2020年9月25日に行なわれた、ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人2020年7月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人 執行役員 佐藤啓介 氏

COVID-19による本投資法人(KDR)の運用状況への影響

佐藤啓介氏:ケネディクス不動産投資顧問の佐藤です。平素はケネディクス・レジデンシャル・ネクスト法人の運営にご協力いただき誠にありがとうございます。この場をお借りして厚く御礼します。それでは、ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人の2020年7月期、第17期の決算概要について説明します。

まず、5ページで新型コロナウイルスの影響についてご説明します。居住用施設、ヘルスケア施設を中心とするケネディクス・レジデンシャル・ネクストのポートフォリオは、コロナ禍のもとでも安定的に運営できています。居住用施設の2020年7月期の平均稼働率は、96.0パーセントと、前年同期とほぼ同水準でしたが、新規契約数が少なかったことから、想定を0.5ポイント下回る水準となりました。今後、稼働率は徐々に回復していくと予想していますが、東京への人口流入数が一時的に転出超過に転じるなど、人口動態に変化が生じています。Withコロナの時代における人口動態の変化にも注視していく必要があると考えています。

新規契約更新時の賃料増加率は、4.0パーセント、0.6パーセントと、前期からさらに増加し過去最高の水準を更新しました。住宅賃料の増加基調は継続しています。住宅テナントにおける賃料減額はありません。飲食店などの店舗テナントは影響を受けていますが、賃料の支払猶予が1件、解約が2件と、影響は限定的です。

ヘルスケア施設については、ほぼ計画どおりに推移しています。保有施設でのコロナウイルスの感染もなく、安定的な運営ができています。一部の施設で新規入居者が減少したり、緊急事態宣言に伴い、都道府県知事からの利用自粛要請が出た短期入所や通所サービスを行なっている施設で若干の影響が受けたものがありますが、影響は限定的です。

宿泊施設は大きな影響を受けています。保有する2物件は、国内ビジネス客を主な対象としたビジネスホテルであり、コロナウイルスの感染が拡大した3月も80パーセントを超える稼働率を維持できていましたが、緊急事態宣言の影響により、4月、5月の稼働率は大きく低下しました。

6月以降、稼働率は徐々に回復していますが、宿泊単価は引き続き厳しい水準となっています。ホテルオペレーターとは、5月から7月の賃料を一部減額し、減額した分を11月以降、通常賃料に上乗せし、分割して支払うことで合意していますが、ホテルの運営は当面厳しいものが継続するものと予想しています。

業績への影響は右下をご覧ください。2020年7月期は、ホテル賃料の減額により、2,000万円の減収となりました。業績予想においては、コロナウイルスの影響が当面継続するという想定のもと、保守的に、2021年1月期で7,200万円、7月期で7,800万円の減収を織り込んでいます。仮に、想定を上回る減収が発生した場合でも、23億円、一口当たり2,400円超の内部留保を活用して分配金を維持する方針です。

ポートフォリオ構築方針と外部成長

6ページで、外部成長について説明します。東京経済圏の賃貸住宅を中心に、新規投資を行なう方針に変更はありません。2,500億円のポートフォリオの過半が東京経済圏の賃貸住宅ですが、この比率を上げていくこと、それから、下段に居住用施設での地域割合のグラフがありますが、東京経済圏比率は目標の70パーセントにほぼ到達しています。この比率も引き続き上げていきたいと思います。

売買マーケットは、徐々にコロナウイルス感染拡大前の状況に戻りつつありますが、安定したキャッシュフローが見込まれる居住用施設、物流施設は、投資対象として需要が高まっています。ホテル、商業施設への投資の減少が見込まれる中、住宅、物流施設へ投資資金が振り向けられており、住宅については、引き続き厳しい取得環境が続いています。

このような状況ですが、右上に記載のとおり、新規物件の取得も行なっています。KDXレジデンス市川のように、比較的競合の少ない小ぶりの物件、個人からの物件取得など、取得象を工夫することに加え、物件探索エリアを広げて、東京経済圏での物件取得を継続します。

テレワークのさらなる浸透により、都心への通勤回数の減少が予想されます。住宅の選び方も変化して、通勤に便利な立地だけではなく、住環境や部屋の広さも重視されると予想しています。都心部の物件だけでなく、首都圏郊外の賃貸住宅にも目を向けて物件の探索を行なっていく方針です。

パイプラインとしては、記載の4物件、約100億円分の資産があります。これら以外にも現在取得交渉中のものが複数あります。なお、今後のホテル投資については慎重に対応したいと考えています。

