2020年5月28日に行なわれた、日立建機株式会社2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:日立建機株式会社 代表執行役 執行役社長兼CEO 平野耕太郎 氏\n日立建機株式会社 執行役 営業本部長 先崎正文 氏\n日立建機株式会社 執行役財務本部長兼CFO 塩嶋慶一郎 氏

新型コロナウィルス感染症(COVID–19)の対応方針

平野耕太郎氏(以下、平野):平野でございます。本日はお忙しい中、弊社の決算説明及び中期経営戦略の方向性についての説明会にご参加いただきありがとうございます。

まずはじめに、新型コロナウィルス感染拡大により、困難な生活環境におられるみなさまに心よりお見舞い申し上げます。また、医療関係者や国民の生活環境維持に従事されているみなさまに心からの敬意を表します。新型コロナウィルス感染拡大の影響とはいえ、決算発表日程を予定していた4月27日から本日へ変更し、さらにはこのような電話会議形式での発表になったことに関してお詫び申し上げます。

まず、新型コロナウィルス感染拡大防止について、当社対応方針をご報告します。当社は各国政府の方針に基づき、感染拡大防止に努めています。3月初旬には、本社にグループ横断のコロナ対策本部を設置し、BCPの観点から情報収集と方針を作成し、感染防止対策をグローバルに推進しています。

そして、お客様、パートナー、従業員とその家族をはじめとするステークホルダーのみなさまの安全の確保と感染拡大防止を最優先に取り組んでいます。

当社は、働き方変革ということで、従来からテレワークを推進していましたので、ITインフラも整備されていました。このため、管理部門等の直接生産に携わらない従業員は、可能な限りグローバルで在宅勤務・テレワークを徹底しています。また、生産現場においては感染防止策を徹底した上で、国内外の主要生産拠点の生産活動を継続しています。

COVID–19について–新車需要・販売等への影響

次に、新型コロナウィルスによる需要・販売等への影響についてお話をします。新型コロナウィルスの影響が世界各地に広がり、一般建機については、米州、欧州、アジア、アフリカなど、全体として大きく減少を見込んでおり、終息時期が見通せないなど、先行きの不透明感があります。

ただ、中国においては、全面的に経済活動が再開しており、需要についても小型機から回復し、現在は通常の環境に戻りつつあります。マイニング機器は世界的な景気不透明感から投資は抑制傾向となっており、新車需要は減少するとみています。

稼働状況は一部地域で停止となっているものの、社会インフラを支える事業(Essential Business)として、引き続き稼働している地域も多くあり、地域によって差がありますが、マイニング鉱山現場の稼働への影響は限定的であると認識しています。

当社は感染防止の観点からも、遠隔で機械をモニタリングし、故障を予兆する全自動システム「ConSite」を通じて、お客さまの安定稼働をサポートするとともに、部品サービスを引き続き提供していきます。

今後の方針について

次に、今後の方針についてご説明します。新型コロナウィルスが事業活動にどのような影響を与えるかは不透明であり、現時点で市場の先行きの適正かつ合理的な算定は困難だと考えています。このため、今年度を初年度とする中期経営計画の施策詳細、数値目標の発表については、今回は見送ることとします。本日は決算概況のご説明のあと、中期経営計画の方向性についてのみお話をします。このような状況下、本年度は3つの方針で事業に取り組んでいきます。

まず、収益力強化に向けた緊急対策です。投資案件を厳選し、後ろ倒し可能な計画を先送りします。さらに、間接費の低減、コスト管理強化等をしっかりと行ない、この厳しい環境の中で事業体質を強化し、市況の好転の際には成長を加速させていきたいと考えています。

次に、今後の復調の兆しを注視し、生産調整による在庫適正化に継続的に取り組んでいきます。また、今回の新型コロナウィルスの影響は、工事現場が世界中でストップするなど、今までに経験したことのないような状況です。このような中で、2020年度の業績見通しを公表しますが、今後も業績に影響する事象があれば、タイムリーに情報を開示し、ステークホルダーのみなさまとの対話を重要視して継続していきます。以上で私のご説明を終わります。

