住友金属鉱山、厳しい外部環境の中、18中計の完遂に向けて成長戦略推進と事業基盤強化に注力

2020年5月19日に発表された、住友金属鉱山株式会社2019年度決算・経営戦略進捗状況説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:住友金属鉱山株式会社 代表取締役社長 野崎明 氏

2019年度決算・経営戦略進捗状況説明

野崎明氏:みなさま、こんにちは。本日はご多用の中、住友金属鉱山の「2019年度決算・経営戦略進捗状況説明会」動画をご覧いただき、誠にありがとうございます。私は、社長の野崎です。

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みなさまには、平素、当社事業に対し格別のご理解、ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、今回は動画による発信となりましたことを、ご了解ください。

2019年度決算は先日発表済みですが、本日は事業を取り巻く状況なども含め、ご説明したいと思います。事前に頂戴しているご質問については、後ほど回答いたします。よろしくお願いいたします。

総括・新型コロナウイルスの感染拡⼤を受けて①

まず、総括的に足元の状況、課題について述べます。4ページをご覧ください。新型コロナウイルスに関連する足元の状況は、後ほどQ&Aのところで触れますので、こちらでのご説明は省略します。

総括・新型コロナウイルスの感染拡⼤を受けて②

5ページで、2020年度の業績予想に関してご説明します。新型コロナウイルスの影響は、長期化、拡散が想定され、世界レベルでの生産減少、消費行動の低下につながると危惧していますが、現時点で合理的にその影響を見積もることが困難です。このため、当社では2020年度の業績予想を未定としました。

現在のところ、非鉄金属では需要の減退とともに生産活動の停止もあり、需給はバランスしています。他の製品も含め、今後、生産活動の制限解除のスピードと、徐々に回復するであろう消費の復調のスピードが同調するかどうかで、素材市場の動向が見えてくると考えていますが、現時点では予測は困難です。今後の見通しについては、極力早いタイミングで開示できるよう情報収集等に注力します。

配当は、18中計で定めた「配当性向35パーセント以上」を基本と考えています。設備投資については、現時点で投資決定していないプロジェクトは、公表値に含みませんでした。今後、意思決定等の際にあわせて公表する方針です。また、不要不急の投資については当然のことながら先送り、再検討の措置を進めてまいります。

生産・販売の仮試算値についてはQ&Aの部で説明します。

総括・⾜元の経営課題

6ページをご覧ください。足元の状況は混乱していますが、経営課題は中長期、短期での対応が必要であることは平時と変わりありません。

まず長期的観点から、成長戦略の推進と事業基盤強化は、企業価値の最大化に不可欠です。18中計の戦略は、状況を勘案しながらも完遂に向けて取り組みます。一方で、新型コロナウイルスの影響による業績への懸念に対し、短期的な収益確保のためにできること、あるいはキャッシュフロー改善のための施策を検討、実行していきます。

1)業績推移(2013年度〜2019年度実績)

8ページは、2019年度実績までの業績の推移です。2019年度は、米中貿易摩擦のエスカレートや新型コロナウイルスによる中国経済のスローダウンの影響が顕著でした。また、スマホのコモディティ化、EV補助金カットなどで市場を牽引する商品が見当たらず、特に材料系製品への影響が顕在化しました。

2020年に入り、スマホ端末や中国5G基地局向け需要などが立ち上がりかけましたが、新型コロナウイルスの影響で市場は大幅に悪化しました。

非鉄価格は、銅は下落基調、ニッケルはインドネシアの鉱石供給懸念で一時上昇しましたが、伸び悩みました。いずれも2020年に入って下落し、年度末を迎えました。金価格は、概ね上昇基調で推移しました。

2)税引前損益分析 2019年度実績 vs 2018年度実績

9ページは、対2018年度との比較分析です。2019年度は対2018年度で、税前利益がマイナス104億円の790億円となりました。

操業起因の変動は、減産影響とコスト改善が打ち消すかたちになり、ほぼ影響がありませんでした。一時的特殊要因はプラス方向に効きましたが、為替や金属価格など変動の相場要因がマイナス144億円で、こちらが減益理由と言えます。

3)セグメント別 ROAの実績

10ページをご覧ください。事業別のROAはテーブルのとおりです。金属で改善していますが、資産売却の影響が出ています。全体として資産効率が低下している懸念がありますので、期中に資産圧縮を指示し、2020年度も引き続き取り組む計画です。もちろん「R」の部分の強化が重要であることに変わりはありません。

