役に立たないから、減給しよう
美和さんの勤務先は、家族経営の金型製造会社。入社した頃は、まだ会社が軌道に乗っておらず、仕事もあまりない状態。だからか、人間関係も殺伐としておらず、家族経営ならではの密接な人間関係に温かみを感じることも多かったそう。「私は事務を担当していました。事務職をやっていたのは私と、30歳の女の子の2人だけ。社長もフランクで話しやすかった。専務を務めていた社長の奥さんは、プライベートな悩みもよく聞いてくれて。こんな女性になりたいって、憧れたこともありました。」
しかし、外注先が増えたり、地元の大手メーカーの下請けになったりしていくと、社長の態度に変化が…。「新しく従業員が入社してくると、まず社長はすごく褒めるんです。でも、何か社長の勘に障るようなことを1回でもすると、途端にみんなの前でこき下ろされてしまう。」
美和さんが事務作業をしていた部屋では社長や専務が打ち合わせをすることも多かったため、従業員の悪口を言う社長たちの姿を目にし、嫌な気持ちになったことも。「社長と専務が笑いながら、『あいつは使えないから減給しよう』って言っている姿を見た時、人間のどす黒い部分を目にしたような気がして、私の心も暗くなりました。」
社長や専務の悪口の矛先は、もっぱら従業員の中で唯一60歳を過ぎていた男性社員に向けられていたそう。「自分よりも年上だったり賢そうだったりする人を貶めて、従順な年下の従業員だけを褒めちぎる。そんなワンマン会社でした。」