2020年6月3日に行なわれた、グローリー株式会社2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:グローリー株式会社 代表取締役社長 三和元純 氏\nグローリー株式会社 IR担当
連結業績概要 前期比
IR担当:まず、2020年3月期の連結業績の概要についてご説明いたします。スライドの3ページをご覧ください。売上高については、金融市場を除くすべてのセグメントにおいて増収しましたが、金融市場における大口需要の反動により、前期比4.9パーセント減少しました。
営業利益は、金融市場における売上高の減少により、前期比12.9パーセント減少しました。経常利益については、株式市場の低迷に伴う持分法投資損益等を計上したことにより、前期比23.9パーセント減少し、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比26.9パーセント減少しました。
営業利益 増減要因
次に営業利益の増減要因についてご説明します。4ページをご覧ください。当期の主な増益要因としては、原価率の改善による効果が29億2,400万円ありました。
一方、減益要因としては、売上高の減少による影響が43億5,100万円、販管費の増加による影響が12億2,200万円ありました。この結果、当期の営業利益は前期比26億4,900万円の減益となりました。なお、為替の影響については、売上高でマイナス44億6,700万円、営業利益でマイナス11億2,200万円の影響がありました。
セグメント別売上高・営業利益 前期比
続いて、セグメントごとの売上高と営業利益の概要についてご説明します。5ページをご覧ください。売上高については、金融市場を除くすべてのセグメントで増収となりました。営業利益は、海外市場、流通・交通市場、遊技市場において増益となりましたが、金融市場とその他においては減益となりました。
海外市場
セグメントごとの状況についてもう少し詳しくご説明します。まず海外市場について、7ページをご覧ください。主要製品である金融市場向け紙幣入出金機「RBG」シリーズの販売は、前期比マイナス26.1パーセントと低調でしたが、リテール市場向け紙幣硬貨入出金機「CI–100」シリーズの販売は、前期比プラス22.7パーセントと好調でした。また紙幣整理機の販売は、前期比マイナス7.7パーセントと低調でした。
この結果、売上高は前期比プラス0.3パーセントの1,036億2,100万円となり、営業利益は、欧州の開設に伴うソフトウェアの販売及び補修売上高の増加等により、前期比プラス11.6パーセントの97億8,000万円となりました。
地域別売上高
海外市場の地域別売上高については8ページをご覧ください。米州では金融市場向け紙幣入出金機「RBG」シリーズの販売は低調でしたが、リテール市場向け紙幣硬貨入出金機「CI–100」シリーズの販売は好調でした。
欧州では金融市場向け紙幣入出金機「RBG」シリーズの販売は低調でしたが、リテール市場向け紙幣硬貨入出金機「CI–100」シリーズの販売は堅調でした。またアジアでは、中国向け紙幣整理機の販売が前期並みである一方、OEM製品であるATM用紙幣入出金ユニットの販売は低調でした。各地域の現地通貨ベースの伸び率は、スライドの表の右の列に表示しているとおりです。
金融市場
続いて、金融市場についてご説明します。9ページをご覧ください。主要製品であるオープン出納システムの販売は、前期比マイナス41.2パーセント、窓口用紙幣硬貨入出金機の販売は、前期比マイナス58.8パーセントと大口需要の反動により低調でした。この結果、売上高はマイナス25.4パーセントの422億6,200万円となり、営業利益はマイナス51.0パーセントの33億1,400万円となりました。
流通・交通市場
続いて10ページの流通・交通市場についてご説明します。主要製品であるレジつり銭機の販売は、大口需要の反動により前期比マイナス23.7パーセントと低調でしたが、警備輸送市場向け売上金入金機の販売は、前期比プラス0.8パーセントと前期並みであり、券売機の販売は前期比プラス85.2パーセントと好調でした。
この結果、売上高はプラス1.0パーセントの524億8,700万円となり、営業利益については、保守売上高の増加やプロダクトミックスの改善等により、プラス12.7パーセントの51億9,800万円となりました。
遊技市場
続いて11ページの遊技市場です。主要製品であるカードシステムの販売は低調でしたが、改正健康増進法の施行に伴うホール内喫煙ブースの設置など、店舗設備に関する販売が好調でした。この結果、売上高はプラス1.2パーセントの207億5,300万円となり、営業利益については、プラス2.0パーセントの19億9,800万円となりました。
その他
これまでご説明した4つのセグメントに属さないその他の事業について、売上高は前期比プラス51.0パーセントの50億4,500万円となり、営業損益は、新事業への投資等により23億6,400万円の損失となりました。
設備投資他
次に設備投資他について、13ページをご覧ください。設備投資はフィリピン工場の増設などにより、前期比プラス28.4パーセントの106億8,700万円となり、減価償却費は、前期比プラス13.3パーセントの101億3,300万円となりました。研究開発費については、主に海外市場の開発費が増加したことにより、前期比プラス6.9パーセントの140億8,200万円となりました。
