7月に米国の空売りファンドが日本上陸
7月8日付けの日本経済新聞に、企業の不正を見極め、企業の本質的な価値に比べて株価が割高な銘柄を“空売り”することで利益を追求するという米国の投資ファンド、グラウカス・リサーチ・グループが7月から日本株投資を開始することが報じられて話題となりました。
空売りとは、信用取引における取引の1つで、証券会社(証券金融会社)から株を借りて売り、その後買い戻すことでその差額を得るという取引です。株価が下落する局面でも利益を出せる取引として、主に短期筋を中心に用いられています。個人投資家も、証券会社に信用取引口座を開設すれば取り扱い可能になります。
さて、その新聞記事報道から1か月半が経ちましたが、こうした空売りファンドによる日本株に対する売り推奨が2件公表されています。
最初の「強い売り推奨」の対象は伊藤忠商事
まず1件目は、前述のグラウカス・リサーチが7月27日に伊藤忠商事(8001)を「Strong Sell Rating(強い売り推奨)」として、目標株価を631円(7月26日終値1,262円の半値)としました。
翌日、伊藤忠の株価は急落し、一時は前日比▲10%超安い1,135円50銭(年初来安値)を付けています。ただ、その後さらなる下落基調は続くことなく、1,150~1,230円のレンジで推移しています。
631円という目標株価が妥当なのかどうかは分かりませんが、株式市場ではまだ十分に消化されていないようです。しかし、この売り推奨レポートが出て以降、同社の株価が停滞していることから、同社に対する懐疑的な見方が出ているとも考えられます。
2件目はCYBERDYNEに対する極端に低い目標株価の設定
続く2件目は、同じ米国の空売りファンドであるシトロン・リサーチが8月16日に、東証マザーズ上場の精密機械メーカーCYBERDYNE(7779)に対して、事実上の“売り推奨”となる目標株価を付けたことです。CYBERDYNEはロボットスーツで大きな注目を集める新興企業です。
シトロン・リサーチは、目標株価を300円(8月15日の終値2,077円、約▲85%の下落リスク)に設定し、株式市場でも大きな話題となりました。
このレポートが公表された翌日、CYBERDYNEの株価は急落し、一時は前日比▲11%安となりました。しかし、CYBERDYNEの場合は伊藤忠商事とは異なり、翌日、翌々日も株価の下落基調が続いている点が異なります。8月18日も一時は前日比▲13%安となる場面が見られており、終値(1,719円)ではやや切り返したものの、レポート公表後の下落率は▲17%超となっています。
極端な売り推奨を1つの意見として受け止める寛容さが必要
こうした空売りファンドが設定する、やや極端な目標株価に対しては、投資した株式保有者から訝る声が上がっているのは確かでしょう。しかし、彼らには彼らなりの根拠に基づいて、そうした目標株価を付けています。
恐らく、今後もこのたぐいの売り推奨、とりわけ、大きな乖離の目標株価を設定した売り推奨レポートが出てくるでしょう。個人投資家の皆さんにも、こうした売り推奨を1つの投資意見として受け入れて欲しいと思います。それを信じるか信じないかは、まさしく、自己責任ということになるのです。続く3件目以降にも注目したいと思います。
LIMO編集部