「私よりあなたのほうがすごい」と言ってほしかった?
筆者は心のどこかでAのことを「自分よりも頑張っていない」「楽している」として、どこかで見下していたのかもしれません。だから「いつも体調崩しているよね」という言葉をAからの心配と捉えずに、「バカにされた」と感じたのでしょう。そして「あなたのほうがすごい」と思ってほしかった自分にも気付きました。
夫婦で分担しているAよりワンオペの自分のほうがすごい。育てやすい子どもより育てにくい子どもを育てているほうが偉い。同じ子育て当事者なのに、そうやって勝手に優劣をつけていました。AにもAなりの家庭の事情や大変さがあるだろうことを想像することもなく。
同じような現象は、ウイズコロナ時代にも頻繁に起こっています。コロナの感染がじわじわと広がり始めた頃には、「自分が頑張っているのに、あいつは自粛を頑張っていないから罰しろ」「自分が大変な思いをしているのに、あの人は楽しそうにしていてズルい」といった怒りの感情が多くの人の心に渦巻いていたようでした。
そうした怒りの感情を抱く人の多くは、もちろん感染拡大防止を憂慮していました。しかし、中にはただただ自分より苦労をしていない人への苛立ちがあり、「自分と同じように苦しめ」といった歪んだ感情もあるように思えます。
筆者のAへのモヤモヤも、コロナ禍におけるそうした歪んだ感情も、日本人特有の同調圧力がネガティブな方向に大きく影響しているとも言えます。子育てもコロナとの向き合いにも、「自分が苦しいから他人も苦しまなければおかしい」ではなく、「自分の楽しさや嬉しさを他人にも共有しよう」という”ポジティブな同調圧力”が問われているのかもしれません。
富士 みやこ