この記事の読みどころ
- ブリヂストンは減収・減益となった上期決算発表時に、2016年12月期の業績見通しを下方修正しました。
- 円高の影響もさることながら、超大型タイヤ需要の回復遅れも大きな要因と見られます。
- 昨年5月のピークから一時は約▲40%下落した株価の回復には、新興国経済の底打ちが必要不可欠と言えます。
ブリヂストンは世界シェアトップのタイヤメーカー
ブリヂストン(5108)は世界最大のタイヤメーカーです。2000年代半ばまで、ミシェラン(仏)、グッドイヤー(米)とともに世界3大タイヤメーカーという位置付けでした。
しかし、業績不振に陥ったグッドイヤーが事業縮小を行った結果、現在はミシェランとブリヂストンの2強時代となっており、直近数年間ではブリヂストンが世界シェアトップをキープしていると見られます。
ただ、世界最大と言っても、ブリヂストンの市場シェアは14%強であり、世界を牛耳っているわけではありません。上位10社の合計シェアは約63%で、市場シェア1%未満の地場メーカーは、中国やインドなどの新興国を中心に星の数ほどあると言われています。
上期決算は減収・減益、2016年12月通期予想も下方修正
さて、そのブリヂストンが8月9日に発表した2016年12月期の上期決算(1-6月期)は、なかなか厳しい内容だったと言えます。上期の実績は、売上高が対前年同期比▲11%減、営業利益は同▲8%減、親会社株主に帰属する四半期純利益は同▲15%減の減収・減益となりました。原材料価格下落のメリットはあったものの、円高や販売構成の悪化などで帳消しになった形です。
また、2016年12月通期の業績見通しも下方修正しており、売上高および各利益とも、従来予想に比べて約▲10~▲17%の減額修正を強いられました。
今回の下方修正は、前提となる為替レートの見直しが大きな理由の1つです。年間の前提レートは、期初計画の115円/ドルから105円/ドルへ、同じく127円/ユーロから117円/ユーロへ各々変更しており、これによる利益減は確かに大きいと言えます。ただ、原材料価格も下落基調が続いており、円高修正だけで全てを説明することはできません。
業績に大きな影響を与える超大型タイヤとは?
円高の影響に隠れがちですが、もう1つの大きなマイナス要因は、売上構成の悪化です。これを簡単に言うと、超大型タイヤの需要回復の遅れとなります。
ここで言う“超大型タイヤ”とは、街中を走っている大型トラックに装着されるタイヤよりさらに大きなタイヤ、具体的には、建設機械や鉱山機械用のタイヤを指しています。
ちなみに、大型トラック用タイヤの外径は約1.2~1.5メートルですが、建設機械・鉱山機械用の超大型タイヤの外径は約4メートルです。もちろん、種類によって差異はありますが、その違いがお分かりいただけるでしょう。
この超大型タイヤ需要は、新興国経済の発展とともに伸長し、特に、中国とASEANなどで拡大しました。そして、極めて突出した高採算商品である超大型タイヤの販売増加は、ブリヂストンを始めとしたタイヤ各社の収益拡大を大きく牽引しました。
また、前述した中小の地場メーカーが有する生産設備では、超大型タイヤの生産が不可能であることも追い風だったと言えます。
超大型タイヤ需要は急減が続き、回復の兆しが見えない
しかし、新興国経済のスローダウンにより、この超大型タイヤの需要が急減しており、タイヤメーカーの業績に大きな影響を与えています。しかも、需要回復の兆しは、全くと言っていいほど見えていないのが実情です。今回のブリヂストンの下方修正を見ても、この影響が色濃く出ています。
実は、この影響は2年くらい前からかなり顕在化していたのですが、円安メリットで打ち消されていました。円安メリットが消失した今、改めてその影響の大きさに目を向ける必要がありそうです。
株価は昨年のピークから一時は▲40%下落
決算発表翌日のブリヂストンの株価は急落し、終値は前日比▲6.8%安の3,370円となりました。また、昨年5月に付けた5,182円(上場来高値)をピークに株価の下落基調が続いており、今年6月には一時3,000円台割れが目前となる3,089円まで下落しています。
株価回復のためには、円安転換も重要ですが、新興国経済に大きく依存する超大型タイヤの市場回復が必要不可欠と考えられます。
LIMO編集部