投資信託に毎月分配型が多いのは、人間の心理が影響している!?

突然ですが、ボーナスを受け取るとしたらどの方法が良いですか?

  1. 年に1回だけ総額120万円受け取る
  2. 6月と12月に60万円ずつ受け取る
  3. 毎月10万円ずつ給料に上乗せして受け取る

さて、どの方法があなたにとって一番うれしいでしょうか。意外に毎月10万円ずつ受け取る方法を好む人が多いと思いますが、いかがでしょう。

人は小さい幸せの積み重ねを好む

年間に受け取るボーナスの総額はどれも120万円ですが、なぜ毎月受け取る方を好む人が多いのでしょうか。

人の経済行動を心理学の面からも分析する行動経済学では、こうした合理的ではない行動を「行動バイアス」と呼んで、多くの実験によってその存在を明らかにし、その背景を分析しています。

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その一つに、「人は受け取る富が増えても、その増えたほどに喜びという効用は増えていかない」というバイアスがあります。20万円受け取った喜びは10万円を受け取った時の2倍にはならないのです。

先のボーナスの受け取り方でみると、120万円の受け取りは毎月の10万円の12倍にはならないということになります。言い換えると、月1回10万円を12回受け取る方が、120万円を1度に受け取るより、うれしさという効用の総和は大きくなるというわけです。

4人に1人は分配金が少なくても毎月受け取りたい

少しアンケートの実施時期は古いのですが、2010年にフィデリティ退職・投資教育研究所が毎月分配型投資信託の保有者3,340人に聞いたアンケート調査の結果を紹介します。

設問は仮定の話として、これから100万円で投資信託を購入するとした場合、どの投資信託を選ぶかを聞きました。

最初の設問では、先ほどのボーナスの受け取り方と同じで、分配金を年に1回1万2,000円で受け取るか、毎月1,000円の分配金を受け取るかで聞いた結果、35.8%が毎月分配型投資信託を選ぶとしていました。

注目したいのは、毎月の分配金を900円にした場合でも、24.6%の人が毎月分配型を選ぶと回答していることです。

もちろん年間で受け取れる分配金の総額は1万800円に減ってしまいますが、それでも毎月受け取る方を選ぶという人がかなりの比率でいるということがわかります。毎月受け取るということ自体が大切だと認識していることがよくわかります。

毎月分配型投信残高は依然3分の1

ところで、投資信託協会が公表している資料によると、毎月分配型の投資信託の残高は2020年4月で18.9兆円と、2014年末残高42.7兆円からみると6割ほど減少しています。

それでも株式投信全体の32%を占めているのは、ある意味で避けられない行動バイアスの結果なのかもしれません。

毎月分配型投資信託保有者3,340人に聞く、分配金の志向 (単位:%)

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出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、毎月分配型投資信託保有者3,000人調査、2010年2月

合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史

参考記事

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執筆者
野尻 哲史

合同会社フィンウェル研究所代表。国内外証券会社、大手外資系運用会社を経て、2019年5月に現職。資産の取り崩し、地方都市移住、雇用継続などの退職後の生活に関する提言を行っている。行動経済学会、日本FP学会などの会員などの他、2018年9月から金融審議会市場ワーキング・グループ委員。著書に『IFAとは何者か』(一般社団法人金融財政事情研究会)『老後の資産形成をゼッタイ始める!と思える本』(扶桑社)『定年後のお金』(講談社+α新書)『脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ』(日本経済新聞出版社)など多数。