すると、小泉首相は“これをビジネスチャンスに変えて欲しい”という内容の返答をしたと、筆者は鮮明に覚えています。

いずれにせよ、日本ネクタイ組合連合会が、クールビズの浸透に深刻な危機感を持ったことは確かです。あれから15年余が経過していますが、実際にネクタイの需要はどうなったのでしょうか。

恐ろしいほど激減したネクタイ需要

結論から言うと、ネクタイ需要は恐ろしいほどに激減しています。

日本ネクタイ組合連合会を構成する大組織の東京ネクタイ協同組合によれば、ネクタイの国内生産本数は、平成17年の約1,164万本から平成29年には約398万本へと▲66%減っています。ちょうど3分の1になったわけです。

また、輸入品を含めた本数でみても、同じく4,026万本から2,085万本へ▲48%以上の減少です。こちらはザックリ言えば半減でしょうか。

これだけ需要が激減して、何の影響もないはずがありません。しかも、国産ネクタイの需要激減が著しいことを勘案すると、ネクタイ業界では廃業に追い込まれた業者も少なくないと推察されます。ちなみに、同組合は平成30年以降のデータ開示を止めています。

実は、民主党政権が本格始動した2010年、日本ネクタイ組合連合会は当時の環境大臣にクールビズの廃止を陳情しています。自民党が無理でも、民主党なら理解してもらえると考えたのでしょうか。心情的には理解できないことはありません。

しかし、クールビズ導入から5年も経過してなお、新たな一手を打てなかったところにネクタイ業界の限界を感じます。結果として、ネクタイ業界は社会ニーズの変化に対応できなったと言えるでしょう。