円相当の優待品を年2回お届けしていました。しかし、今回は制度を変更し、年1回ただし6,000円相当でご用意しようと思っています。

併せて、今回の制度変更の際に追加したのが、1回だけではありますが、5年以上の継続保有の方に記念品を差し上げようと考えています。私どもの戦略はかなり長期的な戦略になっているため、株主のみなさまにも長きにわたってご支援をいただきたいと思っています。そのような考え方にご賛同いただいていることに感謝を込め、記念品をお送りする制度に変えています。

これからも長期的なスタンスとなりますが、ビジネスの姿を大きく変えて社会に貢献し、新しい時代に対応できる企業に変化していきたいと考えています。これからもどうぞご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

質疑応答:M&Aについて

坂本慎太郎氏(以下、坂本):M&Aについてお伺いします。M&Aは御社の今後の成長戦略ということで、投資家も非常に肝だと思って見ているところだと思います。IRなどでお伺いする時もざっくりとしか書いてない会社も多いのですが、御社の場合はスライドの16ページに、成長への投資と既存の部分のリプレース更新を含めて、2段階で「このようなかたちでお金を使います」と書かれています。その16ページのスライドの右上にあるように、ヘルスケア領域におけるM&A投資に300億円投資する計画となっています。なかなか難しい部分もあるとは思いますが、現状の進捗を教えてください。

また、コロナ禍でM&A業界における売るほうと買うほうに変化はありますか? シナリオが少し変わることはあるのかをお伺いしたいと思います。

長谷川:M&Aのターゲットですが、1つは既存のビジネスとどのようにシナジーをもっていけるかなどを中心に調査や検討を進めています。先ほどご紹介したとおり、大同薬品工業はドリンク剤とパウチゼリーの2つだけをつくることができるため、例えば1つの考え方として、もっと受託製造の領域を広げることが挙げられると思います。

また、先ほど通信販売のサプリメントの事業が成長しているというお話をしましたが、このビジネスをより大きくしていくための投資も1つの考え方としてあると思います。このようなところも含めて調査、検討を進めています。

ただ、コロナ禍で、当社自身の足元のキャッシュフローが現実的にやや厳しくなるという変化があり、社債の発行で一部資金の補完をしている状況です。加えて、やはりこのような環境下ですので、M&Aの決定に対するプロセスを今まで以上に厳格にしていかないといけません。考え方としては何も変わりませんが、投資判断はより厳格に慎重にしていきたいと考えています。

質疑応答:自動販売機の償却について

坂本:46ページの自動販売機の償却についてお伺いします。ここ近年で伸びたというお話を聞いたのですが、そうなると、当然見かけの利益も増えると思います。その部分と伸びた理由について教えてください。

長谷川:会計上の処理を変更をしています。見た目が異なるだけというのはまさにご指摘のとおりなのですが、本質的には、自動販売機1台当たりの使用年数をより長くしよう、ということにこれまで取り組んできました。

例えば、10年前は自動販売機の平均寿命は7年から8年くらいであり、その後は廃棄しなければなりませんでした。また、会計上の処理は(法定耐用年数である)5年で償却していました。

スライドに「フロンティアベンダー」と記載している部分をご覧ください。自動販売機はコンプレッサー部分、つまり冷却する部分が壊れやすくなっています。

坂本:冷蔵庫もそこが壊れますよね。

長谷川:おっしゃるとおりです。冷蔵庫とまったく同じで、コンプレッサー部分だけを入れ替え、フロンティアベンダーの活用をどんどん増やしているところです。そうすることによって、10年前は8年くらいだった使用年数が、平均で10年を超えています。そのため、会計上の処理もそれに合わせたということです。見た目を変えるのではなく、長期使用することによって実際のキャッシュフローも改善するという効果があります。

ここに書いているとおり、2030年の目標は平均10年を15年に伸ばすことです。(自販機の使用期間を)さらに長期化することによって、実際のキャッシュフローがよりよい状態をつくっていきたいと考えています。

質疑応答:新型コロナウイルスによる変化について

坂本:新型コロナウイルスの影響で、消費者の価値観や今後の意識が変わっていくことがあると思うのですが、御社のビジネスに変化はありますか? また、説明資料に売れる場所が変化しているとありましたが、コロナ禍における生活様式の変化で、どのあたりが売れるようになったのでしょうか? それに応じた自販機のスクラップアンドビルドなど、そのあたりの取り組みについて教えてください。