油圧ショベル世界需要推移

先崎正文氏:先崎でございます。続いて、地域別市場環境と見通しについてご説明します。6ページをご覧ください。油圧ショベルの世界需要推移となります。2019年は前年比8パーセント減の21万6,000台となりました。新型コロナウィルスの影響も重なり、中国、アジア、アフリカでは、20パーセント弱の需要減少がみられましたが、日本、北米の需要は堅調に推移しました。

2020年度は新型コロナウィルスの影響で非常に不透明な状況にあるため、地域別では提示しませんが、油圧ショベルの全世界需要見通しは16万6,000台で、対前年23パーセント減と想定しています。新型コロナウィルスの影響の終息や、各国の景気刺激策の効果などによって需要が想定より上振れする可能性も十分にあるため、どのような市況環境にも素早く対応できるように取り組んでいきます。

〈日本市場〉 第4四半期(20年1〜3月)

次に、地域別に第4四半期の結果などを中心にご説明します。7ページの日本市場をご覧ください。公共投資などは左上のグラフのように推移しています。需要においては、消費税増税の反動で、第3四半期の需要が一時的に落ち込んだものの、堅調な公共工事とレンタル需要に支えられた結果、第4四半期の油圧ショベルは前年と同水準まで回復し、ミニショベルとホイールローダは対前年8パーセント減まで回復しています。

〈欧州市場〉 第4四半期(20年1〜3月)

次に欧州市場です。2020年1月から3月期のユーロ圏のGDP成長率は急激な減少となりました。もともと下降局面にあった市況に加えて、ロックダウンなどの影響からフランス、イタリアの需要が減少し、油圧ショベルの需要は対前年18パーセント減、ミニショベルが3パーセント減、ホイールローダは2パーセント減となりました。

当社の機械に搭載している「Global e–Service」のデータによると、3月後半から5月前半にかけて機械の稼働率が一部の国で悪化しましたが、その後もとの水準に戻りつつあります。

新車販売に関しては、建設セクターの各プロジェクトは従来どおりの計画のため、新型コロナウィルスの影響は限定的と考えています。しかし、大きく伸びてきた欧州のマーケットが調整局面に入ると想定されることなどから、需要は年度前半には減少し、後半から回復してくると想定しています。

〈北米市場〉 第4四半期(20年1〜3月)

次に北米市場についてです。1月から3月において、住宅着工件数は堅調だったものの、米国GDPは大きなマイナス成長を記録しました。一方、建設プロジェクトに関しては、多くの州で必要不可欠として継続されており、油圧ショベルの需要は対前年同期比4パーセントの微減、ミニショベル需要は2パーセントの微増となりました。

2020年度は、住宅着工件数の動向や景気後退に伴う買い控え、代理店の在庫レベルの抑制などのリスクを念頭に、経済活動再開後の需要動向を注視していきます。

〈中国市場 〉 第4四半期(20年1〜3月)

次に中国市場です。1月から3月期のGDP成長率、固定資産投資はともに大幅減となりました。油圧ショベル需要については、第4四半期の国産機を含めた全需要で前年同期比14パーセントの減少です。内訳として、国産は2パーセントの減少、外資は31パーセントの減少となりました。地域別の需要やクラス別の需要構成比はスライドの右側をご覧ください。

〈補足 : 中国市場〉

11ページは中国市場の補足になります。外資のみの月別の油圧ショベルの需要推移においては、1月と2月で大きく前年を割り込んだものの、春節商戦の後ろ倒しによって、3月は14パーセント減まで回復し、4月は46パーセント増となりました。現時点では通常の需要環境に戻りつつあるとみていますが、引き続き、新型コロナウィルスのさらなる影響や中国中央政府による景気刺激策の展開を注視していきます。

〈アジア大洋州市場・インド市場〉 第4四半期(20年1〜3月)

12ページ目をご覧ください。アジア大洋州の油圧ショベルの需要については、石炭、パームオイルの価格低迷の影響を受けたインドネシア、タイ、マレーシアなどが低調で、全体では前年同期比15パーセント減となりました。

