そして、遺族年金の受給要件については、子の有無や年齢条件など、加入している年金により要件が異なります。

まず、遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金、共通の要件として、年金加入者に生計を維持されていた遺族(受給対象者の年収は850万円未満)という条件があります。ここから国民年金、厚生年金それぞれの要件について見ていきましょう。

(1)妻が国民年金に加入の場合

妻が国民年金の場合、生計を維持されていた遺族の中で

  • 子のある配偶者

のみが遺族基礎年金の受取対象者となります。「子」は18歳までの子ども(または、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子ども)に限定され、夫婦間に子どもがいない場合は対象外です。

また、遺族基礎年金を受給できないときでも、代わりとして遺族基礎年金から「死亡一時金(※4)」を受け取ることができますが、金額的には加入年数に応じて12万円から32万円の範囲となります。

(2)妻が厚生年金に加入の場合

遺族厚生年金については、子どもがいない夫婦でも受給可能な場合があります。受取り対象者は、

  • 子、孫
  • 55歳以上の夫・父母・祖父母(支給開始は60歳から)

となり、遺族が「妻」の場合と「夫」の場合により要件に大きな違いがあります。

妻の場合は被扶養者であれば受給対象(ただし、30歳未満で子どもがいない妻の場合は、5年間の有期年金)となりますが、遺族が夫の場合、以下のように年齢面などの要件があります。

  • 妻によって生計を維持されていたこと
  • 妻が亡くなった時に年齢55歳以上
  • 夫が基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる

この要件に該当した場合、60歳から支給を受けられます。

また、さらなる相違点として、遺族が妻の場合の「中高年寡婦加算」があります。遺族の妻が年齢条件等の要件に該当した場合、遺族厚生年金に加算があるのです。

《中高齢寡婦加算》

  • 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
  • 40歳当時遺族基礎年金を受け取っていた妻が、子どもが18歳((1級・2級の障害の子どもの場合は20歳)に到達したため、遺族基礎年金を受給できなくなった時

これらの条件を満たす場合、遺族厚生年金に年額58万6300円(遺族基礎年金の4分の3)の加算があります(2020年度※5)
。遺族が夫の場合は、この制度は適用されません。

このように、公的保障の制度をもとに、家庭の状況に合わせて、万が一の事態を想定していくことが大切だといえるでしょう。

(※3)「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』」金融庁
(※4)「死亡一時金」日本年金機構
(※5)「年金給付の経過措置一覧(令和2年度)」日本年金機構