財政赤字の拡大を伴う拡張的、積極的な財政政策

経済社会の安定を実現するため、中国政府は、一般財政赤字目標をGDPの3.6%以上に設定した。これは、2019年の2.8%を上回り、歳入と歳出の格差が約1兆人民元拡大することを意味する。それでも政府は、必要に応じて財政支出の水準をさらに引き上げる柔軟性と意欲を示している。なお、実際の財政赤字は、予算調整基金からの計画的移転と公的預金からの引き出しを考慮すると、GDPの約6.5%にのぼると推計される。

一方、政府管理基金の支出は前年比38%増と大幅に増加すると予想され、基金の赤字は主にパンデミック対応のための地方および中央政府の特別債(LGSBおよびCGSB)の発行によって賄われることが見込まれる。

中央政府特別債(CGSB)による調達額と、中央政府の一般会計の赤字で計画された追加の1兆人民元は、特別移転スキームの下で地方政府に移転され、税および手数料の削減、賃貸料および利子の補助金、ならびに雇用、消費および投資の下支えの財源となる。全体として中央政府の一般会計の財政赤字に地方政府特別債(LGSB)および中央政府特別債(CGSB)の発行額を加えると、広義の赤字額は2019年のGDPの5.0%から今年は8.1%になると予想される。

さらに、融資平台(LGFV:地方政府の資金調達などを行う機関)債、LGFVへの銀行融資、政策銀行特別債、中国鉄路総公司(鉄道会社)の借入などの準財政融資が加速する可能性がある。LGFVは、年初からの4ヶ月間でオンショア債券市場において約1兆人民元を調達している(2019年は通年で1.2兆人民元)。

「柔軟で適切な」金融政策

当局は銀行の預金準備率(RRR)や金利の引き下げ、公開市場操作を通じて、マネーサプライ(M2)を増やし、2019年の水準を「大幅に上回る」資金供給を行うと見込まれる。当局は、実体経済を支える信用の波及に焦点を定め、企業部門(特に中小企業)の財政負担を軽減するとともに、債券の発行による財政赤字の穴埋めに注力するだろう。

中小企業を支援するために、債務支払いの一時停止期間は2020年6月から2021年3月まで延長されており、また大手銀行は今年、中小企業への融資を前年比40%以上増やすことが求められる。当局は政府の保証メカニズムを改善し、社債発行を支援、サプライチェーン・ファイナンスを強化すると見込まれる。