2020年3月期の配当について
配当の状況です。14ページをご覧ください。2020年3月期の期末配当金は、1株あたり34円を予定しています。これに中間配当32円を加え、年間配当金は66円となり、連結配当性向は44.5パーセントとなる予定です。
以上で、2020年3月期の連結業績に関する説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。続いて、社長の三和より現況及び2021年3月期の見通しについてご説明します。
新型コロナウイルス感染症の業績への影響 前年同期比:第4四半期
三和元純氏:三和です。よろしくお願いいたします。16ページをご覧ください。まず2020年3月期の新型コロナウイルスによる業績への影響は、国内においてはほとんどありませんでした。海外においては、欧米主要都市のロックダウン等による営業活動の制約が顕在化した時期が第4四半期の後半であったことにより、業績への影響は軽微にとどまりました。
スライドの表は、各セグメント及び海外地域別の2020年3月期、第4四半期の売上高を前期と比較したものです。国内は金融市場を除いて前期を上回っています。海外は総じて2019年度を下回っていますが、新型コロナウイルスによる納品遅延等の影響は、前期比マイナス25億円のうちの半分程度であったと見ています。
海外地域別の状況
続いて現在の状況についてご説明します。17ページをご覧ください。海外においては、欧米主要都市のロックダウンにより営業活動が大きく制約され、保守活動も50パーセントほどの活動状況でしたが、各地域で社会経済活動の制限が徐々に緩和されはじめており、事業活動の本格的な再開に向けて準備を進めているところです。
国内セグメント・生産施設の状況
次に、国内及び生産施設の状況についてご説明します。18ページをご覧ください。金融市場については、新規商談の多くは中断していましたが、納品は継続的に実施しています。
流通・交通市場については、商談の延伸や、お客さまのご意向により納品ができない状況も発生しましたが、人手不足への対応に加えて、新型コロナウイルス感染症防止対策として、セルフ型のレジつり銭機などの需要が増加しています。緊急事態宣言発令中は事業活動が停滞したため、その影響が年度前半は残りますが、その後は巡航速度に戻るものと予想しています。
遊技市場について、スライドには7割程度が営業再開と記載していますが、6月に入り、大半の店舗が営業を再開しています。ただ、市場の縮小傾向とも重なって厳しい状況が続くと思います。
生産については、国内工場、中国工場は通常どおりに稼働しています。フィリピン工場については、5月はじめに生産を再開し、段階的に稼働率を引き上げており、生産面での障害はなくなりつつあります。調達については、ほぼ通常どおりに戻っています。
2021年3月期の業績予想と配当について
続いて19ページをご覧ください。このような状況から、2021年3月期の業績予想と年間配当については、特に海外主要地域における事業活動の本格的な再開時期が現時点では見通せず、業績予想の適正且つ合理的な算定が困難であるため、未定としました。合理的な算定が可能となった時点で開示しますので、ご了承くださいますようお願いいたします。
2021年3月期の取り組み
続いて、2021年3月期の取り組みについてご説明します。21ページをご覧ください。新型コロナウイルス感染症の収束後は、人の価値観や行動様式の変化とともに、国内外を問わずレスキャッシュ、レスタッチの流れが加速する可能性があります。
金融市場や流通市場においては、さらなる省力化、省人化、非対面化へのニーズが高まるものと想定され、現金管理業務や精算業務などの自動化とともに、決済のセルフ化、タッチレス化が進むと考えています。また、ロボットを使った省人化への取り組みも加速すると予想しており、ロボットシステムインテグレーション事業のビジネスチャンスが拡大すると見込んでいます。
次世代店舗スタイルの実現
国内外の取り組みについて少し詳しくご説明します。まず国内事業の取り組みについて、23ページをご覧ください。金融市場では、金融機関の統合や店舗の削減、特化型の少人数店舗への移行が進行することが予想されます。また、事務の合理化、省人化への取り組みもさらに加速すると考えます。
当社では、BPR支援や次世代店舗スタイルの提案、さらには店舗施工までを一括してお引き受けする体制を整えています。主力の通貨処理機に加え、非現金分野やセルフ化、省力化に向けたさまざまな製品サービスを提供していきます。
人手不足・コンタクトレスニーズへの対応
続いて、流通・交通市場についてご説明します。24ページをご覧ください。流通市場においては、人手不足対応から、レジつり銭機や券売機の導入が広がっていましたが、お客さまと接触をできるだけ避けたいというニーズも重なり、セルフ型のレジつり銭機、券売機や診療支払機などへのニーズがさらに高まるのではないかと予想しています。小規模店舗では、タブレットPOSの導入も広がっています。このタブレットPOSへのレジつり銭機の接続が進めば、レジつり銭機の市場が拡大するものと期待しています。
また、4月にグループに加わりましたAcrelecは、セルフサービスキオスクの国内展開を進めていますが、親和性の高いレジつり銭機の販売にも寄与するものと大いに期待しています。