4)設備投資(2019年度実績 vs 2019年度計画)

11ページは設備投資です。2019年度の設備投資は、計画と比べてマイナス217億円の507億円となりました。実行内容は変わっていませんが、一部、検収時期のズレ、投資案件の先送りなどの関係で減少しています。

5)設備投資(2020年度計画)

2020年度の設備投資計画は、12ページに記載のとおりです。18中計の大型プロジェクトは、投資判断を検討している段階ですので織り込んでいません。

6)安全に対する取り組み

安全成績の推移は、13ページでご覧のとおりです。2019年度は、対前年から改善はしましたが、依然として目標とするレベルには達していません。

事業基盤の重要項目である安全は、設備の本質安全化とライン管理を中心に地道な活動を展開します。特に、現場、現物、現実を直視する「3現主義」に基づいた管理と、円滑な現場コミュニケーションに注力します。

7)キャッシュフロー(2019年度実績)

14ページは、2019年度のキャッシュフローを記載しています。手元資金は好転しています。第4四半期には、非鉄価格が徐々に下落しましたが、このような局面では同月内の販売収入と比べ、原料代金の仮払金が少なくなったり、購入済み原料の精算代金が小さくなったりする傾向があり、この結果、一時的に資金が増加します。

詳細な分析はしていませんが、このようなことが第4四半期に起きたと推定しています。

8)株主還元

15ページをご覧ください。2019年度の配当予想は記載のとおりです。当社では業績連動型の配当としており、2019年度より配当性向35パーセント以上を目標としています。2018年度比では増配となります。

2020年度については合理的な業績予想が困難なため、配当も未定としています。

1)QB2プロジェクトの進捗状況

続いて、18中計で掲げた戦略のうち、3大プロジェクトの進捗状況についてご説明します。17ページをご覧ください。

ケブラダブランカ銅鉱山プロジェクトは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、3月18日から工事を中断しています。この後、マジョリティであるカナダのテック・リソーシズ社より、本プロジェクトの事業費用の状況が公表されました。

許認可遅れによる遅延などで工事費は増大するものの、削減努力や継続するチリペソ安により米国ドル建てに換算した事業費用は、概ね当初計画に収まる状況と予想されています。日本、あるいは北米の当社チームが機動的にチリ入りできる環境ではありませんが、さまざまなルートを駆使して情報共有を図っています。

2)Pomalaaプロジェクトの検討状況

18ページをご覧ください。ポマラ・プロジェクトでは、事業化調査を鋭意進めています。電池正極材をはじめとするニッケル機能性材料の需要は、今後も伸びると予想しています。これらの機能性材料に使用されるニッケルは「クラス1」と呼ばれる純ニッケル、あるいは不純物の少ない硫酸ニッケルのようなニッケル化成品が中心になると考えています。

クラス1ニッケルの開発案件が少ない中、豊富に賦存するラテライト鉱床からクラス1ニッケル製造用の中間原料を生産できる当社のHPAL技術は、非常に有意義だと考えています。

3)電池材料増強の状況(現況・展望)

19ページの電池材料の正極材事業は、顧客動向の把握が第一です。事業環境の動きが非常にダイナミックですが、的確な状況判断によって適切な対応を取りたいと思います。月産4,550トン体制(NCA)が完成し、現在は投下資本の収益化に注力中です。

足元は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界の自動車生産台数の減少が見込まれる中、xEV市場の伸びも一定の制限を受けることは避けられないでしょう。しかしながら、中長期的にはxEVの伸長について疑念の余地はなく、引き続き「潮流」をきちんと見極め、成長につながる適切な対応につなげていきたいと思います。

1)資源 (1)シエラゴルダ銅鉱⼭のデボトルネッキングの進捗

20ページからは、足元の操業状況のご説明と、新型コロナウイルスの影響についてご説明します。21ページのシエラゴルダ銅鉱山については通常操業ができており、新型コロナウイルスの影響は限定的と言えます。

1)資源 (2)海外銅鉱⼭の状況

22ページは、その他の主要海外銅鉱山です。ペルーのセロベルデで操業度をダウンさせているほかは、大きな影響は出ていません。ただし、今日のように経済環境の見通しが不透明な時期には、資源大手は操業コスト削減、投資先送りなどの対策を打ち、それが生産量などに影響する場合もありますので、今後の動向を注視するとともに、パートナーとのコミュケーションを深めてまいります。