分配金の推移と内部留保の活用方針

7ページで、1口当たり分配金、DPUについて説明します。2020年7月期は、当初予想どおりの4,065円となりました。2021年1月期、7月期の予想は、4,066円、4,067円です。KDRでは、合併以降、物件売却益、内部留保の活用により増配を続けていますが、巡航DPUが順調に伸びていること、十分な内部留保があることから、今後もこの累進的配当政策を継続します。

巡航DPUについてはグラフの青い部分になりますが、合併以降、年率4パーセント程度の成長を実現しています。2021年7月期は、コロナウイルスの影響がなければ、かねてより目標としている4,000円を超えています。内部成長、外部成長、財務戦略により、まずは巡航DPU4,000円を達成すること、次に、内部留保の取り崩しなく増配できるようになることを目指します。

2020年7月期(第17期)の実績

続いて、2020年7月期の決算についてご説明します。9ページをご覧ください。左から、2020年1月期の実績、2020年7月期の当初予想、実績となります。まず賃貸事業収入ですが、前期比、2億3,200万円増の77億400万円となりました。

前期からの増減要因は、中央のボックスをご覧ください。平均稼働率は96.0パーセントと、前期からやや低下しましたが、賃料増額等により、既存物件で増収、公募増資による物件取得により、賃貸事業収入は大幅に増加しました。

営業収益は、前期比3億700万円増の83億7,400万円となりました。物件取得に伴い営業費用も増加しますが、営業利益は2億800万円、当期純利益は1億9,400万円の増益となりました。内部留保3,800万円の取り崩しを行ない、一口当たり分配金は、予定どおりの4,065円となります。

当初予想からの増減については、右側のピンク色のボックスをご覧ください。賃貸事業利益は、稼働率が想定を0.5ポイント下回ったことから、住宅の既存物件で4,400万円の減収、ホテルの一時的な賃料減額で2,000万円の減収となりました。その他、賃貸事業収入は予想より増加しており、営業収益は、当初予想比3,400万円減となりました。

営業費用では、新規契約が想定を下回ったことから、PMフィーなどの建物管理費、リーシング関連コストが減少、コロナウイルスの影響で修繕工事の先送り、エンジニアリングレポートの再取得を延期したことなど、営業費用は予想費7,400万円減となりました。結果として、営業利益で3,900万円、当期純利益で4,500万円の増加となりました。増益となった分、内部留保取り崩し額を減少させています。

2021年1月期(第18期)及び2021年7月期(第19期)の収益予想

10ページが業績予想となります。ページ左側が、2021年1月期の業績予想と増減要因です。賃貸事業収入ですが、住宅の想定稼働率は、前期並みの96.0パーセントを想定していますが、賃料増額等により、既存物件で増収を見込んでいます。新規物件取得による増収もありますが、コロナウイルスによる減収を7,200万円見込んでおり、賃貸事業収入は、前期比1億2,200万円増の78億2,600万円を見込んでいます。季節的な要因で、その他、賃貸事業収入が減少、不動産売却益が剥落することから、営業収益は、前期比400万円減の83億6,900万円を見込んでいます。

費用面では資産運用報酬の増加、前期から積み残した修繕費などの影響で、営業費用は前期比1億1,600万円の増加となり、営業利益は、前期比1億2,000万円減、当期純利益は、前期比1億5,800万円減を見込んでいます。減益の主な要因は、物件売却益の剥落、コロナウイルスの影響によるものであり、一番下の行に記載しているとおり、NOIは前期比6,900万円増となっています。

一口当たり分配金は、内部留保、1億8,900万円の取り崩しを行ない、前期比1円増の4,066円を予定しています。

続いて、ページ右側、2021年7月期の業績予想を説明します。賃貸事業収入ですが、賃料増額、稼働率の上昇により、既存物件で5,400万円の増収、コロナウイルスの影響を前期並みに見込み、賃貸事業収入は、前期比5,700万円増を見込んでいます。季節的な要因で、その他賃貸事業収入が増加、リーシング関連コスト等も増加します。

営業利益で、前期比6,400万円増の44億1,300万円、リファイナンスによる支払い利息の減少もあり、当期純利益は、前期比8,200万円増の37億3,100万円を見込んでいます。一口当たり分配金は、前期比1円増の4,067円を予定しています。