ローコストオペレーションへの対応
続いて海外市場の取り組みについてです。26ページをご覧ください。海外の金融市場においては、特にイタリアや中国において店頭業務のセルフ化が広がっています。今後は他の欧州諸国や米国においても、窓口用紙幣入出金機のセルフ化や、「TellerInfinity」のような複合型のロビーセルフ機へのニーズが高まるものと予想しています。
アジア諸国への窓口用紙幣入出金機の拡販とともに、セルフ機のラインナップ強化や機能拡充が、今後の金融市場での販売戦力の柱になると考えています。
小売店舗の業務効率化
次にリテール市場について、27ページをご覧ください。リテール市場においては、バックオフィスの合理化が先行しており、レジつり銭機の導入はまだ多くはありませんが、合理化や現金管理の厳正化に加えて、額面での決算ニーズが高まってくると予想しています。
引き続き大手スーパー、リテーラーを中心に、バックオフィスの合理化を提案していくとともに、Acrelecと協働し、これまで取引のほとんどなかった大手ファーストフード、飲食チェーンなどに対し、セルフサービスキオスクとセルフ型レジつり銭機のクロス販売を推進します。
Acrelecが加わったことにより、グローリーグループとしては初めて海外でのノーキャッシュソリューションが提供できるようになりました。これにより、海外事業のステージが大きく広がると期待しています。
ある統計によると、全世界の成人の30パーセントが銀行口座を保有していない、あるいは保有できないということです。ドイツのCPSの現金決済プラットフォームや、シンガポールのSOCASHのキャッシュアウトサービスの世界展開を加速し、社会インフラとしてのキャッシュへのアクセスポイントを拡大していきます。併せて当社レジつり銭機の販売拡大を狙っていきます。
新事業(タッチレスニーズの対応)
続いて国内の新事業についてご説明します。28ページをご覧ください。国内においても、タッチレスやコンタクトレスへの関心が高まっており、現在試行中の顔や声を活用したマルチ生体認証決済サービスのBio–Payや、eKYC本人認証サービスのBioCheckなどを早期に市場投入したいと思います。
またマスクを着用していても認証可能な新ウォークスルー型顔認証システムの販売をスタートさせます。生産現場においては、安心安全を追求した省人化への取り組みが一段と進むと予想しており、当社が持つ認識・識別技術を組み込んだロボットシステムインテグレーション事業の拡大を図っていきます。
新事業(店舗業務支援)
続いて、リテール店舗向けに試行中の店舗業務支援サービスについてご説明します。29ページをご覧ください。この「Shoppers Cloud」サービスは、コミュニケーション、セキュリティ、スタッフおよび商品管理など、従来は複数の端末を使用していた店舗管理業務をスマホ1台に集約することで、業務負荷の大幅な削減、および安全面と衛生面の確保を実現するクラウドサービスです。アプリを追加していくことにより、さまざまな機能拡張が可能なサービスであり、こちらも早期の実現を目指していきます。
新事業(個体認証他)
次に、市場の拡大が期待されます医療分野での共同の取り組みについてご紹介します。30ページをご覧ください。まず兵庫県立大学とは、当社の認識・識別技術を用いた疾病の早期発見や、診断支援などの技術確率を目指した共同研究を実施しています。順天堂大学とは、感情認識技術を発展させ、表情や話し方などからパーキンソン病や認知症の早期発見、あるいは進行度合いを診断できるシステムの構築などを目指しています。
レセプトコンピューター大手のEMシステムズが提供する処方箋入力支援システムには、当社のOCR技術の搭載が始まっています。また、大阪市立大学大学院発のスタートアップ、エコナビスタと共同し、介護・福祉施設向けの健康見守りサービスに、当社の「離院事故防止システム」や「骨格認証システム」を加えて、施設内の事故防止やスタッフの負担軽減を図ります。
戦略投資
最後に戦略投資についてご説明します。31ページをご覧ください。今期も国内外での新たなビジネスモデルの構築や、海外での直販・直メンテナンス網の拡大など、重点分野への戦略投資を進めていきます。
昨年度は、直販・直メンテナンス網の拡大においては、メキシコの販売代理店Soretekを買収し、オーストリアに現地法人を設立しました。加えて、連結子会社Sitradeの出資比率を51パーセントから75.5パーセントに引き上げ、イタリアにおける販売体制の強化を図りました。
新たなビジネスモデルの構築については、現金決済プラットフォームを提供するドイツのCash Payment Solutions GmbHを買収し、キャッシュアウトサービスを展開するシンガポールのSOCASHに出資しました。また今年4月には、世界各国の大手ファーストフード店などにセルフサービスキオスクを展開するフランスのAcrelecを買収し、5月には「AIBeacon」を利用した顧客分析を得意とするアドインテとの資本提携を行ないました。
新型コロナウイルス感染症の推移がたいへん気になるところではありますが、事業の一層の深堀りと、新たなビジネスモデルの確立に向けて注力していく所存ですので、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。以上で説明を終わらせていただきます。