1)資源 (3)⾦鉱⼭、プロジェクトの状況

23ページをご覧ください。金鉱山の状況です。菱刈については通常操業を維持しています。コテ金鉱山開発は各種準備作業中ですが、新型コロナウイルスの影響で一部スローダウンしています。最終的な投資判断に向けて、リスク低減作業等に注力しています。

2)製錬 (2)CBNC/THPALの操業状況

24ページをご覧ください。フィリピンの2つのHPAL工場は、政府の新型コロナウイルス感染拡大防止対策方針、現地自治体の指示に従い、関係者の安全を優先しつつ操業を継続しています。人の移動が厳しく制限されているため、工事業者手当等で苦慮しています。これまでのところ、CBNCでは大きな影響は出ていません。

THPALでは、4月の休転工事の際、再立ち上げまで計画より時間を要しましたが、現在は通常操業に復帰しています。

2)製錬 (2)国内製錬所の状況(4/1地⾦⽣産計画からの変化)

25ぺージの国内製錬所は、感染防止策を講じながら通常操業を継続中です。東予工場は原料銅精鉱の一部に組成変化があり、生産量を見直しています。新型コロナウイルスの影響による今後の銅精鉱市場の動向を注視していきます。

ニッケル工場は、新型コロナウイルスによる物流障害により原料入荷に影響が出るため減産基調となる見込みですが、影響は軽微です。播磨事業所の硫酸ニッケルは、フル操業を想定しています。

3)材料 (1)電池材料

26ページは、電池材料事業です。自動車産業の生産動向の影響が懸念されていますが、xEV車の生産状況も国別、地域別で様子が異なることから、市場動向を注視するとともに、ユーザーとの情報交換を密に行い、機敏な対応を取っていきます。

3)材料 (2)機能性材料(結晶、粉体)

27ページは、機能性材料事業です。製造拠点は、感染防止策を講じながらも平常操業を続けています。主要市場が中国である製品に関しては、年度末あたりから発注が戻ってきましたが、先進主要国での消費動向が不透明であり、今後も需要の波があると懸念しています。

1)⾒直しの背景

当社のCSR活動の指針である「2020年のありたい姿」をフルモデルチェンジして策定した「2030年のありたい姿」を、本年3月4日に発表しました。その時に、概ね説明の機会をいただきましたので、本日はポイントだけお話しします。

2)達成イメージ

29ページと30ページは、3月4日の発表でも触れました、今回の見直しの背景、達成イメージを示しています。

3)⾒直しの視点

31ページをご覧ください。当社のCSR活動は、「事業を通じて社会課題の解決に貢献する」ことを基本としています。資源のあるところ、操業ができる土地でしか事業ができない資源・製錬事業を営んできた当社にとって、SDGsの各項目を含むCSRの概念は、極めて当然の考え方になっています。

「Social License to Operate」が、いかに獲得に難しく、維持が困難であるかを、長い歴史とさまざまな困難を通じて我々は知っています。このバックボーンを生かし、活動に取り組みたいと考えています。

4)課題別主要施策

32ページ、33ページは個別主要施策ですが、32ページの一番下に「社内カーボンプライシングの設定検討」とあります。これは、投資計画の中で省エネルギーや法規制等のレベルをさらに下回る環境改善等の投資は、採算性で目を見張るようなかたちになるケースが少なく、後回しになりがちな実態を改善するためです。

具体的には、削減される二酸化炭素量に経済価値をつけ、採算性を弾く仕組みです。小さな努力の積み重ねになりますが、実行していくことが重要だと思っています。

4)課題別主要施策

33ページにある、スマートファクトリーのモデル構築、今回の新型コロナウイルス感染防止のために実施した本社地区等のリモートワークなどの働き方の抜本改革も推進します。

6)重要課題とSDGsゴールとの関係

35ページをご覧ください。当社があげた重要課題とSDGsとの関連性を示しています。当社は「つくる責任つかう責任」を中心に置き、その実現をサポートする施策を実行していきます。

これらを実現することで、SDGsの他のゴールである、例えば貧困や飢餓、教育など、開発地域における課題解決にも寄与できると考えています。

それでは、事前に頂戴した質問について回答いたします。

事前質問QA①

質問1:新型コロナウイルスによる、当社の(ワールドワイドの)サプライチェーンへの影響は?