長谷川:おそらく、みなさまも売れる場所の変化は想像できると思います。従来、オフィスは安定的に多く売れる場所でしたが、在宅勤務が定着化し、オフィスに出勤する人数が今までの半分になれば、おのずと売上も半分になります。このようなことで実際に大きく変化し、これからも売上が半分のままになってしまう場所もたくさんあるかと思います。

ただ一方で、例えば工場などはコロナ前でも後でも在宅勤務とはあまり関係がなく、安定的にずっと売れ続けています。また、逆に人の動きが変わっているため、従来は売れなかったローカル市場、地方都市のようなところでも、例えば公園の周りなどが比較的よく売れてきています。

人の動きや生活が変わっているということは、飲み物が必要とされる場面も変わってきているということです。大事なことは、その変化にいかに柔軟に対応して自販機の設置場所を入れ替えていくかということだと思います。(新規設置場所の開発)営業の機動性が非常に大事なところです。したがって、「今まで売れていたのに。いつか回復していけばいいな」とずっと待っているよりは、より売れる場所の分析も含めて、機動的に柔軟に対応していくことが重要です。

また、新型コロナウイルスによって、東京一極集中の流れが変わる可能性もあると思います。今までは、できるだけ東京都内のオフィスに営業するための営業陣営をより多くしていこうという考え方でしたので、そのような営業体制の配置もより柔軟に考えていきたいと思っています。

質疑応答:希少疾患について

坂本:続いて、Twitterで事前にいただいた会場質問に移ります。希少疾患については、多くのご質問をいただいていており、関心が高いところかと思います。

八木:リアルタイムでも希少疾患の質問が来ていますね。

坂本:それらを総括してお伺いしたいのですが、なぜこの希少疾患に力を入れていきたいのでしょうか? シナジーについての全体的なお話はあったのですが、希少疾患に投資する予算などについて教えてください。また、いろいろな薬の開発フェーズから治験まであると思いますが、御社はそのどこに参画していきたいのか教えてください。

長谷川:希少疾病に着目したポイントについてはいくつかあります。(私たちがめざす領域として)専門用語でウルトラオーファンと言う、希少疾病の中でももっと患者さまの少ない疾患があります。これらは患者数が少なく、ビジネスにした時の規模感も小さくなります。したがって、メガファーマの方々にとっては、ビジネスとしての魅力度が低いといったこともあります。そこにあえて着目していきたいというのが1つの考え方です。

また、どのようなところに特化していくかですが、スライドの29ページに「持たざる経営」と記載しています。研究開発を1から行うということではなく、例えば、海外ですでに薬として承認されているものや、フェーズ3以降の上市の手前くらいのものを投資対象にしています。このようなもののライセンス契約を行い、日本での治験や承認申請は外部のアウトソーサーを使いながら適切に進め、上市していきます。

希少疾病は、難病でこの薬以外は救われないというような病気が対象ですので、厚生労働省にも早期承認という制度があり、着手してから実際の上市までの期間も比較的短くなっています。このような点がメリットになるため、着目しています。

また、規模が小さいものであっても、複数の案件を手掛けることによって、分散投資ができます。できるだけ可能性の高いものに絞り込んで投資することによって、リスクが減るのではないかということで、リスク低減を図りつつ、できるだけ可能性を高めていくという考え方です。

ただ、時間軸が長いことも確かですので、どちらかというと、先ほどご紹介した2030年の段階で相応の規模のビジネス、利益のビジネスになっていればよいという感覚です。どうしても、2年から3年は先行投資で売上がゼロで研究開発費だけが出ていく期間が続きます。これは事実として考えていますので、事業をしっかり育成していくためにも、本業の自動販売機や国内のビジネスの収益性をもっとよく解析し、キャッシュフローも大きくしていきたいと考えています。

質疑応答:サプリメントの売上について

坂本:コロナ禍でEC事業が増えているというお話なのですが、御社のEC関連のヘルスケアサプリメントの売上はいかがでしたか?

長谷川:先ほどスライドにもお示ししたのですが、当社のサプリメントの数字は非常に伸びています。コロナ禍においては、特にECに着目されて需要が増えているものの、非常に競争が激しくなっています。

ただそのような中で、おかげさまで今年も安定的に売上を伸長させることができています。その一番の理由は、当社の製品における既存のお客さまの離脱が非常に少ないことです。製品のよさをご理解いただいているかと思いますが、これからも引き続き伸ばしていきたいと思っています。

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