居住用施設の稼働率推移

続いて、13ページ以降で物件の運営状況について説明します。13ページは、居住用施設の稼働状況です。緊急事態宣言による外出自粛の影響により、4月、5月は新規契約が想定よりも少なく、稼働率は低下しましたが、6月以降は改善傾向にあります。東京経済圏で6月に稼働率が低下しているのは、6月末に新築のKDXレジデンス三鷹を取得した影響です。

2020年7月末のポートフォリオ全体の稼働率は95.3パーセントですが、KDXレジデンス三鷹を除くと95.8パーセントで、前年同月より0.6ポイント低い水準となっています。KDXレジデンス三鷹の稼働率は、8月末時点で35パーセント程度まで上昇し、リーシングは順調にスタートしています。

居住用施設の賃料動向

14ページをご覧ください。2020年7月期における住宅ポートフォリオの賃料増減率は、新規賃料が前期から1.0ポイント増の4.0パーセント、更新時が0.1ポイント憎の0.6パーセントの上昇となりました。

右側のグラフですが、新規賃料の伸びにより、ポートフォリオの平均坪単価は、直近1年では0.58パーセント上昇しています。マーケット賃料の上昇によりレントギャップは拡大しており、前期から0.2ポイント増の2.8パーセントとなりました。

運用の状況 -居住用施設①-

15ページは、左が新規契約時及び契約更新時の賃料増減率の推移、右はそれぞれの増減件数割合の推移です。賃料増加率は順調に伸びており、新規及び更新ともに過去最高の水準となりました。2021年1月期については、稼働率を維持するため、上昇率は、2020年7月期よりも増加率が低くなる可能性がありますが、大きく落ち込むことはないと想定しています。契約更新時の賃料上昇率は0.6パーセントの伸びとなりました。更新時の賃料減額はありません。更新テナントの18パーセントで賃料上昇となりました。

運用の状況 -居住用施設②-

16ページ、左側のグラフは、新規契約時、契約更新時の月額賃料の増加額を表しています。新規で370万円、更新で約100万円、合計で、約470万円の純増となりました。1期当たり2,800万円、年間で5,600万円の増収効果となります。右上が退去率のグラフとなりますが、2020年7月期は想定を若干上回り、11.9パーセントとなりました。

運用の状況 -ヘルスケア施設-

17ページは、ヘルスケア施設の運営状況です。コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2020年前半は入居率が若干低下していますが、オペレーターの収支の影響は軽微であり、引き続き安定した運営ができています。

財務の状況 1/2

19ページ以降で、財務の状況について説明します。平均借入残存年数は4.2年となり、平均金利は0.96パーセントに低下しました。KDXレジデンス三鷹の取得資金は、取得決定時には手元資金による決済を予定していましたが、手元資金を厚くするため、借入を行ない決済をしています。

それでも、総資産有利子負債比率LTVは、9月見込みで49.8パーセントと、巡航水準である50パーセントから55パーセントを下回っています。借入余力は、LTVを55パーセントまで引き上げた場合、約318億円です。

財務の状況 2/2

20ページをご覧ください。コミットメントラインは再設定、もしくは期間延長を行ない、引き続き45億円の枠を確保しています。新規借入、及びリファイナンスについては、長めの期間の資金調達を行なっています。2020年1月期から2022年7月期にかけては、比較的、金利が高いローンのリファイナンスを予定していますので、財務コスト削減によるさらなるDPU向上を目指します。

サステナビリティ① – 環境 (Environment) への取組み –

最後に、23ページ以降でESGについて説明します。環境関連の取り組みとしては、今期、新たに5物件でGreen Building認証の取得を行なっています。GRESBについては、今年も継続参加しています。エネルギー使用量の削減目標も設定しており、目標達成に向け、グリーンリース、LED導入等に取り組んでいます。

サステナビリティ② – 社会 (Social) への取組み –

24ページは、サステナビリティのページです。日本は少子高齢化、生産年齢人口の減少など、人口構造を巡る課題に直面していますが、KDRは、ヘルスケア施設保有を通じた社会貢献を目指しています。右上に記載のとおり、昨年には、J-REITで初となるソーシャルボンドの発行を行なっています。また、5月には、ヘルスケア施設のオペレーター支援としてマスクの無償配布を行ないました。

サステナビリティ③ –ガバナンス (Governance) への取組み –

25ページは、ガバナンスに関するページです。2020年7月期から新たな資産運用報酬体系が導入されています。1口当たり利益、株価に連動する報酬体系となったため、引き続き投資主価値向上を意識して運営を行ないます。以上で説明を終わらせていただきます。

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