回答1:素材別にご説明します。銅では、ペルー・セロベルデの銅精鉱生産に影響が出ていますが、これがただちに東予銅製錬の操業に影響を来すことはありません。ただ、当社権益鉱山以外にも多くの銅鉱山が新型コロナウイルスの影響を受けており、生産停止が長期化すると原料市場全般がタイト化する懸念はあります。

ニッケルから電池材料のサプライチェーンですが、フィリピンのHPAL工場は近隣自治体の自粛体制などもあり、まったく影響がないわけではないですが、「どうしたら操業を継続できるか、物流を止めずに済むか」という観点で、地元行政との対話を通じ、解決策を模索しています。

3月以降、物流や人の移動に規制がかかり、その影響はありますが軽微であり、ニッケル工場、播磨事業所、電池材料生産拠点までの社内サプライチェーンには大きな影響は出ないと考えています。

事前質問QA②

質問2:今回「仮試算値」として公表した資源・製錬の2020年度生産量・販売量の前提や考え方は? この数値をどのように受け止めればいいのか?

回答2:すでに操業停止となっている海外銅鉱山や工事業者の移動制限による休転工事の期間延長など、支障が出ることが不可避な部分もあります。これら、足元までで発現している事態を織り込んだ試算値となります。

もちろん、プロデューサーとして安定供給を第一に考えており、状況の許す限り、これまでどおり操業を最高水準で行うこと、そして生産品を安定供給する方針であることに変わりはありません。

事前質問QA③

質問3:新型コロナウイルスが、非鉄金属の業界構造や当社の経営戦略に与える影響は? 目指すべき姿は変わらないと思うが、需給構造を含め、短期的・中長期的な環境変化と、それを踏まえて当社が取るべき行動をどのように捉えているか?

回答3:まず、現在操業を停止している鉱山は、ケア&メンテナンス状態のものが多く、新型コロナウイルスによる規制が外れれば操業再開は容易なのではないかと考えています。最近読んだレポートでは、世界で260余りの鉱山が操業を停止しましたが、すでに50パーセントは再開しているとありました。

一方、需要の回復には一定の時間はかかるでしょうが、需給ギャップが生じるとしても一時的であり、いずれは元の状態には戻りますし、非鉄金属の用途も今考えられているものと変わらないはずです。したがって、非鉄金属に関してはこれまでどおりの戦略を考えていくことに変わりはないと思っています。 

一方で、今回の新型コロナウイルスのように、これまでの常識では想定が難しい事態で、事業は影響を受けます。自然災害起因等を含め、中短期に事業に影響を及ぼす事態はこれからもスコープに入れておかざるを得ず、それを乗り切るために粘り強い事業基盤の強化に努めるとともに、良好な財務体質を維持し、災禍が過ぎたのちにはすぐに立ち上がれる体制、すなわちレジリエンスの確立は重要と考えています。

事前質問QA④

質問4:ケブラダブランカ2の建設工事が停止され、開発コストが上昇する見通し等がテック・リソーシズ社からもリリースされているが、投資リターンを今後どのように管理していくのか?

回答4:テック・リソーシズ社の発表は、その発表時点までの情報として、許認可遅れ等に起因する工事の遅れ、追加費用等で当初見積もりより事業費が増加しますが、現地通貨建て工事費はチリペソ安が続くため、米国ドル建て事業費としては大きく変わらないという内容であったと理解しています。

3月18日から工事が中断していますが、中断によるコスト増、工事遅延の影響はテック・リソーシズ社が発表しています。さらに中断が長引けば、いわゆるバーンレートコスト、工事固定費が嵩む点に注目しています。

このインパクトについてもテック・リソーシズ社が試算しています。また、今後再開される建設作業にも新型コロナウイルス対策は織り込むことになるでしょうが、その影響については現時点でわかりません。早期の工事再開を期待していますし、密な情報交換を行なっています。

投資リターンについては、採掘コスト面で非常に有利な鉱山になるはずであり、当社の大きな戦力になると期待しています。建設期間、操業開始後も現地駐在員を派遣し、定期的なパートナー間会議により事業に関与していきます。

私からのご説明は以上です。当社は引き続き、わかりやすいIR活動に努める所存ですので、みなさま方のご理解、ご支援を頂戴いたしたく、ご要望やお気づきの点がございましたら、IR部門へお伝えいただきますよう、お願いいたします。

また、みなさまには時節柄、ご自愛のほどお願い申し上げて、プレゼンテーションを終わります。ご清聴、誠にありがとうございました。

記事提供:ログミーファイナンス

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