インドの油圧ショベルの需要は、昨年来の選挙後の需要回復の遅れに新型コロナウィルスの影響が重なり、前年同期比23パーセント減となりました。3月25日から始まったロックダウンは、段階的に経済活動が緩和される見込みのため、今後の経済刺激策と需要回復のタイミングを注視していきます。

〈ロシア・中東市場〉 第4四半期(20年1〜3月)

次にロシア・中東市場です。ロシアの油圧ショベルの需要は下方傾向にあり、前年同期比16パーセント減としています。中東の油圧ショベルの需要はリラ安の影響を受け、トルコは以前低迷、湾岸地区も引き続き低い需要レベルで推移しています。

〈マイニング機械〉 19年度(19年4月〜20年3月)

次にマイニング機械です。2019年度のマイニング需要は資源価格下落による影響で、対前年マイナス10パーセントの見通しです。クラス別では、燃料炭価格の下落により、インドネシア、ロシア、CISでの中小鉱山・コントラクタ向け機械質量100トンから250トンクラスのショベル需要が大幅に減少しています。大手鉱山向け機械質量300トン以上のショベル、積載荷重150トンを超えるトラックは、対前年で横ばいです。

2020年度は、新型コロナウィルスの世界経済への影響が見渡せず、鉱山各社は設備投資に慎重となり、需要が大幅に減少することを想定しています。

〈補足:BB Ratio〉

15ページ目、マイニング機械の受注状況のBB Ratioです。超大型ショベルは各クラスで100パーセント以上を維持しています。ダンプトラックは、新型コロナウィルスの影響による商談の中断や延期、大手マイン各社の設備投資計画の見直しなど、手持ち引き合いが受注に至らなかったため、100パーセントを割り込んでいます。

主要市場の状況

次に、2020年度の各市場の見方をまとめます。各市場とも新型コロナウィルスの感染の状況やその対策に左右され、市場環境は大変不透明です。その中で、中国がいち早く回復しつつあり、例年ほどの規模ではないものの、春節が数週間遅れたかたちで市場が動き出しています。また、オセアニア市場では、マイニングがEssential Businessに指定されており、我々のビジネスへの影響は比較的軽微と想定します。

他の地域は、おしなべて感染対策の早かった先進国で規制が緩和されていく方向です。日本においても緊急事態宣言が5月25日に解除されていますが、今後の市場の立ち上がりが第2波や第3波などによって腰折れにならないのか、変化に迅速に対応できるようにしていくことが必要だと考えています。

主要生産拠点の状況

次に新型コロナウィルス影響下での、主な当社生産拠点の最新状況です。中国、ロシア、インドの工場については、ロックダウンのあと各国の政府方針により、工場稼働を一時停止していましたが、ロックダウン継続中のインドを含め、現在では稼働を再開しています。よって、現在、世界のほぼすべての当社生産拠点は、感染防止対策を万全にした上で需要に見合ったフレキシブルな生産ができる状態にあります。また、調達先の複数化、拠点間の在庫融通などを従来より進めてきましたので、現時点でサプライチェーンに関わる大きな影響は出ていません。

《トピック》COVID–19拡大に伴う支援・対策(1)

18ページ目以降はトピックとなります。新型コロナウィルス感染拡大に伴う支援・対策のご紹介です。中国の上海の基金への寄付、また日本の厚生労働省にマスクなどを提供する支援を実施しました。

《トピック》COVID–19拡大に伴う支援・対策(2)

中国のSNSを利用した新商品のプロモーションライブ配信をご紹介します。多数の反響をいただき、今後も変化を先取りした営業活動をしていきます。

《トピック》ホワイトヘイブン社の鉱山でAHS稼働開始

次は20ページです。オーストラリアのWhitehaven Coal社のモールスクリーク石炭鉱山にて、AHS搭載のリジットダンプトラック6台が自立走行を開始しました。6月中に24時間年中無休の稼働を目指します。

《トピック》プロ野球6球団の公式承認モデルを発売

21ページ目は、プロ野球6球団の公式承認モデル発売のご紹介です。プロ野球が開幕となりますが、インフラ整備などで社会に貢献する全国のお客さまを、地域に根差すプロ野球球団とともに応援したいという思いを込めて実現しました。複数球団の同時コラボレーションは、建設業界で初の取り組みとなります。すでに30台の受注と多くの引き合いをいただいています。

