半導体用シリコンウエハーの需要は、新型コロナウイルスや米中対立などの不安要素がありながらも、安定的に推移している。主力の300mmウエハーは顧客在庫が上昇するなど、懸念材料はあるものの総じて堅調に推移。新型コロナによってもたらされた「Work From Home(WFH)」などの新たな需要を取り込んでおり、中長期的な視点でも高い成長が見込めそうだ。一方で、200mmは自動車・産業機器分野の市場低迷が響き、需給環境の軟化は2020年後半も続きそうだ。
出荷面積は19年第4四半期を底に回復基調
SEMIによれば、20年第2四半期のシリコンウエハー出荷面積は、前四半期比8%増の31億5200万平方インチと大きく増加。四半期ベースでは19年第4四半期を底に回復基調にあり、過去ピークに迫る水準となっている。直近の国内大手2社の四半期業績も堅調で、信越化学の売上高は前四半期比3%増、SUMCOは同4%増の伸びを見せた。
メモリー分野ではハイパースケーラーを中心としたデータセンター投資が活発化したほか、WFHによるパソコン用SSDの需要拡大もウエハー出荷を牽引した。ロジックにおいては、米中対立の影響でファンドリー顧客の一部で緊急的に調整が発生したが、その後調達を再開。現在は下期の先端ロジック需要にあわせて調達意欲が増している状況だという。
手元在庫を積み増す動きも
ただ、今回の数量増は実需の拡大に加えて、顧客側での在庫確保の動きも影響していると見られる。在庫水準が従来の1カ月から1.5カ月程度に上昇したことで、今後の需給環境を悪化する声も聞かれるが、半導体メーカー側では新型コロナや米中対立のリスクを考慮して、手元在庫を積み増す動きがウエハー以外の部材でも散見されている。
今のところ、極端な数量調整などは行われないもようだが、メモリーに関しては最終製品の需要次第では軟化する可能性がある。SUMCOも7~9月期の300mmウエハーの需要見通しについて、メモリーは弱含みで推移するとみている。メモリーのうち、DRAMはデータセンター向け需要が一服したほか、スマートフォンなどモバイル向けの需要に力強さがないのが実態だ。
200mmは新型コロナ影響が顕在化
200mmウエハーは自動車や産業機器向けの需要ウエートが高く、新型コロナの影響を受けて需要が低下している。さらに、200mmは300mmと異なり、スポット契約が主体となっており、市況悪化時は価格下落を引き起こしやすい。
300mm同様に、4~6月期はサプライチェーン上のリスク回避から在庫を積み増す動きが一部で見受けられ、下期はその反動減が危惧されている。自動車用でシェアの高い独シルトロニックも7~9月期は200mmの需要が低下すると見ているほか、SUMCOも今後数量は減少すると予測する。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