そして、カリフォルニア州にある日本人が経営する店でも、「店を爆破する、日本に帰れ、猿」などと脅迫じみた内容の紙を店の前に張られ、フランスでは留学中の韓国人男性が現地の白人の男3人組に殴られ重傷を負うなど、日本人や韓国人が同じアジア系ということで巻き込まれる事件も発生している。
これまで米国ではイスラム教徒やユダヤ教徒、黒人がヘイトクライムの標的になる件数が多く、それに比べるとアジア系への事件は少なかった。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、明らかにアジア系への事件が増えており、最新の統計は出ていないものの、おそらく来年に発表されるヘイトクライムの統計では、アジア系への事件数が急増しているはずである。
米中対立の影響を免れない日本
一方、11月の秋の大統領選まで、既に100日を切っている。トランプ大統領もバイデン候補も十分な選挙戦を送ることができないでいるが、両者ともこうした国民感情を反映する形で反中姿勢を展開していくことになる。
現在、バイデン候補が支持率で10%前後リードする有利な状況にあるが、仮にバイデン候補が勝利しても、中国への厳しい姿勢を貫き、対立した米中関係が続くことになると予想される。
米当局が先月30日に発表した4-6月期のGDP速報値は、前期比年率換算で32.9%の減少に転じたが、米市民の社会経済的不満がどう対中感情に影響するかも注視する必要がある。
そして、米市民の対中感情は日本の安全保障や経済にも影響する問題である。今後の市民レベルの米中関係の行方が懸念される。
和田 大樹