《トピック》土量計測サービス「Solution Linkage Survey」ラインアップを拡充

22ページには「Solution Linkage Survey」のご紹介を掲載しています。

《トピック》業界初、建設機械のスマホ診断アプリを提供開始

23ページには、業界初となる建機診断アプリ「ConSite Health Check」のご紹介を掲載しました。これらを通し、今後もお客さまのライフサイクルコスト低減に寄与していきます。

連結決算の概要

塩嶋慶一郎氏:4月にCFOを拝任しました塩嶋でございます。どうぞよろしくお願いします。2020年3月期の決算ならびに2020年度業績予想の概要をご説明します。

まず、25ページの連結決算の概要をご覧ください。2019年度の売上収益は、当第4四半期の新型コロナウィルスの影響ならびに為替円高影響にて、前年比10パーセント減の9,313億円となっています。調整後営業利益は前年比34パーセント減の766億円で、利益率は8.2パーセント、営業利益は728億円で、利益率7.8パーセントでした。

親会社株主帰属の当期利益は、前年比40パーセント減の412億円でした。当第4四半期における新型コロナウィルスの影響額は、売上収益に対して263億円の減収相当と分析しています。なお、2019年度累計期間の為替レートについては、前年同期比で、米ドルは2.3円の円高、ユーロは7.1円、元は0.9円、オーストラリアドルも6.8円の大幅な円高でした。また、当年度の年間配当は1株当たり60円とします。

連結地域別売上収益

次に26ページの連結地域別売上収益をご覧ください。日本は災害復旧工事などによる需要増加もあり、2,056億円と前年度とほぼ同額でした。海外では、北米が1,734億円で前年比48億円、3パーセント増でしたが、それ以外の地域においては減収となりました。海外売上収益比率は、前年比2ポイント減の78パーセントとなりました。なお、売上収益は前年比で1,024億円減少し、9,313億円でしたが、為替円高影響で362億円の減収で、現地通貨ベースの物量でも661億円の減収でした。

マイニング売上収益推移

続いて27ページのマイニング売上収益推移をご覧ください。2019年度のマイニング売上収益は、棒グラフに示したとおり1,668億円となり、為替円高影響があっても前年比4パーセントの増加です。4期連続での売上収益増、かつ過去最高額を更新しました。

その内訳としては、トラック売上が前年度に比べて減少となりましたが、ショベルは前年比35パーセントの大幅増加でした。トラックとショベル合計のマイニング本体売上は21パーセントの増加で、2期連続の売上収益増となりました。一方、マイニング向け部品サービス売上も為替円高影響により前年比6パーセント減少となりましたが、現地通貨ベースでは増収を確保しました。

バリューチェーン売上収益推移

続いて、バリューチェーンの状況です。棒グラフをご覧ください。当年度のバリューチェーン売上収益は、前年比5パーセント減の3,792億円でしたが、為替円高影響が4パーセントの減収要因ですので、現地通貨ベースではほぼ前年並みの物量でした。

ソリューションビジネス売上も、為替円高影響により906億円、前年比6パーセントの減収でしたが、現地通貨ベースでは増収を確保しました。レンタル売上も前年比6パーセントの増収でした。

連結損益変動要因

29ページは2019年度の連結損益変動要因です。調整後営業利益が、前年比402億円の減益を余儀なくされた要因です。最高益を記録した前年度と比較し、当年度は期初から米中貿易摩擦による中国ならびに周辺アジア諸国における市場環境の悪化が顕著でした。

また、第3四半期での台風被害による工場の操業悪化を、第4四半期では正常に戻したものの、中国を皮切りに新型コロナウィルスの影響が世界中に拡大したため、物量・構成差で282億円の減益要因となりました。

売価の改善効果が40億円あったものの、日本国内、インドネシア工場等での資材費アップ、減価償却費、人件費等の施策的経費の増加による間接費の増加53億円、ならびに為替円高影響92億円により、調整後営業利益は前年度よりも402億円減少した766億円になりました。また、営業利益は294億円減少の728億円となりました。

