半導体受託製造(ファンドリー)大手の台湾TSMCは、2020年(暦年)通年の売上高成長率の見通しを引き上げた。従来は前年比10%台半ば~後半と予想していたが、これを同20%以上に上方修正した。5GスマートフォンならびにHPC(High Performance Computing)関連の需要拡大が業績を牽引する。米国政府によるファーウェイへの規制強化によって、業績低迷が懸念されていたが、それを払拭するかたちとなった。
顧客在庫は高水準継続
同社はメモリーを除く半導体市場の見通しを前年比横ばい~微増、ファンドリー市場を同10%台半ば~後半の成長と見込んでおり、ともに3カ月前の従来ガイダンスを引き上げている。顧客の在庫水準は通常の季節性を上回るものの、サプライチェーン上のリスク回避、5Gスマホの市場投入に向けた在庫確保のため、20年下期はこの高い水準が続くと予想する。
なお、スマホの20年グローバル販売台数は、従来の1桁台後半の減少から10%台前半の減少に引き下げたものの、5Gスマホの構成比は10%台半ばから10%台後半に引き上げている。
米国政府によるファーウェイへの規制に関して、5月15日以降は同社からの新規受注は受け付けておらず、9月14日以降は、ウエハー出荷は行わないとしている。また、現在の規制でASSPのような標準製品の出荷を禁止されているわけではないとしており、ハイシリコンが設計するASIC以外は規制対象になっていないことを示唆した。
設備投資も引き上げへ
直近の20年4~6月期業績は、売上高が3107億台湾ドル(前四半期比横ばい/前年同期比29%増)、営業利益は1311億台湾ドル(同2%増/同72%増)となり、売上高はガイダンスのほぼ上限値となった。5GインフラおよびHPC分野の好調がその他セグメントの不調を相殺した。7~9月期はドルベースで112億~115億ドルを見込んでおり、中心値は前四半期比で9%増となる。
設備投資は1~6月期累計で106億ドルを実施。通年ベースでは当初150億~160億ドルを計画していたが、今回これを160億~170億ドルに引き上げた。増額分は先端プロセス向けの前工程投資に充てるという。なお、最先端プロセスとなる5nmはすでに生産を開始しており、20年中に売上高構成比は8%程度になる見通し。20年下期は5GスマホおよびHPC向けに需要が旺盛であるという。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