年の差があるほど有利?「加給年金」と「振替加算」とは

「加給年金」の対象となるのは、会社員や公務員で厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が65歳になったとき、年下の配偶者や18歳未満の子の生計を維持している世帯です。本人の厚生年金に「加給年金」が加算されます。

この制度は、稼ぎ手が年金生活に入って収入が減ったときに、その人に扶養されていた配偶者や子が困らないようにするための仕組みです。ポイントは会社勤務をしていた人の配偶者が本人よりも年下かそうでないかで扱いが異なる点にあります。

「加給年金」や「振替加算」の仕組みは大変複雑です。わかりやすくするために、会社勤務をしていて厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あるA男さんと、妻のB子さんを例にして制度の概要をご紹介します。

扶養している配偶者が年下の場合

A男さんが65歳になったとき、B子さんが55歳だというケースをみていきます。

加給年金

B子さんが自分の年金をもらえるようになるまでの期間(基本的に65歳まで)は、A男さんの厚生年金に「加給年金」が加算されます。2020年時点の「加給年金」は年額22万4,900円です。子を扶養している場合は、1人目と2人目の子については各22万4,900円、3人目以降は各7万5,000円が、その子が 18歳になる年度の末日まで加算されます。

さらに、生年月日によって段階的に設定された「配偶者加給年金額の特別加算額」もプラスされます。仮にA男さんの生年月日が1943年4月2日以降の場合は、16万6,000円が特別加算され、合計年額は22万4,900円+16万6,000円=39万900円となります。加給年金を利用する際には、自分で手続きをする必要があります。

振替加算

B子さんが年金の受給を開始するとA男さんに支給されていた「加給年金」は停止となります。代わりにB子さんの年金に一定額の「振替加算」が支給されます。

振替加算が適用されるのは、生年月日が1926年4月2日から1966年4月1日までの人に限られます。また、厚生年金の被保険者期間の月数が240月未満で、配偶者に生計を維持されているという条件を満たさなくてはなりません。

1926年4月2日~1927年4月1日生まれの人には、配偶者の加給年金と同額の22万4,900円が支給されます。それ以降は段階的に減額され、生年月日が1966年4月2日以降の人では振替加算がゼロになります。

この場合、振替加算の対象者には自動的に加算が実施されるため、基本的に自ら手続きする必要はありません。