要約連結損益計算書

次に要約連結損益計算書をご覧ください。ここまで、売上収益から営業利益についてご説明してきましたので、このページでは営業外損益以下を簡単にご説明します。金融収益及び費用は、主として為替差損の影響により、前年比41億円の悪化となりました。また、持分法投資損益は前年比20億円の減少でした。親会社株主に帰属する四半期利益は、前年度比40パーセント減の412億円となりました。

要約連結 四半期別売上収益・営業利益(率)

続いて、31ページは四半期別の状況です。一番右側の2019年度第4四半期をご覧ください。当第4四半期の売上収益2,442億円は、2018年度第4四半期と比較すると、物量減に加えて、為替円高影響82億円を含め、463億円の大幅な減収となりました。調整後営業利益率も、折れ線グラフに示したとおり、当第4四半期は7.3パーセントとなりました。

要約連結財政状態計算書

32ページは、2020年3月末時点の連結貸借対照表です。2020年3月末は、当年度から適用した国際会計基準(IFRS)16号に基づき、415億円のリース資産の増加影響がありました。しかし、前年度末2019年3月比較では、非流動を含めた営業債権は2,521億円と、305億円を圧縮しています。加えて棚卸資産も3,012億円と、236億円圧縮したことから、総資産は1兆1,676億円と、前年度末よりも177億円の圧縮でした。

手持日数では、営業債権を前年度末より微減の99日に維持しましたが、棚卸資産は3日延伸の118日となりました。一方、営業債務に関しては、下請法準拠により14日短縮の43日となりました。この結果、正味運転資金手持日数は、前年度末よりも16日延伸した171日となりました。

営業債務及びその他債務合計は、前年度末比で894億円圧縮の1,887億円となりました。この影響で、有利子負債計は前年度末よりも341億円増加した3,389億円となりました。資本合計は5,251億円で、親会社所有者持分比率は40.6パーセント、ネットD/Eレシオは0.58でした。

連結キャッシュ・フロー

33ページは連結キャッシュ・フローです。当年度の営業キャッシュ・フローは227億円のポジティブとなり、前年比で484億円の改善となりました。しかし、投資キャッシュ・フローでは、有形固定資産取得による前年比58億円増加などで、347億円の支出超過となり、フリー・キャッシュ・フローは121億円の支出超過となりました。

要約連結損益計算書(予想)

続いて、今回の2020年度業績予想をご説明します。34ページの要約連結損益計算書(予想)をご覧ください。執行役営業本部長の先崎がご説明した、新型コロナウィルス影響下の需要環境を踏まえ、現時点の今年度業績予想を、売上収益7,700億円、調整後営業利益400億円、親会社株主に帰属する当期利益200億円とします。この業績見通し数値は、新型コロナウィルスの収束が第2四半期末まで要するという前提に基づく予想です。また、第3四半期以降にも需要に影響が及ぶことを織り込んでいます。

なお、今年度の予想為替レートについては、アメリカドルを105円、ユーロを120円、中国元を15円、オーストラリアドルを72円と置きました。

マイニング売上収益推移(予想)

次に35ページのマイニング売上収益の予想です。2020年度のマイニング売上収益は、為替円高影響もあり、前年比8パーセント減収の1,530億円を見込みます。マイニング機械本体はトラックとショベル合計で前年比10パーセント減収を見込むほか、マイニング向け部品サービスも為替円高影響があり、7パーセントの減収を見込みます。なお、売上構成比は、前年度比2ポイント増加の20パーセントを見込みます。

バリューチェーン売上収益推移(予想)

36ページは、バリューチェーン売上の予想です。2020年度のバリューチェーン売上収益予想は為替円高影響もあり、3,612億円で前年比5パーセント減収の予想です。部品サービスは、新型コロナウィルスの影響にて、コンストラクション向けの落ち込みが大きく、前年比10パーセント減収の1,750億円を見込みます。

また、ソリューションビジネスも16パーセント減収の760億円を見込みます。一方、レンタルは堅調な国内、イギリスに続いて中国、アジア、オーストラリアに拡大することで、16パーセント増加の620億円を見込みます。売上構成比は、前年度比6ポイント増加の47パーセントを見込みます。

