DRAMおよびNANDフラッシュのメモリー投資計画は、スマートフォンを中心とする最終需要の減退から、ここにきて設備導入スケジュールを見直す動きを見せ始めている。特に韓国サムスン電子は、最新鋭の平澤第2工場(P2)および西安第2工場(X2)の投資計画を見直しており、2020年の半導体製造装置市場に少なくない影響を与えることになりそうだ。

DC、パソコン向け好調もスマホが厳しい

 今回、投資計画が見直された背景には、スマホの需要減が大きく影響している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、20年のグローバル販売台数は前年比15%減程度の大幅な減少が見込まれている。加えて、需要が「iPhone SE」に代表される廉価機種に流れていることもメモリー需要を押し下げる一因となっている。

 足元ではデータセンター(DC)向けの需要や、スマホ向けもファーウェイを中心に在庫積み増しの動きを見せており、需給環境はタイトな状況が続いている。先ごろ3~5月期の決算を発表した米マイクロンもASP(平均単価)について、DRAMが前四半期比1桁台半ば、NANDが同1桁台後半の上昇になったと明かしている。

 ただ、在庫積み増しの動きも夏場以降は落ち着き、その後は反動減の恐れがある。メモリーをはじめとする部品取り込みのペースはスローダウンし、10~12月期から需給が悪化する可能性が指摘されている。

DRAM投資を先送り

 こうした市場の変化を受けて、サムスンはメモリー投資計画の見直しに着手している。DRAMはP2に月6万枚の新規設備を年内に導入する予定だったが、これを半分程度にとどめる。残り3万枚分は年明け以降に先送りする。

 一連の投資は1Znm世代となっており、用途はスマホなどのモバイル向けが中心。需要が比較的堅実なデータセンター向けは1世代前の1Ynmが主流で、既存ラインで対応できている状況だ。

 3D-NANDを生産するX2は、新型コロナの影響で立ち上げが遅れていた月6.8万枚分については装置メーカー各社からエンジニアを派遣して目下立ち上げ作業を進めている。当初は次期投資計画(128層世代)への引き合いがあったが、これがいったん白紙となったもよう。P2の1階エリア(P2F)の128層パイロットラインの投資は予定どおり行うものの、量産投資はX2の6.8万枚分で打ち止めとなる。

SK、マイクロンも慎重姿勢

 他のメモリー各社も現状の投資計画に力強さは感じられない。マイクロンの20年度(20年8月期)設備投資金額は80億ドルと高水準だが、前工程装置への投資は前年度比で4割減となる見込み。21年度投資は今のところ、前年度比で増額するものの、コロナ前の当初計画からは大幅に引き下げるとコメントしている。

 実際にDRAMを生産する台中工場(Fab16)の新棟(A3)への設備導入は当初20年10月から開始される予定であったが、これが年明け以降に先送りされている。同様にSKハイニックスもDRAMの新量産拠点となるM16ラインの設備導入時期について、不透明感が漂っている。

 一方で中国新興メモリー各社は需要動向と関係なく、戦略的な投資を実行していることから、足元でも積極的な投資計画が目立つ。YMTCは現状、月2万枚の生産能力を保有するが、これを年末までに同5万枚体制に引き上げる。さらに21年に向けて128層世代の投資計画についても、すでに引き合いが始まっている。

 また、CXMTも20年4~6月期に月2万枚程度の設備を追加導入。同社製チップを搭載したメモリーモジュールがリテール市場で販売されているほか、同社向けに後工程を受託するOSATの投資計画も活発化しており、業界での存在感を高めている印象だ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