台湾にとって、中国は台湾海峡を挟んだ“西からの脅威”、南シナ海からの“南からの脅威”というイメージだったが、尖閣諸島となれば“北からの脅威”にも直面することになる。

また、尖閣諸島は当然ながら石垣島などにも近く、米軍が駐留する沖縄本島を含め、米国や日本を一層けん制することが可能となる。

尖閣諸島の南シナ海化

さらに、西太平洋への影響力拡大を狙う中国としては、尖閣諸島は大陸からより遠くに離れた都合の良い場所でもある。第一列島線を確保するという意味でも戦略的に重要な拠点にある。

簡単に言うと以上のような理由があるが、それを達成するためにも、中国には尖閣諸島を南シナ海化したい狙いがある。

南シナ海の南沙諸島や西沙諸島では、軍用滑走路の建設など中国による軍事拠点化が一方的に進んでいるが、中国には尖閣諸島の南シナ海化を押し進め、そこを拠点に米国や日本をけん制するだけでなく、台湾侵攻や西太平洋進出のための最前線基地にする狙いがある。

しかし、そう簡単に上手くいかないことは中国も十分承知のはずだ。よって、中国が取る戦術は、小さな行動を積み重ねて徐々に自らに有利な環境を作っていく“サラミ戦術”である。

中国は持久戦を想定している。尖閣諸島近海で中国公船が航行を繰り返すのはその小さな行動の一部であり、尖閣諸島の問題は長期的に続く。中国が狙っているのは、海上保安庁や自衛隊、米軍の“疲労、疲弊”である。

今後とも中国による日本や米国を“疲れさせる戦術”は続く。

和田 大樹