連結損益変動要因(予想)

37ページの連結損益変動要因の予想をご覧ください。2020年度調整後営業利益は対前年度比で366億円減少し、400億円となる予想ですが、その要因をご説明します。この図に示したとおり、物量の減少530億円の影響が大きく、加えて為替の円高影響64億円も減益要因となります。一方で、間接費の大幅縮減、資材費の低減で、調整後営業利益400億円を見込みます。営業利益は、調整後営業利益の減益にて、前年比368億円の減益となる360億円を予想しています。

COVID–19による事業環境の変化と当社の取り組み

平野:それでは中期経営戦略の方向性についてご説明します。まず新型コロナウィルスによる事業環境の変化と当社の取り組みについてです。昨年度終わりました中期経営計画の中で、当社は今まで何度もお客さまの現場や意識が大きく変わってきているとご説明してきました。それが今回の新型コロナウィルスによって、さらに急速に近づいてきていると感じています。例えば機械を保有するにしても、自社の強みを生かせる機械は積極的に保有し、それ以外の機械はレンタルするなど、機械の保有がさらに多様化すると考えます。

当社は、最先端の機械の提供だけではなく、メーカーとしての特色を生かしたレンタル、中古車など、バリューチェーンの強化でお客さまの選択肢の拡充を進めてきました。また、建設現場の「三密(密閉・密集・密接)」回避のために、リモートへのニーズの高まりが加速化すると考えます。

当社はこれに対して、リモートニーズに応えるICT建機、遠隔操作建機の開発を推進しています。従来から取り組んできましたお客さまの事業課題である、「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト低減」に対するニーズがさらに高まるものと思っています。一般建機向けには、部品・サービスメニュー(ConSite)拡充、再生部品事業の拡大を通じ、建設現場のマシンダウンを回避し、稼働率の向上をサポートします。マイニング事業においては、AHSやデジタル技術を組み合わせた高度化を推進していきます。

中期経営戦略の方向性

今年度から取り組みを始めた中期経営戦略の柱についてご説明します。2017年度から2019年度まで取り組んできた前中計の「CONNECT TOGETHER 2019」では、社会全体のトレンドや顧客ニーズの変化に対応し、新車販売中心のビジネスモデルから転換を進め、世界各地で稼働する機械をターゲットとした部品サービス、レンタル、中古車、再生、ファイナンスなどのバリューチェーン事業を強化し、収益構造の安定化を図ってきました。

また、変化に強い体質に脱皮するために、日本を含む世界各地の拠点の事業構造を抜本的に見直し、経営の効率化に努めてきました。これから取り組んでいく新しい中期経営戦略も、この大きな方向に変化はありません。お客さまの経営課題に変化はなく、先ほども言いましたように、新型コロナウィルスの影響によりさらにこの要求は強くなっていくと考えています。

このことから、今後の中期経営戦略では、「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコストの低減」という経営課題に変化はありません。今後は、経営資源を主要製品に集中させ、前中計にて注力したバリューチェーン事業をさらに拡大し、これらデジタル技術を活用してお客さまの課題解決に向けたソリューションを深化させていきます。

ESG指標:社会に必要とされる企業であるために

最後に、社会に必要とされる企業であるために推進している内容をご紹介します。企業ビジョンそのものが示すとおり、当社の事業は社会や環境への貢献に直結しています。

今回、2030年における我々のあるべき社会価値・環境価値と、今中計の最終年度の2022年の目標について定めました。具体的には、2030年の社会価値として、これまで取り組んできた「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト低減」について、それぞれスライドに示すような目標を定めました。

また、2030年の環境価値としては、製品や生産時に発生するCO2の削減を行ない、地球温暖化防止を図っていきます。どんな時代においても、変化を的確に捉えながら顧客課題を解決していくことで、持続的な価値を提供し、社会に必要とされる企業であり続けたいと思っています。

今年は建設機械の開発・生産を始めて70年の記念の年となる予定でした。しかし新型コロナウィルスの影響で非常に厳しい年となりそうです。そのような中でも、しっかりと先を見据えて事業運営を進めていきますので、今後ともご指導、ご支援をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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