にわかに脚光を浴びた半導体業界

今週は、ソフトバンクグループ(9984)による英アーム・ホールディングス(ARM)の買収が大きな話題になったことで、半導体業界に関心をお持ちになった方も多いのではないかと思います。

そこで、今回は米国株式市場に上場する半導体関連企業の株価指数から、業界全体を俯瞰してみます。

そもそもSOX指数とは

SOX指数とは、アプライドマテリアルズ、インテル、マイクロン、台湾積体電路製造(TSMC)など、半導体関連の主要銘柄を中心に全30銘柄で構成された株価指数です。

米国のフィラデルフィア証券取引所が算出・公表しているため、フィラデルフィア半導体株価指数とも呼ばれ、この指標を分析することで、足元の業界トレンド(上向きなのか、下向きなのか、ボトムなのか、ピークなのか等)を確認することができます。

半導体メーカーはグローバルに事業を展開している場合が多いことや、米国以外の企業も含まれているため、国外の投資家からの注目度も高い株価指数です。

立ち直りつつあるSOX指数

下図には、過去10年間のSOX指数の推移が示されています。ボトムは金融危機があった2008年11月の168で、ピークは2015年5月の749です。

2012年からピークを付けた2015年5月までは、ほぼ一貫して上昇傾向が続きましたが、その後は、中国経済の減速懸念やスマホ市場の成長鈍化の影響を受け、軟調な動きとなりました。しかし、2016年年初からは再び上昇トレンドに復帰していることが分かります。

ちなみに、2016年7月20日時点でのSOX指数は732で、2015年5月のピークまであと少しまで迫っています。また、年初来のパフォーマンスは+10%の上昇で、米国の代表的な株価指数の1つであるS&P500(+6%上昇)を上回るパフォーマンスになっています。

半導体株は景気敏感

半導体市場に関する世界的な統計機関であるWSTS(世界の主要半導体メーカー48社が加盟)によると、2015年の世界の半導体市場は3,352億ドル(1ドル105円換算で約35兆円)と、巨大な産業です。

半導体は1947年に米国のベル研究所で発明されて以来、技術革新により応用範囲が拡大し、「産業のコメ」と呼ばれるほどあらゆる分野に使われています。このため、原油や銅などのコモディティ商品と同様に、半導体も代表的な景気敏感産業の1つとなっています。

このことは、2015年後半にSOX指数のパフォーマンスが悪化したことからも理解できるのではないかと思います。

銘柄選別が重要

半導体がコモディティであることは、今後の市場見通しからも実感できるのではないかと思います。2016年6月に発表されたWSTSによる最新の市場予測によると、世界の半導体市場(ドルベース)は2016年が▲2.4%減、2017年が+2.0%増、2018年が+2.2%増と、非常に穏やかな成長しか見込まれていません。

とはいえ、巨大化し、コモディティ産業となっていることを考慮すると、この程度の成長でもむしろ良しとすべきなのかもしれません。また、この先にはIoTの本格普及という半導体業界にとっての大きなチャンスが控えていることにも注目すべきでしょう。

足元のSOX指数はピーク水準で、今後数年の業界全体の成長率は決して高くないということを踏まえると、ここからの半導体関連への投資には銘柄選別が一段と重要になります。

残念ながら、長期的な有望銘柄の1社は孫さんに買われてしまいましたが(もちろん、ソフトバンクグループに投資することも一案です)、ARMの2015年12月期の売上高は約1,800億円と、半導体市場全体の35兆円に比べたらごくわずかです。このことも忘れずに、有望企業の発掘に取り組んでいきましょう。

 

LIMO編集部