やや閑散としていた決算説明会

経営再建中のシャープ(6753)は、2016年7月29日に2017年3月期Q1(4-6月期)決算を発表しました。筆者は同日開催された証券アナリストおよび機関投資家向け決算説明会に参加しましたが、会場は空席が目立ち、思ったより参加者が少なかったことが気になりました。

もちろん、7月29日は決算発表のピークであり、シャープと同じ時間帯にはソニー(6758)や日立製作所(6501)も決算説明会を開催していたことが、参加者が少なかった最大の要因だとは思います。しかし、それ以外にも、いくつか理由があるのではないかと筆者は推測しています。

まず第1に、債務超過となっているシャープは、8月1日に東証1部から2部へ指定替えとなるためです。

必ずしも東証2部銘柄は注目されないということではありません。ただ、東証1部の指数に連動するファンドを運用しているファンドマネージャーやアナリストにとっては、2部に指定替えとなった銘柄を詳細に調査する必要性は低下します。そのため、おそらく彼等は日立かソニーの説明会に参加したはずです。

第2は、決算説明会の参加者数は企業の注目度を計るバロメーターであるため、“話題性”が低下したことも一因ではないかと考えられます。

業績が急速に悪化した昨年から2016年3月期決算まで、シャープはある意味で必要以上に注目されていました。その後、鴻海精密工業の傘下で経営再建を行うことが決まり、残る関心事が中国での競争法の認可取得がクリアーされた後、出資が行われるタイミングだけに絞り込まれてきたことが影響しているのではないかと考えられます。

第3は、7月26日と27日に複数のメディアからQ1決算について営業赤字が大幅縮小という報道が行われていたためです。ちなみに、ソニーや日立については、そのような観測報道はありませんでした。このことも、シャープの決算説明会への参加のインセンティブを下げた要因であると考えられます。

それほど悪くはなかったQ1決算

さて、そのシャープが発表したQ1決算ですが、事前の報道通り、営業損失は▲25億円の赤字と、前年同期の▲288億円の赤字から大幅に減少していました。

セグメント別に営業利益を見ると、構造改革効果を主因に、コンシューマエレクトロニクス(液晶テレビ、携帯電話、白物家電等)が黒字転換し、デイスプレイデバイス(液晶)も中小型液晶を中心に赤字が縮小していました。また、エネルギーソリューション(ソーラー)も、体質改善処理(ポリシリコン追加評価引当金)を除くと赤字は縮小していました。

一方、ビジネスソリューション(複写機)は海外の流通在庫を適正化した影響で減収・減益となっていましたが、営業利益率は8%と、比較的高い採算性を維持できていました。

このように、今回の決算は債務超過額こそ2016年3月末時点の▲312億円から6月末には▲750億円へ増加はしていたものの、それを除くと構造改革の一定の進展が確認できる内容であり、それほど悪い決算ではなかったという印象が持てました。

Q2(7-9月期)の決算説明会はどうなるか

鴻海精密工業は、2016年4月2日にシャープを3,888億円で買収することを決定していますが、この契約における払込期限は2016年10月5日までとなっています。競争法の審査がそれまでにクリアーされることを前提にすると、次のQ2決算発表時点では増資は完了しており、高橋興三代取締役社長は退任し、鴻海精密工業主導での新経営体制が発足していることになります。

「スピード経営」を強みとしている鴻海精密工業ですので、Q2決算では両社のシナジー効果を最大限に発揮させるための新経営戦略が公表される可能性も想定できます。

しばらくは競争法審査の遅れにやきもきとさせられる展開が想定されますが、予定通り10月5日までに出資が行われた場合、次の決算説明会は、新経営戦略への注目から、立ち見が出るほどの活況になる可能性も頭の片隅に入れておきたいと思います。

 

LIMO編集部